第20話 トラブルってやっぱあるよね
俺は最後尾につくと、ボブの機体に続いて外に飛び出した。
左のカタパルトから船を越えて右側に行くと、かなり損傷しているのが見えた。
「修理に掛かる。当初の予定通り各員配置に就いてくれ」
俺は言われた通り、後部ハッチに廻って部品の運搬に当たる。
後部ハッチ付近に居ると、ハッチが開き、中に部品が有るのが見えた。俺はそれを掴んで外に出し、右舷のカタパルトに向かう。
部品も一つだけではないので、何回も行き来する必要がある。
俺が部品を持って行くと、破損した箇所の取り外しが行われていた。
電磁カッターやプラズマ切断機を使用して、機体の破損した箇所を切り離して行く。
その後に、持って来た部品をブラズマイオン溶接機で溶接していく事になる。
取り外した部品は、回収して再利用する。宇宙では資源が限られるので、再利用をしないと資源がなくなる。
それでも再利用できる資源は限られるので、どこかの惑星で資源調達は必要だ。
そして何回目かの運搬をし終えようとした時だった。
アトラスアクターのディスプレイに映し出されたのは、ボブの近くにあったプラズマイオンタンクが爆発して、ボブの機体が宇宙空間に飛んで行った映像だった。
コックピットの中ではボブを呼ぶ声がする。
「「「ボブ!」」」
だが、ボブからの返事はない。
「艦橋、ボブが爆発に巻き込まれて飛ばされた」
「了解、直ちに救助に迎え。こちらからもコミューターを出す。念のため、治癒士にコミューターに乗船して貰う」
治癒士と言えばメラニーが来ると言う事だろう。
「修理班、コミューターの発艦を左舷にするため、移動しているが、時間がかかりそうだ。そちらで出来る対応をしてくれ」
「了解。誰か救助に行ける者はいるか?」
「俺が行きます」
俺が言った。
「アルディは、まだ経験が不足している」
「いえ、捕まえて来るだけなら問題ありません」
「了解、それでは行って貰おう。燃料は足りているな」
「問題はありません」
「では、頼む」
俺は、アトラスアクターの推進器を最大にしてボブの機体を追った。
「異常事態発生、空間に重力歪を検知しました。突発性ワームホールが現れる可能性80%」
「なんだと、こんな時に。直ちに修理班に連絡せよ。ボブ機を回収後、本空間を離脱する。
コミューターの発進は中止」
この会話は修理班にも通信で伝えられる。
「待って下さい。今、アルディが飛ばされたボブの回収に向かっています。ちょっと待って下さい」
「待てるのは10分が限度だ。回収にどれくらい掛かる?」
「現在、アルディがボブに追いついて既に腕を掴んでいます。時間にするとギリギリの時間です」
「アルディ、聴こえるか? そういう事態だから直ちに船に戻れ」
「機体は掴みましたが、思うように推進出来ません。まるで、後ろに引っ張られているようです」
「それはワームホールに捕まるぞ、直ぐに離脱しろ。ボブについては諦めろ」
「そ、そんな。諦めるだなんて無理です」
「そのままでは、アルディまでワームホールに捕まってしまう。時間がない。今だとアルディだけでも脱出できるんだ。ボブの機体を切り離して脱出するんだ。
ボブの状態が分からない以上、1機の推進力で2機をけん引するのは無理だ」
リーダーの声がコックピット内に響く。
「1機だけなら助かるんですよね」
「そうだ、早く脱出するんだ」
俺はボブの機体の腕を掴んだまま、回転し始めた。
「アルディ、何をする?」
「今からボブの機体を投げますので、キャッチして下さい」
俺は回転して遠心力を付けると、ボブの機体を母船向けて放り投げた。
遠心力が付いたボブの機体は、母船に向けて飛んで行く。母船の前では僚機がボブの機体を捕まえようと待機しているのが見える。
俺はそれを見て、ワームホールから脱出するべく、推進力を最大にした。
だが、機体は中々、前に進まない。
「アルディどうした? 早く脱出するんだ」
「き、機体が前に進みません」
「ワームホールの重力が先程に比べ増大しています。今の重力ではアトラスアクターの推進力ではもう・・・」
「な、何だと! アルディ推進いっぱいにしろ」
「既にしていますが、後ろに曳かれています」
「アルディ」
「アルディ」
「アルディ」
俺の名前を呼ぶ声を聴いたのが、最後の記憶だった。
コックピットのディスプレイは、黒い表示になっている。これは壊れたのではなく、恐らくワームホールに落ちたのだろう。そして、現在はワープ途中にあると言う事だ。
ワームホールからはいつか排出されるのだろうが、その位置はどこになるか不明だ。
もしかしたら、近くかもしれないし、別の銀河かもしれない。時代だって過去かもしれないし、未来かもしれない。
ワームホールは時間と距離を一瞬にして飛び越えてしまう。
そうしていたのがどれくらいの時間だったのか分からないが、いきなり目の前が明るくなった。
それと同時にコックピットのディスプレイに映し出されたのは青い星だ。正確に言うと、前世の地球、転生したヘーデルランド星、エルフレッドランド星、それに帝国首都星などと同じ星だ。
青い地表には白い雲も見える。この星には生物が居る可能性が高い。だとすると、俺は生き残る可能性があるかもしれない。
一応無線機で母艦を呼んでみたが、応答は無かった。
俺は機体制御を行い、その星への降下に入った。アクラスアクターは冒険者の惑星調査のための機体だ。
宇宙空間からの降下を想定して製造されているので、大気圏に突入する際の断熱圧縮にも十分耐える事が出来る。
コックピット内で落下地点を地上に設定し、オートパイロットで降下を始める。後はアトラスアクターに任せておけば、地上に着陸してくれるだろう。
ディスプレイに表示されていた青い地表が徐々に赤くなった。大気圏に突入したのだ。
そして、地上が眼下に見えると、森の大陸がいっぱいに広がった。記憶にあるような都市の姿は見えない。
もしかしたらあるのかもしれないが、見える範囲には森林しかない。
機体は逆噴射を行い、着陸態勢に入った。するとどうだろう。そこには大きな星獣がおり何かを見ている。大きさはアトラスアクターの4倍くらいなので、20メル(20m)ぐらいある。
「シューン」
逆噴射で星獣の後ろに降り立った。
その星獣がこちらを向くが、これは前世で見たティラノザウルスに似ている。
鋭い牙があり、手が小さく爪もある。どう見たって肉食獣そのものだ。口からは涎が垂れ、頭には1本の角がある。
皮膚は固い鱗に覆われており、もし戦うとなったら、アトラスアクターの武器でも通用するか否か分からない。
念のためアトラスアクターのコンピュータで検索してみるが、合致する生物はない。恐らく新種だろうが、そんな呑気な事は言っていられない。この状況をどうにかしないといけない。
と、思っていたらその星獣がこっちに向かって突進して来た。
俺は咄嗟に頭部レーザー砲のボタンを押した。するとディスプレイに赤い光線が表示され、星獣に命中すると、命中した箇所から赤い血が噴き出し、星獣が倒れた。
頭部レーザー砲は摂氏5000度Cの熱線であり、人ならば一瞬で蒸発する武器だ。それを受けても蒸発しないなんて何ていうバケモノだ。
倒れた星獣を置いて、その場を離れようとした俺のディスプレイの先に一人の女性が映し出された。
「えっ?」




