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第31話 結婚しました

 俺はその話を聴いて驚いた。

「では、師匠は皇帝閣下の弟だったのですか?」

「そう言う事になるが、ここでは一人のエロじじいじゃ。気を遣わんで良い」

 自分でもエロじじいだって事は、分かっているんだ。

「でしたら一緒に帰りましょう」

「いや、今更帰ってどうしろと? 今から帰っても、帝国内を混乱に落とし入れるだけじゃ。

 ただ一つの悔しさは、エンリュウスの罠に嵌った事じゃ。船のクルーは、どうなったのか。もし、全員が非情な扱いを受けていたら儂はいたたまれん。

 それにな、儂はこの星が気に入っている。正直このまま、この星で命を全うしたいと思っているのじゃよ。

 だがなアルディ、お主は違う。お主はまだ若い。宇宙に出てお主の力を試してみるが良い。それはリゼルロッテとイリューシャも同じじゃ。3人で星の海を駆けてみよ」

「師匠・・・」

「だがな問題もある。今度、現れるワームホールの出口は分からん。もしかしたら、この星より過酷な惑星に辿り着くかもしれん。

 だが、お主達はそれをも軽く超えてくれると信じている」

「分かりました。3人でこの星を出ます」

「それで、うまく帝国内に行く事が出来たら、ここを訪ねると良い」

 俺のアームデバイスに星の地図が送られて来た。星の名前は「デューラントエーテル」星、都市は片田舎の「マミット」と言う所らしい。いや、もう都市というよりは村に近い感じだ。

 そして、尋ね人は「チャーリー・ゲレン」という57歳の初老の人だ。


 その夜、俺はリゼルロッテとイリューシャにワームホールの事、そしてこの星を出て行く事を話した。

 リゼルロッテとイリューシャは、俺と宇宙の果てまで行くと言ってくれた。だが、イリューシャは父親に最後のお別れをしたいと言う。

 正直、ワームホールに突入すれば、どこに出るか分からない。それこそ、今生の別れになるだろう。

 イリューシャの気持ちも分かる。翌日、俺たちはイリューシャの村に向かった。

 以前と同じようにスペースコミューターで星の裏側まで行き、村の上空300メル(300m)の高度に停止させ、アトラスアクターで降りて行った。

 その姿を見ると村人が出て来た。先頭にはイリューシャの父親のモニアクがいる。

「イリューシャ、元気そうでなによりだ」

「お父様、お久しぶりです」

「うむ、幸せにしていれば、それが何よりだ。それについては婿殿にも礼を言わなければならんな」

「お義父さん、今日はお話があって来ました」

 俺が、そう言うと

「そう急がんでも良い。今夜はゆっくりしていかれよ」

 モニアクはそう言うと、俺達に背を向けて家の中に入って行った。なお、モニアクは翻訳虫を耳に入れていないので、会話はイリューシャの通訳になる。

 モニアクの素っ気ない姿に俺は、ちょっと首を傾げてしまう。父親とは娘の婿に対してこんなものなのだろうか?

