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第29話 水があってこその人魚

 次に決めたのはエアロパイロットの製作だ。この宇宙艦は長期間の宇宙航行を念頭に置かれて作られている為、3Dプリンタ等の製造装置とその部品が保管されているので、エアロパイロットぐらいであれば製造可能だ。

 ただし、アトラスアクターは修理と改造は可能だが、製造までは出来ない。

 アームデバイスを装着して製作したエアロパイロットの操縦方法を説明する。

 船内の格納庫をある程度操縦して動けるようになったら、今度は船外に出て操縦訓練を行う。

 それも出来るようになったら、アトラスアクターとのテイクインと操縦方法について訓練する。


 そんな日々が3か月続いたある日、イリューシャが元気ない。

「イリューシャ、元気が無いようだけど、どうかしたのか?」

「ええ、なんだか身体が怠くて」

 そんな話をしていたが、3日もすると更に状況が悪くなった。睡眠カプセルから起きて来てもフラフラしているし、食事もほとんど食べない。

 さすがにリゼルロッテも心配のようだ。

「イリューシャ、どうしたんでしょう?」

 ローランドに頼んで治癒カプセルで治療してみたが、治療の後は元気になっても直ぐにまた元気が無くなる。

「うむ、いっそ水の所に連れて行ってみようかの」

 ローランドの言葉に俺がアトラスアクターで、いつかの龍が居た滝壺にやって来た。

「イリューシャ、動けるか?」

「あっ、はい」

 とは言ったものの、身体が動きそうにない。

 俺はアトラスアクターからイリューシャを降ろした後に、お姫様抱っこでイリューシャを滝壺に連れて行った。

 ちなみにこの星の重力は2Gあるので、宇宙艦内で測った時のイリューシャの体重は48ケロ(48kg)だったが、ここでは96ケロ(96kg)になっている。


 以前倒した龍の姿は既に無い。恐らく、他の生物や魚が食べたのであろう。

 俺は滝壺の中を確認し、危険が無い事を確認して、イリューシャを水の中に入れた。

 しばらく水に浮いていたイリューシャだが、そのうち元気になって水の中を泳ぎ始めた。

 水を得た魚とはこれを言うのだろうか。

 時にはイルカの如く、水の中からジャンプして見せたりしている。

「元気になって良かったです」

 普段、仲の悪いリゼルロッテが言う。

 リゼルロッテだって、イリューシャの事を心配していたのだろう。

「リゼルロッテもイリューシャの事が心配だったんだな」

「イリューシャは旦那様の第二婦人で、一応家族ですから心配するのは当たり前です。でも、第一婦人は私ですから」

 いや、お前達を婦人にした覚えは無いが。


「イリューシャ、元気になったか?」

「はい、とっても元気になりました。それにこのユニフォームも最初は恥ずかしかったですが、水の中でも問題無く泳げるので実用的です。

 前の服は脚に絡みついてきましたけど、このミニスカートではそれがありません」

 滝壺に木々の間から差し込む陽の明かりが水飛沫に反射し、その中に舞うイリューシャがとても美しい。

 俺だけでなく、リゼルロッテもその姿に見とれている。

「きれい」

 リゼルロッテも思わず呟いた。

「さあ、帰ろうか」

 皆で帰ろうとした時だ。小型の星獣が現れた。

 小型と言っても大きさは馬ぐらいで2足歩行している。尻尾が長く、牙があるので、俺達を狙って来たと思って良いだろう。

 一匹だけと思っていたら、その後ろに2匹の姿がある。どうやら群れで襲うタイプのようだが、見える範囲に数が少ない。恐らく木の陰に隠れているのかもしれない

「『ジルシュデン』です。群れで襲って来ます」

 リゼルロッテが教えてくれる。

「リゼルロッテとイリューシャはバックアッパーで支援してくれ。アタッカーは俺がやる」

 冒険者としての練習はやってきている。

「「オプティカルゴーガン」」

 二人がアームデバイスを前に出し、武器名を名乗ると光の弓が出た。そこに右手のパワードスーツのブレスレッドを持って行くと、光の矢である「オプティカルアロー」が出て来た。

