第26話 地図を作ろうと思ったが人を助けた
そんなある日、俺はローランドに提案してみた。
「師匠、スペースコミュターで宇宙に出てこの星の写真から地図を作りたいと思いますが、許可して頂けないでしょうか?」
「地図をか? うむ、良いのではないかの。しかし、地図をどう使うのじゃ?」
「将来この星を開拓する場合や街を作る際の地理的条件の把握、それと害獣からの防衛など、地図が有れば有益な手段になります」
「成る程な。では、これを使うが良い」
ローランドに連れられてスペースコミュータの格納庫に来た。
「不時着した時にカタパルトの出口が塞がれてしまっておるので、カタパルトからの発艦は出来ん。上部コーテナーからの発艦になるぞ」
「それは構いません」
格納庫に行くとスペースコミューターがあったが、見たことがない形だ。俺が居た「若き血潮」でも前世のバスを大きくした形だったが、これは三角翼でどちらかと言うと飛行機に近い。
だが、この翼も滑空のための翼というよりはエネルギー貯蔵タンクになっているため、翼の厚さも厚い。
もちろん、大気がある星では滑空も可能だ。大気を使う滑空は、それだけでエネルギーの消費が少なくなるからだ。
翼があると言う事は、それだけコミューターの形も大きくなるため、翼の大きさまで入れると今までのコミューターの3倍にもなる。
「上部コーテナーハッチ解放」
格納庫内から操作すると表示が青に変わり、ハッチが開いて行く。
完全に開いたところで、操縦席に乗り込み機体を浮かし、ゆっくりと上昇させた。上部コーテナーハッチから外に出ると、その白い機体が太陽の光を浴びて白く輝いた。
既にアトラスアクターを2機、スペースコミューターに乗せてある。定員10名は「若き血潮」で使用していたスペースコミューターと一緒だが、その性能は段違いだろう。
エアロパイロットのまま、操縦席に乗り込むと目の前にライズアップして来た操縦桿を握る。隣のコパイロットの位置には、リゼルロッテが乗っている。
「師匠、行ってまいります」
俺は上昇レバーを引くとスペースコミューターは垂直上昇し始めた。ある程度、上昇した位置で更にレバーを引いて行くとその上昇速度は増し、あっという間に大気圏に達した。
「きれい」
リゼルロッテが呟く。
「リゼルロッテは宇宙に出るのは初めてか?」
「そうです。しかも自分が住んでいた星がこんなにきれいだったなんて」
リゼルロッテは感動しているようだ。
「感動しているのも良いが、やるべき事をやろう。画像撮影とそれから地上の地図を自動作成開始」
「了解しました」
まずは自分達が居た場所の地上の画像を撮影し、それから自動的に地図が作成されるが、都市も無ければ造られたような道もない。見える大地全てが森林である。
その森林の中に大型の星獣が歩いているのが見える。獣が歩く場所は獣道のようなものがあるだけだ。
星獣も草食系や肉食系があり、草食系の星獣がのんびりと木の葉を食べている姿もある。
これらの姿は前世の恐竜時代を思い出した。
「太陽に照らされている部分のみの撮影が可能だから、惑星の自転に従って、撮影していくぞ」
「了解です。ちょっと待って下さい。この画像を見て下さい」
リゼルロッテが指示した画像が目の前の大型スクリーンに映し出されたが、そこには大きな巻貝に襲われている海辺の村があった。
村人は逃げ惑い、中には幼い子供を抱いた母親と見られる女性も居る。
「旦那様、どう致しましょうか?」
リゼルロッテは自分の村をギルガンに襲われた事を思い出したのだろう。母親もギルガンに食われたのだ。
それを思い出したからこそ、助けに行きたそうだ。
「リゼルロッテ、アトラスアクターの準備。スペースコミューターを高度300メル(300m)で停止後、エアロパイロットでテイクインしたまま降下する」
「了解です。スペースコミューター高度300メル(300m)まで降下します」
大気圏から高度300メル(300m)まで急速降下を開始した。窓の外が大気圏突入で赤くなっていく。
