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第38話 宇宙ドックで船を作る事になりました

 商談室を借りて「チャーリー・ゲレン」と話をする。

「まず、名乗ろう。私が『チャーリー・ゲレン』だ。そして私を探していた理由を聴きたいのだが?」

「俺は『アルディ・モーディスター』と言います。二人の女性は妻で、『リゼルロッテ』と『イリューシャ』と言います。

 こっちのリザードマンの男は友人の『ジョン・グリエル』です。

 それで依頼の内容ですが、これをお渡しするようにある男性から依頼されたのです」

 俺は師匠から預かっていた手紙をチャーリーに渡した。

 チャーリーは、その手紙を受け取ると封を開けて手紙を読み始めた。

 手紙を読み終えるとその手紙を俺に手渡す。俺に読めと言う事だろう。

 そこには師匠の手書きの文字で、チャーリーへの依頼が書かれていた。


「親愛なるチャーリー

 この手紙を読んでいると言う事は、儂の息子と娘がお主に出会えたと言う事じゃろう。

 儂は元気に暮らしているので、心配は無用じゃ。

 ところで、儂の息子達が宇宙に翼を広げて飛び立とうとしている。しかし、息子たちにはまだ翼が無い。

 そこで、お主に儂の息子達に翼を授けて欲しい。

 お主の技術があれば、宇宙一の翼を得て、この宇宙そらを駆け回る事が出来るじゃろう。

 くれぐれも息子達をよろしく頼む

 ローランド・フォン・ペテルメギウス」


 簡単な文章だった。しかし、俺と妻達を息子と娘と書いてある。俺は師匠の気持ちを考えると胸が熱くなった。

 手紙は、リゼルロッテとイリューシャにも回すと二人共涙を流した。

「話は分かった。ローランドの気持ちを受け取ろう。だが、問題もある。それは費用だ。私には船を作るだけの費用が無いのだ」

「これでどうでしょうか?」

 俺はローランドから貰った袋を出した。

「こ、これは帝国金貨!」

「足りるでしょうか?」

「足りるどころかお釣りが来るわい。まず、船を作る費用はこの3分の1くらいで良い。後は、私に任せて貰っても良いか。

 決して悪いようにはせん」

「分かりました。お任せします」

「では、これから商人ギルドに行くぞ」

「えっ、商人ギルドにですか?」

「そうだ」

 俺達は商人ギルドにやって来た。

「商人ギルドに依頼を出したい。宇宙艦ドックを借りたい」

 俺たちは商人ギルドに宇宙艦ドックを借りる依頼を出した。すると翌日には貸してくれるという商人が現れた。

 ちょうど、この「デューラントエーテル星」に滞在しているらしい。

 俺たちは商人ギルドの商談室で逢う事になり、商人ギルドを訪ねた。

「トントントン」

「お入りください」

 中から男性の声がした。

 俺たちはドアを開けて部屋の中に入ったが、そこには知った顔があった。

「エリー・キャロルさん!」

「君は確かアルディ・モーディスター君」

「お久しぶりです」

「こちらこそ、どうしていたんだ? 冒険者になったのかね」

「はい、今は冒険者としてやっています。そこで、自分の船を持とうと思いまして、宇宙艦の建造をしたいのです」

「自分で建造するのかね? 普通なら製造済の宇宙艦を購入するのが普通だと思うが」

「ええ、設計と建造にはこちらの『チャーリー・ゲレン』さんが協力してくれることになりましたので」

「チャーリー・ゲレンさんと言ったかね。あの失われた頭脳と言われた」

「えっ、どういう事でしょうか?」

「もう30年も前の事だろうか。当時の学会に画期的な宇宙航行理論を発表した人物だ。

 だが、当時の学会は体制も古く、学者達は若い彼の発表を無視した。その結果、彼は人知れず行方不明となったと聴いた」

 俺たちはチャーリーを見た。

「昔の事だ」

「私は商人で技術的な事は分かりません。ですが、もし、その理論を用いた宇宙艦を建造するのであれば、私とて加わりたい。我が商会の宣伝にもなるのでね」

「ではエリーさん、宇宙ドックの手配をお願い出来ますか?」

「だが、宇宙艦を建造するとなると資機材だって必要でしょう。その目途はあるのですか?」

「これから探すところです」

「なら、私に任せて貰えませんか。いえ、あれから私もキャロル商会という商社を立ち上げて、今では宇宙を股に商売をしているのです。

 私共に任せて頂ければ、全宇宙から資機材を入手してみせます。

 それに儲けさせて貰えれば、お互いウィンウィンの関係になりますし」

 商人である以上、利益を求めるのは当然の事だろう。

 俺はチャーリーと相談してキャロル商会に宇宙ドックの手配、資機材の手配を任せる事にした。


 後日、エリーさんに商人ギルドに再び呼び出された。具体的な宇宙ドックと資機材についての詳細の打ち合わせだ。

「以前聴いていた宇宙ドックの要望について、ここではいかがでしょうか? ここ『デューラントエーテル星』から2光年と近く、近くに資源惑星と資源を加工できる工業惑星があります」

