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第21話 師匠と呼ばせて下さい

 その女性は白銀の髪に長いうさぎ耳があり、身体にぴったりの黒い衣装を着ている。そして驚いたのは、お尻の所に白銀の丸い尻尾が有った事だ。

 猫族とか犬族は見たことがあるが、うさぎ族は初めて見た。肌は白で、白い兎を思い出してしまう。

 この状況から、どうやらこの女性は星獣に襲われていたと見るのが正確だろう。

 取り敢えず、ほっておけばこの女性は自分の家に帰るだろうと思い、俺はその場を離れる事にした。

 女性を残しアトラスアクターを操作する。降下する際に撮影した画像から、地上の地図をAIで作成したので、水場に行こうと思う。

 すると、ディスプレイに表示されたのは、ここから東の1kmの距離に川と滝がある事が分かった。

 俺は、アトラスアクターをそちらに向け動き出した。

 すると、先程の女性が俺の後を追って来る。ディスプレイに拡大してみるが、白い肌に青い眼が大きいなかなかの美人だ。

 そして着ている衣装と相まって前世で見たバニーガールの様でもある。

 前世で若い時に行ったバニーガール店を思い出した。バニーガールの姿をした綺麗なお姉さんがウェイトレスをしていた事を懐かしく思い出す。

 森林の中なので木を避けながらどうにか滝壺のところに辿り着くと、その女性がアトラスアクターの前に出て両手を広げている。

 この先に行くなと言う事だろう。

 だが、アトラスアクターには水を積んでいないので、水の確保は喫緊の課題だ。

 俺はアトラスアクターを一歩前に進めようとしたが、その女性は更にダメだと言わんばかりにアトラスアクターの脚を静止して来た。

 困っていると滝壺の水が大きくせり出した。不思議に思って見ていると、そこから蛇のように長い生き物が出て来た。水の上だけでもアトラスアクターと同じくらいの高さがある。水の中までを含めると有に40メル(40m)を超えるだろう。

 胴体の周りは象ぐらいあり、その顔はどこかで見たことがあると思っていたが、これは前世で見た龍に似ている。

 眼が大きく、長い髭もある。そして特徴的なのが、手がある事だ。これも前世で見た絵にある龍のようだ。

 俺は思わず左手に装着していたオリハルコン盾を機体の前に置いた。

 その瞬間、龍が口を開き、もの凄い量の水が飛び出してきて、盾に当たる。

 外れた水が近くの木に当たったが、その木は穴が開いている。恐らくウォータージェットの水圧があるのだろうが、このオリハルコン盾であれば、それぐらいの水圧で壊れる事はない。

 俺はディスプレイに表示された赤い円を竜の喉のところに照準をセットすると頭部レーザー砲の発射ボタンを押した。

 すると、レーザーは龍の喉部分を通過し、反対側から出て、後方の岩に当たって岩が崩れた。

 そして、竜の身体はゆっくりと水の中に崩れていった。


 その時、ディスプレイの表示に小さな点が表示される。光学監視装置の倍率を上げるとそこにはアニメで見たゴブリンの姿がある。身体は緑色で背は低く、手に石斧のような武器を持っている。

 顔には牙があるので肉食なのだろう。とても友好的には見えない。

 と、言う事はこのバニーガール少女を狙っているのだろうか?

