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第37話 誰にでも過去はあります

 スイングバイ軌道に乗ったところで自動操縦にし、お互いの話になった。

「アルディ、3年前に行方不明になっていると聞いたが、どうなったんだ?」

 俺はワームホールに吸い込まれ、未知の惑星に辿り着いた事。そこで、同じようにワームホールに吸い込まれた老人と知り合い、生き延びた事。

 そして、その星で二人の妻を娶った事を話した。

 ジョンは俺の話を聞いて驚いた顔をしている。いや、リザードマン族は人族ほど顔には出ないが、それでも驚いているのが分かった。

「もう一つ聴きたい。君が格納庫の中で使ったあの雷は何だ?」

 俺は未知の惑星で念力を取得し、物体移動、火力、水力、風力、雷力が使えるようになった事を話した。

「そんな事が出来るのか?」

「ジョンも実際見ただろう」

「いや、確かに見たが、そんな事が出来るなんて信じられん。それに、体つきもだいぶ変わったようだが?」

「その惑星は重力が2Gあったんだ。つまり重力が2倍だな。そこに居れば体つきも変わるさ」

「うーむ、信じ難い話なのだが、アルディがここに居るのが何よりの証拠だ。それで、二人の奥さんにも挨拶させてくれ。

 僕は『ジョン・グリエル』と言って航海士になります。これからよろしくお願いします」

 ジョンが握手のために手を差し出したが、リザードマンの手は爪が伸び、ギルガンの手を思いださせる。それに顔も怖い。

 リゼルロッテが恐る恐る手を出すが、ジョンの手を掴む事が出来ない。

 リゼルロッテにとってジョンの手はトラウマになるのだろう。

 ジョンは怪訝な顔をする。

「ジョン、実はリゼルロッテはギルガンという星獣に肉親を食い殺されてな。そのジョンの手は・・・・」

「そうか、それは気が付かず申し訳なかったです」

 ジョンが、手を引っ込めた。

「その、決してジョンに悪意があると言う訳では無いんだ」

「僕もこんな姿だから、仕方無いと思っているさ。何度もあった事だし」

 ジョンはリザードマン族である事から、帝国内ではある種の人種差別を受け易い。

 帝国法では人種差別は禁じられており、法の下の平等はあるのだが、見た目による差別を受けていると感じる事も多いのだろう。

「ジョンさん、すみません。決して差別をしているという訳ではないのです。でも、母がギルガンに食べられているのを見た記憶がフラッシュバックしてくるのです」

「いや、気にしなくて良い。そんな事があるとトラウマになるのも頷けるし。徐々に慣れてくれれば良い事だから」

 ジョンは見た目と乖離して、とても優しい。

 そんな事があった事もあり、イリューシャとの挨拶の時にジョンは握手の手を出さなかった。


「それで、ジョンはどうして『黒き悪魔』のパーティに入っていたんだ?」

 ジョンの話が始まった。

 ジョンの所属するパーティ「星雲の彼方」の母船「ビヨンドネビュラー」に航海士補として、新しく発見された惑星「MZ6494」の航路探査に向かった。

 ところが、「MZ6494」恒星系のところでオールトの雲に前進を阻まれてしまう。リーダーはオールトの雲を短距離ワープで越える事を選択し、短距離ワープを行ったが、ワープアウトした地点はカイパーベルト内だった。

 戦艦「ビヨンドネビュラー」は浮遊する隕石に正面から突っ込み、艦前方が破損した。破損個所は大きく、艦内の3Dプリンタでは修理できない程だったので、引き返して修理を行わないと無理と判断された。

 そして艦前方が破損した影響はもう一つある。それは燃料である「ミジハロスキー粒子」を捕集出来ない事だ。

 残ったエネルギーで短距離ワープは可能だが、長距離ワープは出来ない。リーダーは短距離ワープで帰還する事を目指したが、ハーシュハイザー辺境領の手前でとうとう燃料が尽きてしまった。

 リーダーはメーデー信号を発信し、遭難救助を要求したが、そこに現れたのが「黒き悪魔」のパーティだった。

 最初は救助を装っていたが、その内本性が出て「星雲の彼方」の冒険者を虐殺すると女性冒険者たちを凌辱し奴隷に売り払った。

 ジョンは航海士だったので、航海士が不足していた「ブラックサターン」の航海士として使役される事になった。もちろん、拒否すると殺されていただろう。

 母船の「ビヨンドネビュラー」号は船籍を書き換えられ、売られたと言う。買った者が誰かは分からない。


 そんな身の上話をしていたら、スクリーンに青い星が映し出された。人が住んでいる星は水があるので、地球と同じ青い星になる。

 その青い星が目指す「デューラントエーテル星」だ。

 最初小さな球位の大きさだった「デューラントエーテル星」も徐々に大きくなって来た。

 俺たちはスペースコミューターを「デューラントエーテル星」の軌道上に配置する。ここで降下許可を得る事になる。

「事前に降下許可を提出しているスペースコミューター010号です。降下許可を願う」

 管制塔に無線通信を行った。

「事前許可確認しました。ここまで、輸送してきた船はどうしましたか?」

「軌道上で分離後に帰還しました」

「了解、地上宇宙港Fに着陸して下さい」

「マミットという街に着陸したいのですが?」

「一度入国審査が必要になりますので、地上宇宙港にて入国審査を受けて下さい。その後にマミットに向かうようにして下さい」

 マミットでは入国審査は出来ないようだ。

 俺達は指示通り地上宇宙港Fに着陸した。

 すると前のチルニャー星と同じように二人の銃を持った男性警備員と一人の管理官らしき人族の女性が来た。

「本人確認を行いますので、アームデバイスか身分証を提示して下さい」

 俺たちはアームデバイスを出した。

「それで、当惑星の訪問理由は?」

「知人を訪ねて参りました」

「ほう、お知り合いの方ですか? その方のお名前を伺っても?」

「はい、『チャーリー・ゲレン』という男性です」

 女性管理官はタブレットで「チャーリー・ゲレン」という人物を検索している。指名手配犯人とかだと逃亡の一味と見られる可能性もある。

 しかし、何も問題は無かったようだ。

「問題ありません。ようこそ科学惑星『デューラントエーテル』へ。マミットへ行かれるのですよね。マミットはスペースコミューターなら、ここから2時間程度でいけると思います」

 女性管理官はそう言うと、引き返して行った。

 再びスペースコミューターに乗り込み、マミットという街を目指す。2時間程でマミットという街に到着し、郊外の駐機場に機体を降ろした。

 この駐機場はフライトコミューターが何機か停まっていた。フライトコミューターは簡単に言えば飛行機で、宇宙空間に出る事はできない。

「アルディ、どうやってその『チャーリー・ゲレン』という人を探し出すつもりだい」

 ジョンが聴いて来た。

「まずはギルドに行って見ようと思う」

「だが、個人情報は教えてくれないだろう」

「ああ、探し人の依頼を出すんだ」


 ギルドに探し人の依頼を出した。

「探し人 名前:チャーリー・ゲレン 男性 年齢:57歳 依頼人:ブルーローズ」

 2日後の朝、俺のアームデバイスにギルドから着信があった。探し人が見つかったというのだ。

 俺達がギルドに入ると、カウンターの前の席に座っている初老の人が目に入った。直感で、この人が「チャーリー・ゲレン」だと分かった。

 しかし、直接、話掛ける訳にはいかない。まずは、カウンターに依頼達成の話を聴くとやはり、座っていた初老の人が「チャーリー・ゲレン」だった。


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