 写真を見ると、宇宙空間に浮かぶ隕石自体が宇宙艦ドックになっている。

「隕石の中にドックがあるのですか?」

「珍しい構造ですが、設備は一流ですよ。ただし、500メル(500m)級までしか建造出来ませんが、冒険者の方の船は500メル(500m)以下が多いので問題は無いかなと思いますが」

 俺とチャーリーが了承すると、エリーは隣に座っている女性を紹介した。

「では、以後はこの女性を担当としてお付けしますので、何かありましたらこの『エイチェル・エーシー』にお申し付け下さい」

「エイチェル・エーシーと申します。よろしくお願いします」

 エイチェルと名乗った女性は歳の頃は28歳ぐらいの眼鏡美人だ。セミロングの黒髪は前世の日本人を思い出させる。

 俺達は一人ずつ挨拶を交わした。

 俺達は翌日、地上宇宙港Fで落ち合い出国手続き後、俺達のスペースコミューターで宇宙港に上がり、エリーさんの商船で宇宙ドックまで行く事になった。

 なお、この日はマミットのホテルに宿泊した。

 出発の日、資料を沢山持って来たチャーリーをスペースコミューターに乗せて地上宇宙港Fに向かう。

 そこで、出国手続きを行い、エリーさんとエイチェルさんを拾い、スペースコミューターで惑星軌道上にある宇宙港まで上がった。

「あれです。あの船に着艦して下さい」

 エリーさんが指差した船は1000メル(1000m)級の商船だ。エリーさんがアームデバイスで指示を出すと後部コーテナーが開いた。

 ジョンが操縦するスペースコミューターは、そのコーテナーに静かに滑り込んだ。

 艦橋下にある部屋に案内された俺達にエイチェルさんが言う。

「事前に頂いた資料により、ドックに赴く途中で手に入れる事が可能な資機材がありましたので、途中で入手後ドックに向かいます」

 この人、かなり仕事が出来る人だろう。

 そして資機材を積み込んだ翌日には、契約した宇宙ドックに接岸した。

 商船から降りた俺達を出迎えたのは中年の親父だ。

「おう、エリーさん、それがうちのドックを借りるというお客さんかい?」

「これはこれは、『タシュー』さんお元気でしたか?」

「まあまあ、だな。で、お客さんは?」

「紹介します。こちらが今回の依頼主の『アルディ・モーディスター』さん、こちらが設計者の『チャーリー・ゲレン』さんです」

「ちょ、ちょっと待て、今、チャーリー・ゲレンと言ったか?」

「そうです、チャーリー・ゲレンと言いました」

「なんという事だ。あのチャーリー・ゲレンが俺のドックで宇宙艦を造るというのか。ああ、これはなんという奇跡だ」

「悪い話じゃないでしょう」

「悪い話どころか、良い話だ。俺も全力で協力しよう」

「おっと、アルディさん、こちらは『タシュー・スミス』さんと言って、この宇宙ドックのオーナーです」

 俺たちはお互い挨拶を交わした。


 宇宙ドックは文字通り宇宙空間に浮かぶ宇宙艦用のドックだ。

 タシューさんの宇宙ドックは「ビーラン」という資源惑星の近くにあり、惑星「ビーラン」から産出される資源を使った機体の建造、修理が可能だ。

 資源惑星「ビーラン」の周辺には産出される資源の錬成、加工を行う宇宙工場が数多くビーランの周辺を周回しており、ビーランから産出される資源を加工した品は資源運搬船が加工品を満載して帝都やその他の領地に運搬する事になっている。

