第19話 ぶつける事ってよくある事さ
「離岸ニーイチマルマル時になりました」
「離岸」
艦長が発声すると、クルーの動きが一層慌ただしくなる。
「サイドスラスターオン。離岸します」
母艦が、ゆっくりと宇宙港から離れて行く。
「宇宙港との距離1500メルとなりました。母艦回頭します」
母艦が、ゆっくりと船首を回し始める。
「微速前進」
航海士と思われる人が発声すると、船がゆっくりと前進し出す。
「いつもの通り港を出たら、50,000宇宙ノットまで加速」
再び航海士と思われる人が言う。
「50,000宇宙ノットまで加速します」
「目標設定『MZ6494』」
「目標設定完了。『MZ6494』に設定しました」
「2時間後にワープインを行う」
艦長が言うと、それに向けて作業が行われた。
「確か先行している艦があったな?」
艦長が航海士に言うと聴かれた航海士が答えた。
「はい、冒険者パーティ『星雲の彼方』の母艦で『ビヨンドネビュラー』号が先行しています」
「彼らのミッションは『MZ649』恒星系への航路開拓だったな。『ビヨンドネビュラー』号と連絡を密にしてしてくれ」
リーダーの言葉に、通信士が早速『ビヨンドネビュラー』に通信を入れている。
俺たちの母艦は、ジョンが乗った母艦を1日遅れて追う形になった。だが、3日目のワープアウトをしたら『ビヨンドネビュラー』との通信に支障が出る様になった。
「艦長、『ビヨンドネビュラー』号との通信が切断されます。どうやら磁気嵐が原因のようです。それに、ここから宇宙距離23,000恒星キルにオールトの雲があるようで、それも通信障害の原因となっているようです」
「通信士は引き続き通信の確保を図れ、レーダー員、レーダーに異常はないか?」
「オールトの雲より先はレーダーが効きません」
「オールトの雲の厚さは分かるか?」
「いえ、レーダーが効かないので、分かりません」
「つまり、オールトの雲に入っても、それを抜け出すのにどれ位掛かるか分からないと言う事か。リーダーどうしましょうか?」
「CICに連絡してみてくれ。そこである程度の情報が得られるかもしれん」
航海士がCICと連絡しているが、特に判断材料となる新しい情報は得られなかったようだ。
「先行する『ビヨンドネビュラー』号も心配だ。連絡が取れないとすると彼らはワープでオールトの雲を越えたのではないかと思う。なので、我らもワープでオールトの雲より先にジャンプしたいと思うが、君たちの意見はどうだ?」
リーダーが、まず最初に意見を言った。
「ワープした先に磁場異常、重力異常、突発性ワームホールがあると我らの船も危険です。不用意なワープは避けた方が良いのでは?」
航海士の一人が反対意見を述べた。
リーダーの意見に賛成する人は先行する艦を心配する者で、反対する者はこの艦を心配する者だ。
俺も正直どっちが正解なのか分からない。でも、先行艦にはジョンが居る。
俺は議論の行方を見守ったが、リーダーが結論を出した。
「ワープでオールトの雲をジャンプする。俺たちは冒険者だ。確実な手段を選んでいては冒険者とは言えないだろう。
もちろん、匹夫の勇ではいけないが、100%の確実を選べない事もある。だとしたら、冒険者としての選択をしたいと思う。
ワープアウト後の状況に注意してワープを行う」
リーダーの言葉に反対意見は出なかった。
「では、ワープ準備、ジャンプ距離は短距離でワープ0.1光年先地点を設定」
「ワープ準備」
「ワープ距離設定0.1年」
航海士が慌ただしく作業に入り出した。
「ワープ準備整いました」
「良し、ワープ」
「ワープイン」
その瞬間、窓の外にあった星の光が全て真っ暗になった。ワープに入ったようだ。
今回は0.1光年のワープだったため、直ぐに窓の外に陽かりが戻った。
その瞬間、船に大きな衝撃があった。
「ガン!」
船が大きく傾いた。それによって、俺は隣に立っていたメラニーと一緒に飛ばされた。
艦橋の中も阿鼻叫喚の世界だ。
しかし、俺は幸福の中にいた。それは俺の顔の所にメラニーのふくよかな胸があったからだ。
「アルディ、大丈夫?」
頭の上からメラニーが声をかけてくれた。
「ア、痛たっ。え、ええ、大丈夫です」
そのままの態勢で俺は答える。
「ちょっと、いい加減にして。離れてよね」
「あっ、はい、すみません」
俺はメラニーのふくよかな胸から離れた。
「メラニーさんは大丈夫ですか?」
「私も身体を打ったけど大丈夫」
「状況確認!」
艦長の言葉が艦橋に響き渡る。
「カイパーベルト内にワープアウトしたようです。本艦の周辺は大小の隕石だらけです」
「直ちに隕石との相対速度を0にしろ」
航海士が慌てて艦を操作している。
「艦を相対速度0にしました」
カイパーベルト内の隕石は宇宙風や恒星の公転によって流れている。なので相対速度を0にしないと次の隕石がぶつかって来る。
「故障個所はないか?」
「右舷発進カタパルトが変形しています。それ以外は今の所問題は見つかっていません」
「良くそれだけで済んだな。ある意味ラッキーと言って良いな。では、このカイパーベルトを脱出してから修理する事としよう」
船は相対速度を0に保ちながらカイパーベルトを脱出しようとするが、この脱出に2日掛かった。
「先行艦との連絡は取れたか」
通信士が通信機を操作していたが、どやら連絡は取れなったようだ。
「ダメです。応答はありません」
「レーダー感知を最大に上げて『ビヨンドネビュラー』号の発見に努めよ」
レーダー員が表示装置を真剣に見つめている。
「では、右舷発進カタパルトの修理に掛かるぞ。冒険者はプロテクションスーツを着用後、アトラスアクターにて発進せよ」
「おい、アルディ行くぞ」
ボブに連れられて、俺も修理に携わる事になった。
「部品は3Dプリンターで製作後に後部ハッチから送り出される。アルディは、その運搬をしてくれ。
俺たちは、こっちで修理に当たるから」
俺は、他の修理要員とアクセプトBOXに入った。
「アクセプト」
ヘルメットを被った後に音声指示すると身体にプロテクションスーツが装着される。装着が完了するとBOX自体がエレベータとなって下の階に降りて行く。そこはエアロパイロットの駐機場だ。
自分のエアロパイロットに乗って、アトラスアクターの駐機場に行く。そこでアトラスアクターへのテイクインを行う。
アトラスアクターの上部に行き、テイクインのボタンを押すとアトラスアクターのキャノピーが開き、エアロパイロットが頭部に格納された。
キャノピーが閉まるとコックピット内に操縦の灯りが灯るとともに、操縦用のレバーが目の前に出て来る。
そのレバーを操作してアトラスアクターを動かすと、修理作業員のリーダーから通信が入った。
「ガガッ、左舷カタパルトから出る。今回はリニアを使わず出口から右舷に廻るので、各機俺に続いてくれ」
「「「「「「了解」」」」」」
各機から返答があった。




