第25話 ヒーローになりました
俺は、その日から空気中の密度を変化させる練習を繰り返し行った。
1週間後、俺は再び船の外で的を目掛けて風剣の模擬を行う事になった。
距離は前と同じ50m。
「エアーブレード!」
俺の左手から放たれた風の剣は50m先の的を落とした。
「見事じゃ」
ローランドが褒めてくれた。
「もう一度やります」
俺は脚の下に空気を集めて圧縮し、いきなりそれを解放する。
「ポン」
圧縮された空気が爆発する音がすると共に、俺の身体が5m程浮かび上がった。
「エアーブレード!」
浮かび上がった状態で、風の剣を出し再び50m先の的を落とした。
「なんと!」
地上に降りた俺にローランドが近寄って来た。
「今の浮上も風力の応用かの。儂には思いつかなんだ。お主、前世の記憶で改良したのか?」
「念力は応用が利くものだと思います。例えば、火球と風力を合わせるとこうなります」
俺の左手にいつもより大きな火球が出て来て、100m以上ある木に当たってその木が燃えた。
燃えた木は水球を出して、火を消した。
「ところでなアルディ、お主、念力を使う時いちいち発声するが、あれはなんじゃ?」
「いえ、カッコイイかなと思って、それに気合が入りますし」
「そうか・・の? カッコイイ・・かの? まあ、気合は重要じゃな」
「師匠には、あのカッコ良さが分からないのですか? リゼルロッテ、叫んだ方がカッコいいだろう?」
「はい、旦那様の言う通りです。私も言って貰った方が、どんな念力を使うのか分かって戦い易いですし」
リゼルロッテは俺の言う事は絶対だ。いつも俺の後ろをついて来て本当に可愛い。12歳でも色っぽかったのに、15歳になった今は更にその美しさに磨きがかかっている。
それに前はバニーガール衣装だったが、今は冒険者と同じミニスカートとブラジャーの衣装を身に付けておりプロポーションが良いので、その衣装もとても似合っている。
念力が使えるようになった俺は色々と試してみた。その結果、教えて貰っていない雷力を使えるようになっている。
雷力は空気中の分子を振動させ、それにより静電気をつくり、その静電気を相手に向かって投げつけ感電させるものだ。
これは複数の相手に有効なので、ゴブリンの群れには有効だが、ギルガンのような大型生物にはそれ程効果はない。
更に雷力の応用で音力という力も使えるようになった。これは分子を振動させ、音波として相手に投げつけるとソニックブレードとして使える。ウィンドブレードと同じようなものだが、空気の真空を作るよりも使う念力が少なくて済むので、省エネになる。
発声では「ソニックブレート」と言うと他にもあるので、俺は「マッハブレード」と名付けた。
だが、出来ないものもある。それは瞬間移動だ。
ローランドに聴いたが、瞬間移動は時空を曲げて地上にワームホールを作り出す必要があるので、多くの念力も必要だが、もし地上にワームホールが出来たら、地上が吸い込まれるのではないかと言われてしまった。
なので、瞬間移動は諦めた。
火球もボール状態からファイヤーアローにしたり、水球もウォータージェットを作り出したりと色々工夫してみた。
ある程度地上で念力が使えるようになった俺はふと思った事があり、ローランドに聴いてみた。
「師匠、火球や水球は地上では使える様になりましたが、宇宙空間では使えませんよね。宇宙空間ではどうしたら良いでしょうか?」
火球や水球は空気の中にある水素分子や炭素分子を利用する。宇宙空間にそれはない。
「確かに宇宙空間に酸素や炭素はないが、水素はある。ただし、水素だけなら宇宙空間で爆発はしない。
その時は宇宙空間にある他のエネルギーを使うのじゃよ。例えば、『ミジハロスキー粒子』や『キセノン粒子』とかはそのままでも使えるし、水素と合わせると非常に高い爆発を起こす事が出来るのじゃ」
なるほど、宇宙空間でも使えるものはあると言うだ。それは宇宙に出て確認するしかないようだ。
宇宙艦にはかなりの量の食料が蓄えられているので、3人で食べても無くなると言う事は無いが、リゼルロッテがこの星の食材を使って手料理を作ってくれるようになった。
リゼルロッテが作る料理は中々の物で味も美味しく、念力を使った後の体力回復にも効果があるが、料理は野菜料理が中心だ。
ローランドにその事を話した事があるが、根野菜とかもこの星で生きてきたのだから、それを食する事で身体もこの星になじんで来たのだろうとの事だ。
食事は命の源なりという言葉を思い出す。
そんなある日、船に積んであるスペースコミューターで宇宙に出てみる事になった。ただし、その前にリゼルロッテにエアロパイロットの操縦方法、アトラスアクターの操縦方法、それにプロテクションスーツの装着をさせてみる必要がある。
宇宙に出る以上、何かあってはいけない。その為には最低の知識は必要なのだ。
「師匠、プロテクションBOXでプロテクションスーツの装着をします」
「アルディ待て、お主に渡す物がある」
ローランドが差し出したのは、アームデバイスと同じように腕に装着する見慣れない装置だ。
「アームデバイスなら既にありますが・・・」
「これは性能が違う。それに新しいアトラスアクターを操縦するには、このアームデバイスが必要となる」
俺は新しいアームデバイスを装着した。すると、そこには見たことがない表示があった。
それは嫌が上にも性能が上である事を示している。
「それでこっちは?」
右腕に装着した腕輪を見た。
「それは新しいプロテクションスーツじゃ、いや、プロテクションスーツではなく、パワードスーツじゃ」
「パワードスーツ?」
「アクセブトと言ってみよ」
「アクセプト!」
するとアクセプトBOXに入っていないのに、身体中に白いスーツが装着されていく。そしてヘルメットも装着された。
プロテクションBOXではヘルメットは自分で被らなければならなかったが、こちらは全て装着される。
それに、パワードスーツを着用すると「ブラスターガン」2丁と「プラズマソード」という武器も自動的に装着される。
断然こっちの方が性能が上だ。
「師匠、これは凄いです。プロテクションBOXが不要だなんて」
「それだけではない。このスーツは身体能力を5倍に向上させる。ジャンプなら10メル(10m)、速度なら目に停まらぬ速度で動く事が出来る」
試しにパワードスーツを着用して、リゼルロッテと模擬戦を行ったが、身体能力が向上すると相手の動きについていけないかと思っていたが、ヘルメットのインナーディスプレイに人間の感覚を超える場合の情報が提供される。
相手の位置、攻撃術、武器などだ。ブラスターガンの弾でも避ける事が可能だ。
そして、アトラスアクターも新型だ。今までのアトラスアクターは正直ダサいデザインだったが、新型は前世で見たアニメロボットそのものだ。
見た目がとてもカッコイイ。
変形エアロパイッロトの変形を解除して、頭部にドッキングさせるとスクリーンに表示される物が違う。
今までのアトラスアクターは全てがアイコンだったが、これには文字が表示されている。
更に違うのはAIコンピュータ搭載で、音声で対応できるし、判断に迷った時にAIがサポートしてくれる。
アトラスアクターについても操縦の熟練を図るため、リゼルロッテと模擬戦を行ってみたが、熟練の差もあって俺の方に軍配が上がった。
ただ、前世のヒーロー特撮ドラマに近づいて来たような気がする。




