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第33話 後藤さんって誰?

 ギルドで紹介して貰ったホテルは、徒歩5分の場所にある高級そうなホテルだった。

 フロントに行くと受付アンドロイドが対応してくれる。

「いらっしゃいませ」

 俺はアームデバイスを受付機に照合させ、宿泊料金のチルニャー金貨10枚を支払うと、カードキーを受け取り指定された部屋に行った。

 部屋は52階のキングスベッドの部屋だ。ベッドは一つしかないので、今夜はこの部屋で3人で寝る事になる。

「ふぅー、疲れたな。二人も疲れただろう。休憩したら外に食事に行こうか」

 時間は夜の6時になっている。外はまだ明るいが、街灯には灯りが灯り出した。

 リゼルロッテとイリューシャは荷物の整理をしているが、徒歩で来たため、手荷物はそれ程多く無い。

「リゼルロッテ、イリーュシャ、明日にはチェックアウトするかもしれないから、適当で良いぞ」

「いえ、妻としてそう言う訳には行きません」

「そうです、ご主人様に恥を掻かせる訳にはいかないのです」

 二人共このようなホテルは初めて泊まるので、しっかりしないといけないと思っているようだ。

 1時間程休憩して食事のためホテルを出る。大金を持ち歩くのは大変なため、金貨類は部屋に設置のセーフティボックスに預ける事にする。

 このセーフティボックスはアームデバイスでロックするようになっており、他の人が開けたりセーフティボックスを持ち出したりするとアームデバイスに通知が来る。

 金はチルニャー金貨10枚だけ持って出た。チルニャー金貨1枚は前世で10万円に該当するので、100万円を持って出たと考えて良いだろう。

 冒険者ギルドがあるこの地区は宇宙港や商用ギルドがあり、比較的治安が良いと言われている。

 反対に飲食店は少なく、街の繁華街まで行く必要がある。

 俺達はシティビークルで繁華街まで行く事とした。アームデバイスで認識させればホテルやこの星を出る際のイミグレーションで料金は精算できる。

 繁華街にやって来ると流石に人が多く、店も色々な飲食店がある。居酒屋、レストラン、ファストフードはどこも人が賑わっている。

「旦那様、どこにはいりましょうか?」

 リゼルロッテが聴いて来る。

「そうだな、出来ればラーメンかお好み焼きがあれば良いのだけれど」

「何ですか、それ?」

「いや、いい。それより、二人は何を食べたい?」

「私は野菜類が良いです」

「私は魚料理が良いです」

 ブレないな二人共。

 結局、入ったのは庶民的な店の汁物屋だ。汁物と言っても早い話がシチュー屋である。シチューとパンを提供してくれる。パンはバインミーのように、いろんな具を挟んである。

 このような店は、比較的リーズナブルで庶民的な店として帝国内にある。

 店を出る時にアームデバイスでなく、チルニャー金貨で支払った。アームデバイスでの支払いでも良かったのだが、現金を持っていたので、久しぶりに支払ってみただけだ。

 店を出ると、ショッピングモールが開いていたので行って見る。

 二人共文明の遅れた星で生活していたので、このような都会的な都市は眼に映る物が珍しいようで、キョロキョロしている。

 ショッピングモールの中ではあっちにウロウロ、こっちにウロウロして、18歳の少女のそのものだ。

 だが、その姿はとても18歳でなく、私服の今でも20歳越えの素敵な女性に見える。

 このショッピングモールで、二人の私服を3着ずつ買った。ローランド星から出る時にローランドが私服を1着ずつプレゼントしてくれたのだが、二人同じデザインで色違いだったため、二人のために私服を買おうと思っていたからだ。