 このアームデバイスも武器が使える様に改造済だ。

「二人のオプティカルアロー発射と同時に突っ込む。いいか、息を合わせろよ」

「「了解!!」」

 二人は合図をしていないのに、同時に矢を発射した。それを確認した俺は、一番前に出ていたジルシュデンに向かって突っ込んだ。

「マッハブレード!」

 俺は念力のマッハブレードをジルシュデンの首に向けて放った。マッハブレードは、ジルシュデンの首を落として首からは血が噴き出す。

 二人が放ったオプティカルアローも、その後ろに居た2頭のジルシュデンに刺さって、その胴体に穴が開いている。

 倒れた3頭を見た残りはどうするかと思っていたが、案の定木々の中からその姿を現した。その数15頭。

 どうやら、先程の3頭は俺達の実力を図るための先方だったようだ。

 その証拠に、この15頭は先程のジルシュデンより一回り身体が大きい。

 そして、一番後ろに控えているジルシュデンは更に身体が大きく、恐らくこいつがボスだろう。

「パワードスーツ装着!」

 俺が指示を出す。

「「「アクセプト!」」」

 体にパワードスーツが装着された。

「グォーーー」

 一番奥に控えているボスが雄叫びを上げると、ボス以外のジルシュデンが一斉に襲い掛かって来た。

 一度に全部のジルシュデンを倒す事は出来ない。例え3頭が倒されようと、残りが俺達を倒せば良いという戦法だろう。

 群れで狩りをするだけの知能があるのだ。

 だが、俺たちはパワードスーツを装着している。その場でジャンプすると優に5メル(5m)以上のジャンプが可能だ。

 そして、上空に上がり、木の枝に移動するとジルシュデンの上からオプティカルアローやマッハブレードを発射した。

 すると瞬く間に6頭が倒れる。残りは9頭だ。

 ジルシュデン達は一瞬怯んだが、木の下から俺達を見上げている。

 アトラスアクターに乗ればもっと簡単に倒せるだろうが、アトラスアクターまでは距離があるし、乗るまで待っていてくれる訳はない。

 俺はパワードスーツのホルダーに収納してあったリレーのバトンのような筒を取り出し、そこに付いているボタンを押す。

 すると筒から光の剣が出て来た。プラズマソードだ。

「一番後ろのボスを殺る。二人はサポートを頼む」

「「了解!」」

 俺は木からジルシュデンの群れの中心に飛び降りた。群れはいきなり俺が中心に降り立ったので、パニックになっている。

 その中の2頭が木の上から飛んで来た光の矢で倒された。その隙を狙い、ボスの前に居るジルシュデンの首を落とす。

 これで更に3頭が居なくなった。

 俺はそのままボスを目指して突っ込んで行くが、ボスの前に2頭のジルシュデンが行く手をじゃまするように立ち塞がる。

 その2頭には再び木の上から飛んで来た光の矢で倒される。俺は右手にプラズマソードを手に持ってボスに突っ込んで行くが、ボスがいきなり後ろを向いたかと思ったら尻尾で俺の身体を薙ぎ払った。

 俺の身体は、そのまま木の幹に向かって吹っ飛んで行く。

「ドガーーン!」

 俺の身体が木の幹に当たって、大きな音が森中に響いた。

「旦那様!」

「ご主人様!」

 リゼルロッテとイリューシャが同時に声を出す。

「くうっ」

 かなりの力で吹き飛ばされたが、パワードスーツのおかげで身体に異状は無い。

 俺は直ぐに立った。そうでなければ直ぐに襲われてしまう。

 ヤツらだって、のほほんと狩りをして来た訳では無い。弱い相手は徹底的に叩く。それが生き延びる秘訣であり、その機微を野性的な感覚で持っている。

 立つと同時に2頭のジルシュデンで襲って来る。だが、その2頭は光の矢が当たっている。

 俺はその2頭の首を撥ねると供に、再びボス目掛けて突っ込む。

 するとボスが同じように尻尾を振って俺を吹き飛ばそうとするが、同じ手が2度通用する訳が無い。

 俺はジャンプして振られた尻尾を避けボスの背中から脊髄をプラズマソードで突き刺した。

 脊髄が損傷すると動けなくなるのは人だろうと星獣だろうと一緒だ。ボスはそのまま静かに倒れて行く。

 だが、身体が大きいため意識はまだあるようで、その眼で俺の方を見た。

「グォルルル」

 何か叫ぼうとするが、もう声も出ないだろう。

 ボス以外のジルシュデンは既に逃げて行った。俺はボスにトドメを刺さずにその場を離れた。

 俺たちが立ち去った後は、ゴブリン共がこのジルシュデンの死体を処理してくれるだろう。既にアームデバイスには、無数の赤い点が表示されている。

 これは俺たちの戦闘を何者かが見ていると言う証だ。この赤い点は、ゴブリン共に違いない。


「撤退する」

 俺とリゼルロッテはアトラスアクターに乗り、俺はイリューシャをアトラスアクターの手で掬い上げた。

 ゴブリン共もある程度知識があるのか、以前叩かれた事で俺達に向かって来ようとはしない。

 それより、倒された餌を得る方が簡単だ。


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