第35話 再会
翌朝は早くベッドを出るが、二人の身体は裸のままシーツに包まっていた。その姿はとても美しい。
「おはようございます」
リゼルロッテが恥ずかしそうに言う。
「おはよう」
「おはようございます」
イリューシャも恥ずかしそうだ。
「イリューシャもおはよう。さあ、さっさと支度しないと遅れるぞ」
「「はい」」
俺達は急いで支度をして地上宇宙港に向かった。
イミグレーションで出国手続きを行い、燃料補給をして出港する。
「スペースコミューター010号、発進を許可します」
管制塔から発進許可が出た。
「反重力コイル作動、リフトオフ」
コパイロット席に座ったリゼルロッテが反重力コイルを始動させると、機体が浮かび上がる。
「微速上昇、高度100メル(100m)で高速上昇に移行」
「微速上昇開始します。機体制御オン」
「イリューシャ、管制塔からの指示は?」
「管制塔からの指示はありません」
「予定通り、高度100メル(100m)で高速上昇に移行する」
100メル(100m)から上昇専用の空域に移動し、高速で上昇を開始すると速度が急に速くなった。反対に地上に降下してくるスペースコミューターも窓の外に見える。
約60分もすると大気圏を脱出し、衛星軌道に到着した。
「衛星軌道に到達、水平移動に移ります。認識番号確認しました。追尾します」
認識番号を追尾していると冒険者パーティ「黒き悪魔」の母船「ブラックサターン」に到着した。
「『ブラックサーターン』、こちらは『ローランド』艦載機スペースコミューター010号、貴艦とのランデブーを願う」
「了解。上部コーテナーを解放するので着艦願う。なお、けん引アンカーを放射するので接続されたい」
「了解」
「『ブラックサターン』からのけん引アンカーを確認しました。本機と接続します」
ディスプレイにブラックサータンとスペースコミューターとの接続を示すランプが青に変わった。
「接続完了」
後は自動で「ブラックサターン」に着艦できる。
着艦後は昇降エレベータで格納庫に入った。
「アルディ殿、格納庫を加圧するので、しばらく待ってくれ」
ブラックサターンから通信が入る。そのうち、加圧された事を示すランプが青に変わった事で、格納庫に出る事が可能となった。
格納庫からは艦橋に向かう事になる。
「迎えをやるから艦橋まで来てくれ。クルーに紹介しよう」
「了解」
しばらくすると格納庫の扉が開き、男性が迎えに来た。
俺たちはスペースコミューターを降り、その男性について艦橋に行く。
艦橋は前に居た「ヤングブラッド」と同じ位の広さだ。
一番後方に艦長とパーティリーダーの席があり、前の方には船の操縦席がある。
その後ろにはレーダー席と通信席があるのも一緒だ。同じ300メル(300m)級だから作りは一緒なのだろう。
その中で俺は操縦席に座る一人に眼が行った。
「ジョン、ジョンじゃないか?」
そう、操縦席に座るのは、リザードマン族で冒険者訓練校の同級生「ジョン・グリエル」だ。
ジョンと呼ばれた男は、一瞬こちらを見るが、直ぐに前を向いた。
「人違いではないでしょうか?」
そんな、見間違えるハズはない。いや、でも昔のジョンと違って、ちょっと影があるような気がする。やはり別人だったか?
それに彼はパーティ「星雲の彼方」の航海士だ。この船に乗ってるハズがない。
「すいません、知っている人と似ていたもので」
「帝国内には似ている人が3人は居るといいますからね、無理も無いでしょう」
その男は再び前を向くと衛星軌道から外れ、宇宙航行に入る操作をした。
「目標設定、『デューラントエーテル星』設定。航路選択、ワープ回数12回、所要日数8日間です」
航海士のリザードマンの男が言うが、俺は疑問に思った。事前に調べた結果は、ワープ回数は10回で良いハズだ。
何故、2回余分にワープする必要がある?