そのうち、窓の外に青い空が広がると高度300メル(300m)でスペースコミューターが停止した。
「スペースコミューターを自動制御に入れて、アトラスアクターで突入する。いいか、ゴー」
俺とリゼルロッテはアトラスアクターでスペースコミューターの格納庫から飛び出した。
普通、巻貝は横になると思うが、この貝は縦に立っている。そしてその口からは触手が出ており、その触手で地上を歩いている。
巻貝の大きさは、ギルガンより大きく20メル(20m)を超えているだろう。
そして、その巻貝の前には一人の女性が倒れている。巻貝はその触手で女性を掴み取り、触手の中心にある口の中に女性を入れようとしている。
そこに俺がアトラスアクターで降下し、女性を捕まえている触手をソニックブレードで斬った。
女性が砂浜に落ちると、リゼルロッテが直ちに女性を助けて、その場を立ち去った。
見ていた村人達が歓声を上げている。だが、まだ終わった訳ではない。
触手を斬られたとはいえ、巻貝はまだ問題無く動いている。
俺は照準を設定し、巻貝に向けてブラスター機関銃を発射したが、その外皮によってブラスター弾が弾かれてしまった。
ブラスター機関銃が通用しないと判断した俺は、両肩からブラスター弾頭ミサイルを2発発射する。発射したミサイルも外皮に当たって爆発したが、その巻貝は傷一つ付いていない。
貝の部分には武器が通用しないようだ。
俺は触手のある位置を狙ってブラスター機関銃とミサイルを打ち込んだが、今度はある程度効果はあったようだ。
だが、巻貝はその触手を貝の中に入れてしまい、守りに入った。
こうなると襲われる事も無いが、攻撃も通用しない。どうにか貝の部分を破壊する必要があるが、アトラスアクターの武器は通用しない。
「旦那様、どうしましょうか?」
リゼルロッテが聴いて来たが、俺にも分からない。
「やれるだけやって見るか」
俺はアトラスアクターで巻貝の上に乗り、ソニックブレードで斬ろうとするが、浅い傷が付くだけで、倒すまでいかない。
「くそっ、だめか。だとすると、これだ『サンダーボルト!』」
俺は念力の雷力を巻貝に流した。
すると、居たたまれなくなったのか、巻貝の中から触手を出して来て、海の中に逃げようとしている。
「マッハブレード!」
念力の音剣をソニックブレードとしていたが、通常の剣のソニックブレードと同じになるので、念力で扱う音剣はマッハブレードと名付けた。
音波で出された剣は巻貝の触手に行くとその触手を全て斬り落とした。そうなると巻貝は触手が無いので歩くことが出来なくなって、その場に立ったままになった。
そして巻貝の触手が無くなった部分は口だけとなり、黒い穴が開いているようになっている。
「ファイヤーブレード!」
俺は、その穴にファイヤーブレードを投げ込んだ。
巻貝は最後の断末魔のように歪むと立っていた巻貝が、ゆっくりと倒れて行く。
「ド、ドーン」
かなりの巨体が横に倒れ、水飛沫が舞う。
「「「「「う、うぉー!」」」」」
見ていた村人が雄たけびを上げる。
俺はリゼルロッテの所に行くと、助けられた女性がリゼルロッテの横に立っている。
俺とリゼルロッテはパワードスーツをアクセプトアウトし、彼女に近づくと彼女が言葉を発した。
「▲%%≠>♭∽≒▲%%≠>♭∽≒・・≡∮∑◎□◆△∩▲%%≠>♭∽≒・・≡∮∑◎□◆△∩∧∇∀▽〓〓&」
うん、言ってる事が分からない。
「リゼルロッテ、彼女の言ってる事が分かるか?」
この星の住民だったリゼルロッテに聴いてみる。
「いえ、分かりません。ここは私の居た星の裏側になりますから、言葉も違うと思います」
「翻訳虫って持って来ているか?」
俺の言葉ににリゼルロッテが、いたずらっ子のように「ニィ」と笑うと
「持って来ています」
「なら、やる事は分かっているな。俺が押さえるから、リゼルロッテは翻訳虫を頼む」
俺は助けた彼女に近づき、彼女を羽交い絞めにした。
「今だ」
俺が言うと、リゼルロッテがピンセットで虫を掴んで、助けた彼女の耳に翻訳虫を入れた。




