第23話 コブリン退治
「アルディ、お主のアトラスアクターは格納庫に収納してくれ」
ローランドが言った途端、艦内にアラームが響き渡った。
フォログラムディスプレイを起動してその原因を探ってみると、俺のアトラスアクターの周辺にゴブリンの群れが見られた。
「お主のアトラスアクターはゴブリン達に好かれているようじゃの」
ローランドが面白がって言う。
「エアロパイロットも外に置いたままで、テイクインも出来ません。どうにかしないと」
「エネルギーはあるのかの?」
「実はエネルギーはほとんど残っていません。例え、残っていたとしても武器がゴブリン用じゃないので、弾薬とか直ぐに無くなってしまいます。外に出て戦うにしても数が多いですし」
「それにやつらは2Gの重力で生活しておる。安易にゴブリンと戦う選択をしてもやつらの方が強いぞ」
そうだった。外の重力は艦内の2倍だ。俺は外に出た途端、動きが鈍くなる。
「ならばお主に良いものを貸そう。それで対応出来るじゃろ。儂もゴブリン共に、ここに来て欲しく無いしの。
ちょっと脅しもかけてみるか。こっちへ来い」
俺とリゼルロッテはローランドに連れられて駐機場にやって来た。そこには、見慣れない形のエアロパイロットが並んでいる。
「通常のエアロパイロットには武器は掲載していないが、このエアロパイロットにはブラスター機関銃が装備されている」
俺はその見慣れないエアロパイロットに乗って起動してみた。すると起動したフォログラムディスプレイに見慣れない表示もある。
「これがプラスター機関銃のエネルギー残量計じゃ。それとこのボタンじゃが、飛行形態への変形ボタンじゃ」
「飛行機になると言う事ですか?」
「まあ、そう考えて貰って良い。速度が500キル(時速500km/h)まで出せるようになる。
ブラスター機関銃は左右に1門ずつある。発射ボタンはこのスイッチで安全装置はこっちのボタンじゃ。
当然のことながら安全装置を解除せんとブラスター機関銃は使用できん」
指示されたボタンは右マウスの中央にある赤いボタンだ。まるでマウスホイールのようになっている。
「分かりました。では行ってきます」
「まあ、待て。その前に身を守るためにプロテクションスーツを着けんかい」
俺はアクセプトBOXに入ってプロテクションスーツを着て来た。
そして、エアロパイロットに乗るとゴブリン達がいる左舷ではなく手薄な右舷ハッチから出て行った。
宇宙艦の上から廻って左舷に行くとゴブリン達が石斧でアトラスアクターを叩いている。
俺はそのゴブリンの群れに向かってブラスター機関銃の発射ボタンを押した。
「パンパンパンパンパンパン」
乾いた音と共に赤い弾光がエアロパイロットから発射され、ゴブリンに当たると、ゴブリンが倒れて行く。
それを見た他のゴブリンは一斉に身を屈める。だが、追尾照準があるブラスター機関銃では身を屈めても確実に当たる。
ゴブリン達は逃げ出したが、二度と近づかないようになるべく肝に染み込ませたい。
俺はエアロパイロットの変形ボタンを押した。
すると後部格納箱からキャノピーが出てきて、左右のアームレフトが前に出てバイクのハンドルのようになる。
椅子の部分が二つに分かれバイクに跨るような体制になると共に、椅子の横の板が水平になり、飛行機の形になった。
アームレフトはバイクのハンドルのようになっており、操作はバイクと同じようにハンドル部を回す事によってスピードが上がる。
上昇下降は左のハンドルによって操作する。右ハンドルの親指の位置にある赤いボタンがブラスター機関銃のスイッチになっている。
俺は飛行しながら、逃げるゴブリンの後方から機関銃を斉射した。
そのゴブリン達の前にギルガンが現れた。俺はエアロパイロットを上昇させる。
