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第24話 魔法の訓練始めました

 1年間トレーニングした俺の身体は、以前とは見間違うほどの身体になった。今では片腕で100kgのウェイトを持ち上げられるし、ジャンプ力も1mはジャンプ出来る。

 これが1Gの重力の星だったら倍以上になる。

 この身体を見たローランドも満足した顔をしている。

 2年目からは体術と剣術の練習に入ったが、トレーニングは今まで通り続けている。

 今更、何故剣術なのかと思ったが、ローランドに言わせると戦う事の基本だからだそうだ。

 どんなに武器が発達しても、最後には剣を使った戦いが生存を分けるというのだ。

 逆に、銃の扱いについては左程練習はしていない。銃も自動照準が標準になったこの世界では、引き金を引くだけで良く、さほど意味を持たないからだ。

 ローランドが言うには、筋肉が強ければ自動照準がなくても命中精度は上がるとの事だ。

 2年目のリゼルロッテは俺と同じように訓練を受けているが、彼女は意外と飛び道具が得意のようで、弓と銃の命中精度はかなり高い。銃は自動照準がなくてもほぼ100%狙った場所に着弾する。

 試しにブラスターライフルを与えてみたところ、まるでスナイパーそのものだ。

 そして3年目になる頃は俺とリゼルロッテはゴブリン狩りをするようになった。二人でゴブリンの群れを探し出し、それを殲滅するのだ。30体程の群れであれば2人で問題無く殲滅出来るほどの腕はある。

 リゼルロッテも既に俺たちの言葉を覚え、翻訳虫がなくても会話できるようになり、文字の読み書きと計算も行う。

 また、俺との息もぴったりで、ゴブリン退治も以心伝心で相手の行動を予測し、対応する事が出来るようになった。


 そんなある日、ローランドが俺に言って来た。

「ここから次のスキルの習得に入る。それは脳の未使用領域の開放じゃ」

「脳の未使用領域の開放ですか?」

「これはアルディにしか出来んから、リゼルロッテは今までの練習を行うが良い。

 アルディには、人間の脳の使用領域はどれ位か知っておるかの?」

 前世では、人間の脳波は10%ぐらいしか使っていないと聴いた事がある。

「10%ぐらいですか?」

「うむ、そうじゃ。では残りの90%が使えるようになると、どうなるか分かるかの?」

 へっ、そんなの考えた事もなかった。

「いえ、分かりません」

「念力が使えるようになるんじゃよ」

「念力ですか?」

「そうじゃ、念力じゃ」

「念力って何ですか?」

「頭で思う事で化学反応を生み出す事が出来るんじゃ」

「は、はぁ?」

「見た方が早いかの、ほれ」

 ローランドが右手を出すとその手の平に火の球が現れた。

「ファ、ファイーボールだ!」

「ほう、良く知っておるな。お主、どこでそれを知った」

 えーと、ライトノベルの世界です。だが、それは言えないので、黙っていると

「アルディ、お主、もしかして転生者か? 今まで、不思議なヤツだと思っていたが、転生者なら頷ける。どうじゃ?」

 俺は黙って首を縦に振った。

「やはりそうか。お主、今夜、前世の話を聴かせてくれ」

 その夜、リゼルロットが寝てから俺はローランドに前世の話をした。それを聴いたローランドはただ一言「そうか」と言っただけだった。


 翌日から念力の練習が始まった。

「アルディ、まずはその名の通り動念力からだ。このコップを動かすことから始める」

 テーブルの上に置かれているコップを動かす練習だが、これは何日やっても出来ない。それをみたローランドが動念力の作り出しから始めた。

 ローランドが俺の手を握り、ローランドが持つ念力を俺に流すと、俺の中の神経や血管などが湧き立つ感じがする。

「良いか、この念力を感じるのだ。このままコップを動かしてみよ」

 ローランドが俺の手を握ったままで、俺はコップを動かすように念じるとコップが5cm程度であるが動いた。

「う、動いた」

「では手を離すぞ。もう一度やってみよ」

 同じようにコップを動かすよう念じてみると、コップが動き元の位置に戻った。

「で、出来た!」

「今の感じを忘れないように何度も練習してみよ」

 俺はコップが動いた事が嬉しくてその夜はコップを動かしていたが、その日はそのまま寝てしまった。

「旦那様、起きて下さい」

 リゼルロッテの声で目が覚めた。リゼルロッテは3年前から俺の事を「旦那様」と呼ぶようになっている。

「あれ、リゼルロッテ、どうした?」

「どうしたって、もう朝ですよ。旦那様って、昨日はこのまま寝てしまったのね。ダメですよ、ちゃんと睡眠カプセルで寝ないと。

 朝食が出来ているから食堂に来て下さい」

 俺が食堂に行くと、温かい朝食とローランドが居た。

「アルディ、そのまま寝てしまったか。念力は使い過ぎると眠くなるから、注意が必要じゃ。

 使えば使うほど慣れるじゃろうが、最初から無理はしないようにな」

 朝食が終わったら、また日課のトレーニングだ。基礎トレーニングと射撃、剣術、弓術、体術、それにアトラスアクターの操縦訓練、飛行訓練も行う。

 かなり体力も技術も上昇してきたが、念力だけはコップの移動から上達しない。

 ファイヤーボールの出現には、まだまだ時間が掛かりそうだ。

「良いかの、ファイヤーボールは空気中の水分から水素原子を取り出し、それに空気中に浮遊する炭素原子を加えて作るのじゃ」

 いや返って分からん。そんな簡単に原子は取り出せない。

「例えば、水素と炭素からどんな燃料を作り出すんですか?」

「そうじゃの、儂はメタンを作っておる。メタンを作るイメージで作ってみよ」

 メタンCH4で良いのか。だったら、炭素1つに水素4つを頭の中でイメージしてみる。

「ボッ」

 俺の手の平で火球が出て、直ぐに消えた。

「で、出来た!」

「おおっ、出来たの。後はこの火球の時間を延ばす事をやってみよ」

 俺が作り出した火球は一瞬でしかない。これだと煙草に火をつけるぐらいしか使い道がない。

 戦いに使うとなれば20秒ぐらい継続して火球を維持出来ないといけない。

 そして俺は翌朝、またリゼルロッテに起こされる事になる。

 1週間もすれば俺は火球を20秒ぐらい出せるようになった。その成果をローランドに見て貰う。

 船の外に出て、50m先の的に目掛けて火球を放つ。

「ファイヤーボール!」

 すると、左手から10cm程の大きさの火球が出て50m先の的にに当たった。

「ようやった」

 ローランドが褒めてくれた。

 リゼルロッテはポカンと口を開けたまま、その的を見ている。

「次は水球じゃな。水球も空気中の水分子を集めて水球を作るのじゃ」

 俺はその場で左手の上に水球を作った。

「お主、いつの間に水球が作れるようになった?」

「昨夜、火球の練習の後にやってみました」

「うむ、ようやった」

「師匠、風剣の作り方を教えて下さい」

 俺は指導を受けるようになってから、ローランドの事を師匠と呼んでいる。

「風は空気中の空気密度を少なくする事でそこに風が流れ込む。空気密度が少ない箇所を2カ所作る事で2カ所に空気が流れ込むが、その時の空気層のズレで対象のものを切断する事が出来る」

 つまり、かまいたちの原理だろう。


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