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第27話 プロポーズって場所によって違うんです

「あっ、はーん、ふーん、はぁーん」

 助けた彼女もリゼルロッテの時と同じ反応をする。とても色っぽい姿だ。

 10分程すると納まって来たのか、通常の状態になって来た。もう、いいだろう。

「俺の言ってる事が分かるか?」

「あっ、はい、分かります」

 羽交い絞めにしていた彼女を離そうとした時、彼女の耳が長い事に気づいた。これはエルフ族ではないか。

 俺はもっと近くで見ようと思い、彼女の耳に眼を近づけてみた。

 でも、エルフ族の友人であるシュリーとは若干耳の形が違うような気がする。

「フッ」

 俺は思わず息をついたが、それが彼女の耳に掛かった。

「はあーん」

 彼女は色っぽく言うと、俺を見つめる。

「えっ、えっ?」

 俺は彼女を解放するが、彼女はそのまま俺の胸の中に居る。

「ちょっと、旦那様から離れて下さい」

 リゼルロッテが怒って言うが、彼女は意に介していない。そして、彼女が言ったのは驚く一言だった。

「だって、私のご主人様だもの」

 はっ? はぁぁぁぁぁぁ!

 私のご主人様? いや、ただ助けただけだ。確かに助けられた事に関し、感謝しているかもしれないが、それが私のご主人様ってどういう事だ?

「俺は、あなたのご主人様になった覚えは無いが・・・」

「えー、酷い。だって私の耳に息を吹きかけてくれて、私はそれによって感じてしまい、あなた様を受け入れたのです。

 あなたは私のご主人様になったのです」

 その言葉を聴いていたリゼルロッテが、うさぎ耳を立てて怒った。

 うさぎ人は怒ると、うさぎ耳が立つらしい。

「アルディ様は私の旦那様です。何を勘違いしているのですか?」

「だって、私の耳に息を吹きかけて感じさせてくれたのです。私の初めてだったのですよ。私のご主人様になって頂くしかありません」

 いや、その理屈は分からない。

 それから話し合って分かったのは、この種族のルールとして男性が女性の耳に息を吹きかけ、女性がそれで感じてしまい、拒否しなかったら、プロポーズ成功という事だった。 つまり、俺は彼女にプロポーズし、彼女はそれを受け入れたと言う事になってしまったのだった。

 俺たちのルールも説明したが、受け入れてくれない。

「まずは君の名前を教えてくれないか? 俺は『アルディ・モーディスター』、アルディと呼んでくれ。

 そしてこっちは、『リゼルロッテ』だ」

 リゼルロッテは「フン」と言って横を向いたまま、両腕を組んでいる。

「私は『イリューシャ』と言います。14歳です」

 こいつもか。胸はどう見たってEカップ、ウェストなんて俺の太ももより細く、お尻の形も良い。

 その身体で14歳はないだろう。身体には密着した白いドレスのような衣装を着ている。

 見ると俺達の周辺に村人たちが近寄って来ていた。

 その村人たちが言っている事は、翻訳虫が耳に入っている俺には理解出来た。

「お嬢様、結婚おめでとうございます」

「イリューシャ、おめでとう」

 村人は祝いの言葉を投げかけている。

 この状況で「結婚しません」って言える雰囲気ではない。

 俺はイリューシャに聴いてみた。ちなみに俺の言葉は、翻訳虫を耳に入れていない人には内容が理解出来ない。

「あのさ、もし結婚しませんって言ったらどうなるんだ?」

「私は遊ばれた傷物女として、この村から追放されます。ご主人様は村の女を弄んだ男として、村人から迫害を受けます。悪くすれば殺されます」

 嫌や。そうだ、リゼルロッテを盾にしよう。

「俺にはもうリゼルロッテという人が居るから、君まではちょっと無理かもしれない」

 俺の言葉にリゼルロッテの顔が、パッと喜んだ顔になった。

「いえ、問題ありません。強い男に女は靡くもの。それはしょうがない事ですから」

「リゼルロッテ、何か言ってくれ」

「私の村でも、一人の男に複数の女が嫁ぐのは普通でしたので、彼女の言われる事は何も間違った事ではありません。

 私の母も第二婦人でしたし」

「いや、怒ってないのか?」

「彼女が旦那さまの婦人になる事に怒っている訳ではありません。私の前でぴったり寄り添っている事に怒っているのです」

 俺は目の前が真っ暗になった。だが、このイリューシャという女性、美人だし、プロポーションも良い。髪は水色とちょっと見たことが無い髪色だが、肌の色は白くそして目が紅い。