 ゴブリンたちの数は赤い点で23と表示されており、その23人が俺のアトラスアクターとバニーガール少女の周りを囲んだ。

 それを見たバニーガール少女は酷く怯えている。

 俺はバニーガール少女の前にアトラスアクターの右手を出すと、それに乗れと言う意味である事を理解したバニーガール少女はその手に乗った。

 俺は少女の乗った手の平を左肩に持って行くと、少女はアトラスアクターの左肩に乗った。

 ゴブリン達はアトラスアクターの脚元に来て、石斧で脚を叩いているが、アトラスアクターには傷一つ付かない。

 俺は右脚を動かすとゴブリン達を追い払った。武器を使うのも良いが、それではオーバーキルになる。

 弾薬や燃料の補充がない世界では、それらはなるべく節約したい。

 案の定、薙ぎ払われたゴブリン達は一部は木に叩きつけらおり、それを見た他のゴブリンが仲間を見捨てて、逃げて行く。

 俺はバニーガール少女を地面に降ろそうと再び右手を左肩の所にやったが、彼女はその手に乗らず東の方を指差している。

 どうやら向こうに行けと言う事らしい。仲間が居るのだろう。地面を移動するよりこのまま移動した方が安全と判断したのかもしれない。

 取り敢えず水を補給しようと思い、エアロパイロットをアトラスアクターから切り離す。

「テイクオフ」

 エアロパイロットのボタンを押すと、アトラスアクターの上部キャノピーが開き、エアロパイロットが中から出て来て、空中に停止する。

 その時カメラ越しでなく初めてバニーガール少女を見た訳だが、彼女はポカンと口を開けたままこちらを凝視していた。

 俺はエアロパイロットを滝壺の畔に卸し、水タンクで滝壺の水を汲んだ。

 滝壺の中には先程倒した龍が横たわっており、そこに小さな魚が群がっている。どんなに強い動物でも死ねばただの餌でしかないと言う事を思い知らされる。

 水タンクがいっぱいになったら、再びエアロパイロットに乗り、アトラスアクターに戻った。

 そして、彼女の指示するまま東方に向かう。しかし、ワームホールの脱出のためにかなりのエネルギーを消費したため、エネルギーの残量が少ない。

 エネルギーの残量を示す表示が赤色に変わった。こうなると頭部レーザー砲が使用できなくなる。

 残る武器はミサイルが6発とガトリングガンが2丁、それにソニックブレードだ。だが、これらを動かすには本体が動かないと使用できない。

 そして日が暮れる頃、小山の元に着いた。

 いや、小山のように見えるが、これは苔蒸した宇宙艦だ。それも見たことが無い形をしている。

 すると、その中の小さな扉が開き、白髪の老人男性が姿を現した。

 老人はローブを羽織り、杖を持っている。これは異世界物のアニメそっくりのキャラクターだ。

「お主、言葉が分かるか?」

 その老人は言う。

「はい、分かります」

「では、アトラスアクターを降りてこられよ」

 アトラスアクターを知っていると言う事は帝国の人だろうか?

 俺はエアロパイロットとアトラスアクターを切り離し、老人の傍に降りた。

「お主、名は?」

「『アルディ・モーディスター』と言います」

「冒険者か?」

「そうです」

「それで、あのうさぎ人はどうした?」

 アトラスアクターの左肩に乗せたままのバニーガール少女を指差して聴いてきた。

「途中、星獣に襲われているのを助けました」

「それで懐かれたと言う訳か?」

「どうやらそのようです」

「うむ、まあ良い。それで、そのプロテクションスーツは脱げるか?」

「いえ、プロテクションBOXが無いと脱げません」

「ならば、こっちに来るが良い」

「あのう、あの娘は?」

「あそこにおれば安全じゃろう。取り敢えずお主だけ来い」

 俺は老人に促されるまま、苔蒸した宇宙艦の中に入った。

 宇宙艦の中は外から見るよりかなり清掃が行き届いていて、帝国の船と思われる科学的な作りになっている。老人に案内されて部屋に入るとそこにはプロテクションBOXがあった。

「これでプロテクションスーツを脱ぐと良い」

 俺は指示されたプロテクションBOXに入った。

「アクセプトアウト」

 身体に密着したプロテクションスーツが徐々に脱げて行く。最後にヘルメットを脱ぐとそのヘルメットを持ったままBOXを出た。

「うむ、中々良い男じゃないか。それで、アルディと言ったかな、ここに来た訳を聴いても良いかな」

 俺は宇宙艦が事故に遭った事、パーティ仲間を救ったが反対に俺がワームホールに捕まった事を話した。

「なるほどな、それで、お主はどうしたい?」

「元の場所に帰りたいです」

「それで、戻る手段はあるかの?」

「いえ、ありません。ですが、この船にはあるのではないですか?」

「答えはNOじゃ。もし、戻れるのなら儂がここに居る訳がない」

 確かにそうだ。もし、この宇宙艦がこの惑星から脱出出来ていれば、ここに苔蒸した姿になった宇宙艦がある訳がない。

「ですが、スペースコミューターがあるんじゃないですか?」

「あるよ。だがそれで宇宙空間に出てどうする。スペースコミューターで宇宙を航行する事は出来ん。せいぜい惑星の軌道上を周回するのが関の山じゃ」

「この船で脱出するのは?」

「2つ問題がある。一つはメインエンジンが壊れている事。二つ目はこのサイズの宇宙艦は地上から惑星を脱出する事は出来ない。その意味は分かるな?」

 その意味は分かる。宇宙艦のサイズが大きすぎて、惑星の引力圏を脱出出来ないのだ。

 だから、宇宙艦は惑星軌道上にある宇宙港に接岸するのだ。

「それにな、この惑星の重力は2Gある。その意味も分かるか?」

 それは要するにヘーデルランドの2倍の重力が有ると言う事だ。

 俺が地上に降りた時、身体が重かったのは重力が2倍あったからた。

「重力が2倍あると言う事ですね」

「その通りじゃ。通常は1Gは9.8m/sだが、ここでは20.2m/sある。2倍強というところじゃな。

 それと、酸素濃度は18%、窒素が82%と酸素が薄い。それも意味が分かるか」

「はい、要するに酸素だけは高山に居るのと同様と言う事ですね」

「話が速くて有難い。だが、この宇宙艦内は重力コントロール装置で1Gに調整してある。酸素濃度21%も帝国と同じじゃ。

 だから外に比べたら息苦しさが無いじゃろう」

 確かにその通りだ。この船の中は快適に過ごせる。

「ふむ、大体の話は分かった。ならばお主はここで過ごすが良い。外は危険だからの」

「あの娘はどうしましょうか?」

「あの娘に直接聴いてみるしかあるまい。あの娘がここに居たいと言うなら居ても良いが、はてさてどう言うかな」

 俺は外に出てアトラスアクターに乗り込むと、バニーガール少女を降ろした。

「君、言葉は分かるか?」

 俺が話し掛けるが、バニーガール少女は首を傾げている。

「▲%%≠>♭∽≒・・≡∮∑◎□◆△∩∧∇∀▽〓〓&@%▼」

 バニーガール少女が発した言葉は俺の知らない言葉だった。これではコミュニュケーションを取るのは難しい。


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