 街中を歩いていると、冒険者と思われる人ともすれ違った。プロテクションスーツを着用するため、男性は短パン姿、女性はミニスカートなので分かり易い。

 二人は買った服を着て帰る事にし、着ない服は俺が荷物持ちとして持った。

 膝丈フレアのスカート姿は、二人にとても似合っている。

「旦那様、自分の物は自分で持ちますから」

「そうです、ご主人様、私が持ちます」

「こういうのは男の仕事って、帝国内では決まっているんだよ」

 思えば、メラニーと買い物に行って、荷物持ちをやらされた事が思い出される。

 ショッピングモールから出ると、入って来たゲートとは違うゲートから出た事に気づいた。

 ショッピングモールは広いので、出るゲートが分からなくなったのだ。

 こっちのゲートは裏手にあたるためか、人通りが無く街灯も寂しい。タクシーやシティビークルも走っていない。

 アームデバイスで地図を確認すると、丁度反対側に出たようだ。

「反対側に出たな。もう一度ショッピングモールに入って横切るか」

 と思ったところ、丁度閉店となって従業員が客を見送りしている。

「あらら。仕方ない迂回しよう」

 俺達はショッピングモールを迂回する事としたが、ショッピングモールは大きいため迂回するとなると、かなりの距離を歩く必要がある。

「二人共悪いな、方向音痴で」

「私は旦那様と歩けて幸せです」

「私だって、こんな夜に歩けて幸せです」

 二人が俺の両腕を組んでくる。


「おうおうおう、そこの二枚目さんよ。いちゃいちゃしてうらやましいじゃねえか」

 俺達の前に5人の男達が立ち塞がり、手にはナイフを持っている

「えー、そうですか? だって新婚なんだもん」

 イリューシャがニコニコして答えたが、これは誉めてくれている訳でなく、どちらかと言うと絡んできているのだろう。

「それでだ、俺達にちょっとその幸せを分けてくれないか。金貨を渡して貰おう」

 うん、ただの強盗だ。

「金貨を渡すと幸せを分ける事になるんですか? ご主人様どうしましょう」

 イリューシャが俺に聴いて来るが、こいつらが強盗って分かっているのか。

「イリューシャ、こいつらは強盗だ」

「後藤さんですか、初めまして」

 後藤さんは、俺の前世での日本人の名だ。

「だから悪者なんだって」

 イリューシャの村では悪者なんていなかった。悪人がいたら村八分にされ、生きていけないからだ。

 だから、悪者が分からない。それはリゼルロッテも同じだが、リゼルロッテの方が俺と長く生活して来た分、ある程度の社会的知識がある。

「イリューシャ、この人達は私が言う事を聴かなければ、殺すと言っているのです」

「ええっー、あなた達って悪い人だったんですね」

 いや、最初からそう言ってるだろう。

「何をゴチャゴチャ言ってやがる。さっさと金を出せよ」

「女もいるかい?」

 俺が言うと男達は顔をニヤつかせる。

「兄ちゃん、話が分かるじゃねえか。女も置いとけ」

「だとさ、二人共ゴー」

 リゼルロッテとイリューシャが俺と組んでいた腕から離れると、一番前でナイフを出して金を要求していた男の顔面に二人のキックが入った。

 こいつ、二人のパンティ見ただろうな。ある意味羨ましい。

 二人は脚を回すと、その後ろに居た男達に回し蹴りを首の急所に入れ、最後に残った二人には肘打ちが顔面に入った。

 二人共見ていてシンクロしているような戦い方だ。

 結局、俺が出る必要が無く、二人で5人を倒してしまった。

 さすが、重力2倍のローランド星で格闘訓練をして来ただけの事はある。特に二人共脚の筋力は並々ならないので、脚蹴りされた男はたまったものではないだろう。

 問題はこれからである。

「さて、では金を出して貰おうか」

「か、金は無い」

 リゼルロッテが、ヒールの踵を男の口にねじ込んでぐりぐりとかき回した。

「ぐ、ぐふっ」

「もう一度聴く、金を出して貰おうか」

 男は口が利けないようで、ポケットからわずかばかりのコインを出した。

「これっぽっちじゃな。そうだ、代わりにアームデバイスを貰おう」

 男は首を振った。それはそうだ。アームデバイスがないと仕事にも就けないし、支払いも現金のみとなる。

 要するに生活出来なくなるからだ。

 リゼルロッテが再び踵を男の口に捻じ込んだ。こいつ、結構Sなんじゃなかろうか。

 男が白目を剥いたので、強制的に腕からアームデバイスを取り外した。

 残りの男達もこの様子を見ていたので、自分からアームデバイスを取り外し、差し出して来た。

 俺はそれの通信回線の接続を切り、余っていた袋に入れた。

 通信回線を切ったのは、アームデバイスの探知機能でこの場所が特定されるからだ。

「では元気でな」

 俺達は繁華街の停留所に戻ると、シティビークルに乗ってホテルに戻った。


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