「それで良かったら、この『ガルガミージュ』を倒した事と、私との婚約の宴を開きますので、ぜひ参加下さい」

 そこに歳を取った男性が来てイリューシャと話している。そして、俺にも話し掛けて来た。

 その内容をイリューシャに通訳して貰うが、その前にイリューシャから男性を紹介された。

「私の父で村の村長をしている『モニマク』と言います。この度は娘と結婚して頂きありがとうと言っています」

 そして、モニマクが右手を上げると、村人が海の中に飛び込んで行く。

 驚いて見ていると、海から上がった村人達は手に魚を持っている。

「船とか釣り竿とか使わずに、手で魚を捕るのか?」

 俺はイリューシャに聴いてみた。

「えっ、船とか釣り竿って何ですか?」

 船や釣り竿を知らない? 俺はアームデバイスに船や釣り竿を表示させてみると、逆にイリューシャはびっくりしている。

 いや、イリューシャだけでなく、集まって来た村人もびっくりしていた。

「逆に聴くが、どうやって魚を捕っているんだ?」

「手掴みですが・・・」

「魚の泳ぐスピードって速いじゃないか。追い付ける訳が無いだろう」

「いえ、追い付けますよ。後ろから追って行って魚を捕まえるんです」

「だとすると、君たちが泳ぐスピードって魚と同じ位って事か?」

「魚を捕まえるんで、魚より速く泳げます」

 それでどうやって泳ぐかと見させて貰ったが、両足をぴったりとくっ付けてドルフィンキックで泳いでいる。

 その姿は、まるで人魚のようだ。それに海の中でも、かなり長い間息を止めていられるようだ。

 それをイリューシャに言うと、

「海の中でも息が出来ます」

「いや、水の中で息をするのは無理だろう」

「えー、そうなんですか? 私達は出来ますけど」

 話を聴いてみると、どうやら鼻の中にエラがあり、そこから水中の酸素を取り、耳のところから水を排出するらしい。

 だから耳が弱点だとも言っていた。

 つまり、イリューシャ達は両生類だと言う事なのか?

 俺の頭の中には蛙の姿が浮かんだが、この村の女性達は全員が美人だ。


 陽が落ちると宴になったが、テーブルに並んだのは全てが魚だ。俺としては刺身があったので、前世の記憶が蘇りとても懐かしい。

「これをつけて食べて下さい」

 イリューシャから渡されたのは醤油だ。

「これは醤油だ」

「いえ、魚醤です」

「魚醤って魚の醤油だろう。それがあるのか」

「ありますよ。反対に魚以外の魚醤ってあるのですか?」

「大豆と麦から作るんだ」

「大豆と麦って知りません」

 だが、隣のリゼルロッテを見ると、刺身を持ったまま固まっている。

「どうしたリゼルロッテ?」

「いえ、これって食べ物でしょうか? 初めて見る物なので、どうやって食べて良いか分かりません」

 そういえばリゼルロッテって、うさぎ族だから野菜ばかり食べているのだろう。こいつに今度、にんじんを見せてみるか。どういう反応をするだろう。

「この黒い水をこうやってつけて食べるんだ」

 箸が無いので、手掴みで食べてみせる。

 俺がやってみせると、リゼルロッテがマネして食べてみる。

「うーん、微妙ですね。食べれない事はないですが」

 いや、そんなことは無いぞ。マグロの様でとても美味しい。隣の刺身を見るとサーモンの刺身もある。これも美味しい。

 刺身だけじゃない。焼き魚もある。どうやら鯖のようで脂がのっていて美味しそうだが、やはりリゼルロッテには微妙のようだった。

 イリューシャは、それを見て舌音痴と馬鹿にしたので、再びリゼルロッテとイリューシャの争いが始まったが、それは宴の余興として村人達からヤンヤンヤの喝采を受ける事になった。

 こうなると本人たちも馬鹿らしくなって来たのか、お互いプイと横を向いたままだ。


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