 夜になると村人が開く宴が行われた。今回も刺身や焼き魚など魚料理が並ぶ。

 リゼルロッテも最近は魚料理が食べられるようになって来たので、前回よりは生魚を苦労せずに食べている。

 そして、宴が終わったら村長の家に入った。

 そこには設けられた祭壇の前に座る一人の老人の姿があった。

「母さん、イリューシャがこの星を出て行くようだ。あの娘の旅立ちを祝福してくれ」

 モニアクはそう言うと、胸の前に手を当てた。

「お義父さん、どうしてその事を・・・」

 俺の言葉をイリューシャが通訳して伝える。

「イリューシャを嫁に出した時から覚悟していた事だよ。お前はこの星の者ではない。いつかは自分の星に帰ると言うじゃろう。

 その時、イリューシャも必ずお前について行くと言うだろうとな」

「お父様・・・」

 イリューシャも言葉が出ない。

「すみません」

 俺もそれしか言えない。

「いや、返って祝いになろうて。俺の娘がこの星を出て宇宙に出る。それは我々には絶対出来ない事だ。

 娘が星の間で輝くのだ。立派な旅立ちだよ」

 振り返った年老いた男の眼には涙が溜まっていた。

「お父様!」

 イリューシャが父親に抱き着いた。

「いつまで経っても子供のようじゃな。お前はもう嫁に行ったのだ。夫を立てて立派に妻としての役割を努めよ」

 イリューシャは父親の胸の中で泣きじゃくっている。それを見たリゼルロッテも泣いている。

 後ろを見ると村人が家の入口に集まり、皆泣いている。

 俺はアームデバイスからローランドに連絡を取った。

「今からイリューシャの父親を連れて行きたいと思いますが、よろしいですか?」

「構わんが、どうしたというのじゃな」

 俺は小さな計画をローランドに話した。そして、そのための準備をして貰う。


「今から俺達の船に行きませんか? 見せたいものがあります」

「今から?」

 モニアクは怪訝な顔をしたが、深夜スペースコミューターで俺達と一緒にブルーローズに帰った。

 スペースコミューターに乗ったモニアクは大はしゃぎだ。今まで空を飛んだ事もないから、未来の滑空機に乗ってずっと下を見ていた。

 そして、俺たちの家でもある宇宙艦「ブルーローズ」に戻って来た。

「師匠戻りました。準備は出来ていますか?」

「ああ、問題無い。しかし、お主も人使いが荒いのう」

「では、イリューシャとリゼルロッテはこっちに来て」

 二人は別部屋に入って行く。

「準備ができるまでしばらくお待ち下さい」

 モニアクは一人何もない部屋に残されたが、夜を徹して起きていた為、そのうち部屋にあったカウチの上で寝てしまったようだ。

「トントントン」

 ドアを叩く音で、モニアクは目が覚めた。そして入って来たのは見た事もない機械仕掛けの人形だ。人形はついて来いと言っているようだ。

 その機械人形について行くと外に出た。

 いつの間にか朝になっており、朝の陽光が木々の木漏れ日から大地を明るく照らしている。

 その中にある一番大きな木の所に娘が立っている。白くふわりとした衣装を着て、頭には透けるベールを被っており、手には花束を持っていた。

 その反対側にも同じ衣装を身に付けた女性がいる。あれは確かアルディの第一婦人のリゼルロッテという女性だ。

 二人共、白いウェデングドレスが似合って、とてもきれいだ。

 そして、その間にはアルディが白いスーツを着て立っていた。

「お父様、こちらへ」

 イリューシャに言われ、モニアクは娘の近くに来た。

 それを見て帝国の衣装に正装したローランドが声を発した。

「それではこれより、『アルディ・モーディスター』、『リゼルロッテ』、『イリューシャ』の結婚式を行う」

 モニアクの眼には、もう涙が溢れている。

「『アルディ・モーディスター』は『リゼルロッテ』および『イリューシャ』を生涯の妻とすると誓うか?」

「誓います」

「『リゼルロッテ』は『アルディ・モーディスター』を生涯の夫とする事を誓うか?」

「誓います」

「『イリューシャ』は『アルディ・モーディスター』を生涯の夫とする事を誓うか?」

「誓います」

「帝国憲章に則り、『アルディ・モーディスター』、『リゼルロッテ・モーディスター』、『イリューシャ・モーディスター』を夫婦として認める」

「では、『アルディ・モーディスター』、妻となった『リゼルロッテ・モーディスター』と誓いの口付けを」

 俺はリゼルロッテと口付けをしたが、思えばこれが俺のファーストキッスであり、リゼルロッテともファーストキッスだった。

「次に『アルディ・モーディスター』、妻となった『イリューシャ・モーディスター』と誓いの口付けを」

 俺は今度はイリューシャと口付けをする。

「最後に第一婦人の『リゼルロッテ・モーディスター』、第二婦人の『イリューシャ・モーディスター』と口付けを」

 なぬ、女どおしで口付けがあるのか。それが帝国式なのか。と、思っているとリゼルロッテとイリューシャが口付けをし、その後見つめ合っていた。

 そこは俺じゃないのか。なんだか後頭部を殴られた気分だ。

「3人の未来に幸あれ」

 モニアクは、もう号泣していた。

「ありがとう、ありがとう、娘の結婚式の姿を見れて俺は幸せ者だ。それにイリューシャ、私の娘よ。今日のお前は本当に美しい」

 そして、この時の映像はフォトグラフにしてモニアクに送った。

 モニアクを村まで送って行くと、笑顔で手を振って見送ってくれた。娘の結婚式の写真を胸に抱いて。


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