それにこの船には女性が乗っていない。普通のパーティは治癒士や鑑定士など女性が選択する職業の人も乗っているハズだ。
もちろん、男性の治癒士や鑑定士もいるが、全員が男性というのはおかしい。
それに男共がリゼルロッテとイリューシャを見る眼が下卑た眼をしているのも気に掛かる。
「お知り合いでしたか?」
「いえ人違いのようです」
「そうですか、では紹介します。こちらは今回の依頼主の『アルディ・モーディスター』さんとその奥方様たちだ」
クルーの下卑た視線を感じたが、直ぐに自分の作業に戻っていった。
俺達は、自分のスペースコミューターに戻って来た。
「旦那様、あの航海士の男性はお知り合いだったのですか?」
「冒険者訓練校の同級生によく似ていたんだが、ただ、リザードマン族は人族からすればほとんど同じ顔に見えるのもあるが」
「ですが、この船のクルーからは、なんだか嫌らしい眼で見られているようで嫌です」
「それは私も感じました」
リゼルロッテだけでなく、イリューシャも同じだったようだ。
それでも何事もなく6日間が経過し10回目のワープが完了した時に、俺のアームデバイスに文字通信が入った。
音声通信でなく文字通信というのが、心をざわつかせる。
『アルディへ、次のワープが終わったら、リーダー達はお前達を襲う予定だ。奥方たちは犯された後奴隷として売られるだろう。
次のワープアウトと同時に上部コーテナーを開けるので逃げてくれ。ジョン』
やはり、あのリザードマンはジョンだった。と、なるとジョンがここに居るのは何か訳があるに違いない。
そうすると、ジョンを残してこの船を離れるわけにはいかない。
それにスペースコミューターにワープエンジンは積んでいない。例え脱出出来たとしても「デューラントエーテル星」に到着するのに何年も掛かるだろう。
それにワープで先回りされれば、逃げきれない。それにジョンが俺達を逃がしたとなれば、ジョンの事も心配だ。
俺はリゼルロッテとイリューシャに通信内容を伝えると二人の意見は一致した。
「この船を乗っ取りましょう」
これが結論だった。
だが、この通信は傍受されていた。11回目のワープが完了すると、格納庫にこのクルー全員と思われる人数がやって来た。その数120人はいるだろう。
その先頭にはボサックが居る。
「アルディさんよ。全財産と奥さん方を連れて降りて来てくれないかな。そうじゃなければこの男がどうなっても良いのかな?」
ボサックは、殴られた傷のあるジョンを投げ出した。
「艦橋でこいつが、お前の事を知らんと言った時から用心していんだ。するとお前のアームデバイスに文字通信が入ったじゃないか。
文字通信が分からないと思っていたのかね。今更、バレてもしょうがないから大人しく言う事を聴いて貰いたいがね」
俺たちは冒険者ユニフォームを来て、スペースコミューターの外に出た。
リゼルロッテとイリューシャはミニスカートなので男達の視線を釘付けだ。
「ヒュー」
誰かが口笛を吹く。
「いいねぇ、今からする事を分かっているようだねぇ」
「最初から襲うつもりだったのか?」
「3人の移送に、チルニャー金貨800枚をポンと出すと言うんだ。当然、それ以上持っていると考えても不思議じゃないだろう。
さて、有り金とその女達をこっちに寄越せ」
「ア、アルディすまん」
ジョンが言うと、ジョンの腹にボサックの蹴りが入った。
「お前は黙っとれ!」
「俺の友人に暴力を振るうのはやめろ」
「うるさい、さっさと女に金を持たせてこっちに来させろ」
俺は金の入った袋を出した。この袋に帝国金貨は入っていない。チルニャー金貨の残り400枚が入っているだけだ。
俺はその袋をボサックに見せた後に空中に投げた。すると、袋から金貨が飛び出し宙を舞った。