 そのため、加工工場が数多く集まっているこのエリアは宇宙艦ドックも多く集まっており、タシューさんの宇宙ドックもその一つである。

 宇宙工場や宇宙ドックは全て人工で造られているものもあるが、その多くは大きな隕石を加工して作られたものが多い。

 隕石の中をくり抜いてそこに工場やドックを作ると言う訳だ。タシューさんの宇宙ドックも隕石の中をくり抜いたドックになっている。


 チャーリー博士とタシューさんが建造する船の事で意見を交わしている。俺やエリーさんには門外漢なので別室で話をしていた。

「アルディさん、船を造っている間はどうするんですか?」

「今のところ考えていませんが」

「では、アルバイトをしてみませんか?」

「アルバイトですか? どういう事でしょうか?」

「私の商船で護衛として働いて貰うと言う事です」

「護衛ですか? ですが、そんなに仕事があるのでしょぅか?」

「最近、海賊が多いのです。帝国周辺の星ならまだ良いのですが、辺境伯領まで行くとなると海賊に襲われる確率が増えます。

 もちろん必ず襲われるというわけではありませんが、商人仲間の間では確実に増えています。

 だからと言って、辺境伯領へ物資を運搬しない訳にも行きません。それは商人のプライドに関わるし、信用も下落します。

 反対に辺境伯領への輸送費用は高額になっていますので、アルバイト料もご不満にならない額を支払えると思います」

 リゼルロッテやイリューシャにも意見を求めたが、この宇宙ドックに数か月缶詰になるなら色々な星に行けて、しかも稼げるので良いのではないかとの事で、俺達はキャロル商会でアルバイトをする事になった。

「しかし、そうなると個人契約ではなく、冒険者ギルドで依頼という形を取りましょう。その方がアルディさん達のランクアップにも成りますし」

 冒険者ギルドを通すと手数料と税金が取られるが、仕方ないだろう。俺の冒険者ランクは未だに最低のA1ランクなので、ここらで少しはランクアップしておきたい。

「分かりました。その依頼、お受けします」

 ところが、冒険者ギルドでクエストを受けようとした際に、ちょっとしたトラブルがあった。

 それは、俺が3年前に行方不明になっていたことから、死亡扱いになっていたのだ。

 帝国の冒険者法では行方不明になって1年で死亡扱いとなる。つまり、幽霊にクエストは受けれないと受付嬢が言うのだ。

 でも本人がここに居る訳で困った受付嬢は上司に相談した結果、データの変更を行い、復活という形にした。

 冒険者ギルドの記録では、死亡した者が生き返ったという扱いになった。

 これがもとで俺の二つ名は、その後「ゴースト」と言われるようになる。


 船の設計、建造に入ったジョンとチャーリー博士とエイチェルさんを残し、俺たちは一旦「デューラントエーテル星」に戻り冒険者ギルドでキャロル商会からのクエストを受けた。

 キャロル商会への商船の搭乗に際して、俺達専用のエアロパイロットとアトラスアクターを3機積み込んだ。

 もし、宇宙空間での戦いになったら使い慣れた装備の方が良い。

 そして、最初の仕事は「デューラントエーテル星」から資源を積み、一旦帝都に寄ってから積荷を降ろし、そこで再び食料品や生活用品を積み込み、今度はユーリー辺境伯領に向かう。

 「デューラントエーテル星」から資源惑星「CO2289」へ立ち寄って資源を積み込み帝国に向かうため、5日程かかる。

 この間、俺たちは海賊に備えて宇宙空間での戦闘訓練を行った。リゼルロッテやイリューシャは無重力での戦闘経験が無かったので、この訓練は非常に役に立った。

 しかし、最初は宇宙酔いで二人共大変だったが、最近は問題無くアトラスアクターを乗りこなしている。

 20日ぶりに帝国の宇宙港に接岸し、帝都に降りてみる。俺は冒険者訓練校を卒業して以来だから、3年振りと言う事になる。

 3年振りに見る帝都は懐かしさがある。

「旦那様、どうされました?」

「懐かしいなと思って、冒険者訓練校で訓練を受けていたころ、授業が終わるとジョンやシュリー、それにマーガレットと歩いたなと思って」

「そのシュリーさんとマーガレットさんってどういう人ですか?」

 リゼルロッテが聴いて来たので懐かしさがあった俺は正直に答えた。

「シュリーはエルフ族の女性で、とっても綺麗な子なんだ。確か鑑定士になったハズだ。マーガレットは俺と同じ星出身の人族なんだが、マーガレットは可愛い女性で治癒士となって病院船に乗っているらしい」

 その瞬間、俺の両足はリゼルロッテとイリューシャから思いっきり踏まれた。

「イッ、テテテテ」

「美人な同級生でようござんしたね」

「リゼルロッテの言う通りです。どうせ私たちは同級生じゃありませんからね」

「「ねぇー」」

 いや、いつも仲が悪いのに、何んでこういう時だけ、共同戦線を張るんだよ。

 そんな事があったものの、リゼルロッテやイリューシャに通りの話や店の話をして行くと二人は良く話を聴いてくれた。

 その日は帝都のホテルに泊まり、夫婦の仲を深めたのだった。


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