第34話 冒険者との話し合い
「旦那様、そのアームデバイスをどうするつもりですか?」
ホテルの部屋でリゼルロッテが聴いて来る。
「奴ら、どんな悪い事をやっているかなと思ってな」
アームデバイスには、今までの映像が音声付で録画されている。それによると同じ用な強盗をしていたのが分かった。
しかし、それ以外には面白い映像もないし、得られる情報もない。
「何だか同じような映像ばかりでつまらないですね」
リゼルロッテとイリューシャも同じ意見のようだ。
「じゃあ、警察に突き出すか」
「でも、男達はあそこに置いてきましたよ」
「これを警察署の前に置いておけば捕まえてくれるさ」
俺はホテルを抜け出すと、近くの警察署の裏手に強盗達のアームデバイスを置いた。
もちろん、俺達の画像は消してだ。
警察は当然、そのアームデバイスを調べるだろう。そうすると持ち主が強盗をしていたことが分かる。
強盗達もアームデバイスが無いとこの世界では生活できないので、新しいアームデバイスを申請に行く。
そうすると警察から手配が入っているので、警察もわざわざ捕り物をしなくても捕まえる事が出来るというものだ。
翌日の昼にはニュース映像で強盗団が捕まったとの放送があった。男達の顔はボコボコになっており、供述では女の「強盗に遭った」と言ってるが、屈強な男がボコボコにされるのは信じ難い。
それにアームデバイスという証拠もある。
俺達は再び冒険者ギルドにやって来た。リゼルロッテとイリューシャの冒険者試験を受けるためだ。
結果から言えば二人共問題無く合格し、その日のうちにA1ランクの冒険者カードを手に入れた。
アームデバイスと連携すると、アームデバイスにA1の文字とアイコンが表示される。
そして輸送クエストだが、こちらも受諾してくれるパーティがあった。費用はチルニャー金貨800枚(8000万円)である。
依頼掲示板はディスプレイになっており、俺達の輸送クエストが表示されている。
表示は文字と音声で確認する事が出来る。音声確認が出来るのは文字が読めない冒険者がいるためだが、冒険者もA5ランク以上になると文字が読める。
それはA5ランク資格試験で文字の読み書きが必要だらだ。
これが商人になるとB1ランクでも文字が読める。B1ランク試験では読み書きが必須になっている。
俺たちは商談室で依頼を受諾した冒険者パーティ「黒き悪魔」のリーダー「ボサック・レイノル」と面談していた。立会人は冒険者ギルドの若い女性職員だ。
「では、依頼人から本依頼の説明をお願いします」
「はい、まず私とこの二人の女性、計3人の『デューラントエーテル星』への輸送です。荷物としては、スペースコミューターが1機になります」
「いくつか質問がある。まず、『デューラントエーテル星』へは宇宙港への接岸は必要か?」
ボサックが訊ねる。
スペースコミューターが有るならば軌道上にスペースコミューターを放出すれば、後はスペースコミューターで降下すれば良い。
それに宇宙港に接岸するとなると接岸費用がかかる。
「いえ、接岸する必要はありません。惑星『デューラントエーテル』の軌道上に放出して頂ければ、後はスペースコミューターで降下します」
「分かった。その方が接岸費用が掛からないので俺達も助かる。
次に食事、トイレ、バスなどの生活環境面の補助は必要か?」
「それも食事とトイレはスペースコミューターで対応出来ますので不要ですが、バスはないので、お借りできればと思います」
「ふむ、それも了解した。母船への搭乗はどうする?」
「スペースコミューターでチルニャー星の軌道上に上がりますので、そこで回収して頂ければと思います」
「最後に、スペースコミューターのサイズを教えてくれ。格納庫にスペースを作っておかないといけないからな」
「長さ45メル(45m)、幅30メル(30m)、高さ13メル(13m)です」
「長さ45メル(45m)、幅30メル(30m)だと、なんでそんなに幅があるんだ」
普通のスペースコミューターは長さ18メル(18m)、幅5~8メル(5~8m)だ。それを考えると倍以上ある。
「胴体部分は10メル(10m)ですが、翼があるので」
「翼があるスペースコミューターだって? そんなの見た事がねぇ」
「ええ、ちょっと変わったスペースコミューターなんで」
「分かった。高さがぎりぎり格納庫に入る大きさだが、問題ないだろう」
次に依頼料の支払いの話になった。立会人の女性職員が言う。
「では依頼料の支払いに移ります。『黒き悪魔』としての支払い希望はありますか?」
「こちらとしては、前払いで半額のチルニャー金貨400枚、『デューラントエーテル星』の軌道に到着して残りの400枚でどうだ」
「分かりました。それで良いです」
「両者の契約成立とみなし、お互いのアームデバイスを提示して下さい」
女性職員の指示の通り、左腕を前に出した。ボサックも同じように左腕を前に出している。
「契約」
女性職員が叫ぶと、俺のアームデバイスに契約成立の文字が表示された。
「では契約に基づき、アルディ様はチルニャー金貨400枚をお支払い下さい」
俺は袋を出し、チルニャー金貨400枚をボサックに渡した。それに伴い、ギルドへの手数料としてチルニャー金貨10枚も支払った。
「では軌道上で待っている。認識番号はCBNG238749AUMだから、それを目印に飛んで来てくれ」
俺のアームデバイスに認識番号が表示された。
「最後に、その二人の美人さんはあんたの何だい?」
「妻です」
「二人共?」
「二人共です」
「そうかい、モテる男はツラいねえ」
いや、何がツラいのか分からないが。
軌道上でのランデブーは翌日の10:00に決まった。そうなると地上宇宙港を8:00には出港し、軌道上でのランデブーに備えなければならない。
冒険者パーティ「黒き悪魔」と打ち合わせをした日、早めに食事を済ませてホテルに戻った俺達は、風呂に入りまったりとしていた。
「リゼルロッテ、そしてイリューシャ、二人に言っておかないといけない事がある」
俺が言うと、二人が怪訝な顔をした。
「何でしょうか?」
「今まで、俺に付き添ってくれてありがとう。それから、これからも末永く死が俺達を別つまで夫婦としてよろしくお願いできるか?」
「いえ、旦那様が居なくなると私も生きる意味がありません。なので死が私達を別つ事はありません」
「いや、それは俺の墓守をする者がいなくなるのでやめてくれ」
「イリューシャがいます」
「わ、私だってご主人様と離れたくありません」
「だから俺の墓守がいなくなるだろう」
「リゼルロッテがいます」
「いえ、あなたが墓守をしなさい」
「リゼルロッテこそ墓守をしないさい」
「「ううっ」」
二人が顔を突き合わせて唸っている。
「待て待て、今はその話をするはずじゃなかったんだ。実はお願いがあるんだ」
「「はい」」
「今日は二人を正式に妻としたい」
「えっ、私達既に妻と思っていましたが、違うのですか?」
「うーん、正式というのは、心だけでなく身体も俺のものになってくれという意味なんだが」
「それは今日は本当の妻にして下さるというのですか?」
「ま、まあ、そういう事かな」
「「う、うえーん」」
今度は二人が抱き合って泣き出した。
「ど、どうしたんだ?」
「てっきり、私達の身体に興味がないのかなと思って半分諦めていました。だって、うさぎと半魚人ですもの。
それがやっと抱いて頂けると思うと、嬉しくて嬉しくて。えーん」
そして、その夜、俺たちは本当の夫婦となった。