ゴブリン達は前方にギルガンが現れ、行場を失った。ゴブリンだってギルガンの餌でしかない。
するとゴブリン達は別々の方向に逃げ出す。ギルガンはその中の一番小さなゴブリンを追って行った。
弱い者を狙うのは前世の肉食動物の狩りと同じだ。
俺の変形エアロパイロットの周りには、カラスのような黒い鳥が集まり始めた。ギルガンが食べ残したゴブリンの死体を狙っているのだろう。
このあたり生存競争の厳しさを感じてしまう。
俺は宇宙艦の方に変形エアロパイロットを向けた。
宇宙艦の上部コーテナーから変形を解除してエアロパイロットを艦体の中に格納していく。
格納後にクリーンルームに入り殺虫と除菌を行った後、アクセブトBOXでプロテクションスーツを脱いだ。
部屋に戻るとローランドとリゼルロッテが、フォログラムディスプレイで俺の様子を見ていたらしい。
俺が帰り着くと、リゼルロッテがいきなり抱き着いて来た。
「良かった、無事で・・・」
リゼルロッテが呟く。
村の仲間を殺された事があったから心配してくれていたのだろう。
「いや、問題ないから。それより、離れて貰っても良いかな」
「あっ!」
リゼルロッテは顔を紅くして離れた。
「おっほん、良いかな。アルディご苦労じゃった。これでヤツらも暫くは近づかないじゃろう」
「ギルガンが居ましたけど、こちらに来ないでしょうか?」
「あれだけ大きな図体だと、船のレーザー砲があるから大丈夫じゃ。ゴブリンにレーザー砲は勿体ないがの」
なるほど、ゴブリンにはオーバーキルと言う事だ。
「ところでお主、そのリゼルロッテにかなり気に入られておるのう」
「そんな事はないと思いますよ」
「さっきも言ったが、うさぎ人は食物連鎖の低層に位置する生き物じゃ。だから非常に警戒心が強いので、あまり人に懐かないんじゃよ。
それがお主に抱き着くなど、気に入られている証拠じゃよ。
ただな、リゼルロッテも言っていたが、12歳と言えば繁殖できる年齢になっておる。これは、無意識に繁殖相手を求めているとも言える。
これも種の保存の根底にあるものだから、どうしようもない」
「俺にどうしろと?」
「それはお主の考える事じゃ。リゼルロッテの繁殖相手となるか、それとも単なる友人として過ごすか、第三の方法を取るかじゃろう。
ただ、うさぎ人は一度繁殖相手を選ぶと命がある限りその相手に尽くす。可愛い種族じゃ。
それも合わせて言っておこう」
それって愛が重たいと言う事じゃないのか。俺はローランドの言葉に何も答えられなかった。
「それからなアルディ、明日から儂が鍛えてやるからそのつもりでおれ。お主の技術では武器が無いとゴブリン1体も倒せぬであろう。
それでは、この星で生きていけん。少なくとも生きていける技術を授けてやろう。そうじゃな、リゼルロッテも一緒に鍛えてやるかの」
ローランドの言葉にリゼルロッテは目を輝かせて頷いていた。
翌日から船の外に出て、基礎体力作りから始めた。ところが重力が今までの2倍あるから、ちょっと身体を動かすだけでも息が上がる。
リゼルロッテはこの星で生活して来たからか、俺と同じ運動をしても平気な顔をしている。
そんな体力作りを1か月ぐらい続けるとなんとか身体も慣れて来た。すると、更にハードなトレーニングに移行した。ウェイトリフティリングでも持ち上げられないようなウェイトを使うようになった。
ここまでになると女性のリゼルロッテでは、ついて行けなくなって来た。
ただ、この単純なトレーニングを半年程続けると平気になって、更なるハードトレーニングに移行していく。
そして、夜は読み書きの練習だ。ローランドに読み書き計算の習得を申し出たところ、怪訝な顔をしたが、教えてくれる事になった。
ローランドが何故文字と計算を知っていた分からないが、俺とリゼルロッテにトレーニングが終わった後に学習の時間を設けてくれた。




