第2話 未来の世界が思っていたのと違う
俺の年齢は12歳と言う事だ。12歳と言えば中学1年生だと思うが、学校に行っているのだろうか。
これも左手のスマートフォンに聴いてみる。
「俺の通っている学校について教えてくれ」
「エレメンタリースクールを卒業し、今年の秋から訓練校に通う予定です」
えっと、エレメンタリースクールと言う事は小学校だな。そして、訓練校に通うってどういうことだろう。上位の中学校とかではないのか?
「エレメンタリースクールでは、どういう勉強をしていたんだ?」
小学校だと読み書き計算ぐらいだろうが、この世界の知識レベルが知りたい。
「帝国の歴史、農業、漁業、工業、資源採掘と言ったものが主な内容です」
うん? 読み書きとかはやらないのか?
「読み書き計算とかは?」
「読み書き計算の勉強はありません。疑問に思った事はこの私『アームデバイス』より知識を授けます」
「つまり、お前に質問する事で答えを得ると言う事か?」
「その通りでございます」
「だが、読み書きとか計算が出来無いと困るだろう。そのようなものはどうやって習得するんだ?」
「文字はありません。全て音声認識で対応します。そして、計算も全て私に聴いていただければお答えいたします」
「文字が無ければ説明書とか契約書とか、そういったものはどうしているんだ?」
「全て映像録画と音声録音で対応出来ますので問題ありません」
「そうか、それで訓練校っていうのはどういう所なんだ」
「12歳から3年間通う職業訓練の場所になります」
「それは、15歳になったら働くと言う事か?」
「働いても良いですし、別の訓練校に進級する事もできます」
「別の訓練校って?」
「例えば、商人訓練校、冒険者訓練校などがあります」
「冒険者訓練校だって。そこ、詳しく」
まさかこの世界で冒険者と言う言葉を耳にするとは思わなかった。
「冒険者訓練校とは冒険者を育成するための学校です。期間は3年、卒業したら冒険者A1ランクの資格が与えられます」
「では、冒険者とはどのような仕事をするんだ?」
「冒険者とは、未開の惑星を探査し、その惑星が移住するに適したものか調査をする仕事です。
また、その惑星の資源調査、生息生物の有無、更にはその生物の危険度の調査も含まれます」
なんという事だ。正に冒険そのものじゃないか。銀河の星々を調査して回るなんてスタートレックの世界そのものだ。
しかし懸念もある。そう、報酬だ。
「冒険者の報酬ってどれくらいなんだ」
「衛星軌道からの調査報告であれば、帝国金貨1~3枚、地上に降下しての調査なら帝国金貨10~50枚、もし開拓出来ればその惑星は開拓した冒険者のものとなり、男爵の位が与えられます」
もし、開拓できたなら一国一城の主って訳か。もしかするとこのヘーデルランド星もヘーデルランド領主様のご先祖が開拓したものかもしれないな。
帝国の爵位についても聴いてみるか。
「帝国の爵位について教えてくれ」
「ペテメルギウス帝国の皇帝はこのペテルメギウス銀河団全てを統治しておられます。そしてのその下にあるのが公爵となり、6恒星系以上を統治しておられる方になります。
さらにその下が伯爵となり、2恒星系から5恒星系を統治しておられる方、一番下が男爵となり、1恒星系を統治しておられる方となります。
男爵家が一番多く85%が男爵位です」
「公爵家と伯爵家の割合は?」
「公爵家は5%で5家、伯爵家は10%で10家存在します」
「すると男爵家は85家と言う事か?」
「その通りでございます」
「それではヘーデルランド領とヘーデルランド男爵について教えてくれ」
「ヘーデルランド領の現在当主は『リャード・フォン・ヘーデルランド』男爵56歳で、第一婦人が『ジュリエット』、第二婦人が『ミランダ』、第三婦人が『ミカ』となり、子供は男子3人、女子3人います。
最年長は第一婦人の男子『オーランド』で今年26歳、最年少は第三婦人の女子『シャルエット』の4歳です。
そのため、長子のオーランドが領地を相続するのは時間の問題と言われています」
貴族は一夫多妻なのか。そうなると第二婦人、第三婦人の子供たちは将来どうするのだろう。
「ヘーデルランド男爵家の子供たちは将来どうするんだ?」
「第一子以外の男子は領地の管理官として、ヘーデルランド星の各地にて農業や工業の生産性向上のための管理をする事になります。
女子の場合は、他家へ嫁ぐ事によって同一グループの結束に繋がります」
「そこのところ詳しく」
「ペテルメギウス帝国内は端から端まで約10万光年と領地が広く、かつ貴族が広範囲に広がっています。また、冒険者が領地を得て新貴族になった者は、古参貴族からみれは良い印象はありません。
古参貴族は新貴族の領地を奪えば、新しい資源と領地が手に入ります。
そうなると貴族間同士による争いが大なり小なり発生しますので、その時に備え仲間を増やしておく必要があります」
「それって、惑星間戦争が発生すると言う事か?」
「その通りでございます」
「だが、帝国がその仲裁をする事はないのか?」
「帝国領は広いため、特に僻地の惑星間について全て把握し、仲裁する事は不可能です。
万が一、艦隊を派遣するにしても最新ワープ航法エンジンを備えた戦艦でも15日ほどかかりますので、到着した頃にはどうにもならない状況になっている可能性は高いです」
「戦いに負けた方はどうなるんだ?」
「環境の厳しい惑星での重労働を負わされます。女子の場合は更に悲惨な状況が待ち受けます」
それは前世での俺の居た世界より悲惨じゃないのか。
結局、科学は発達しても人間のやる事は同じと言う事か。
そんな事を想っているとドアをノックする音がする。
「トントントン」
「はい」
入って来たのは母のアーリアだった。
「あら、アルディ起きていたの? どう気分は?」
「ああ母さん、大丈夫だよ。でも、まだ記憶が覚束ないところがあるんだ。どうやら一種の記憶障害になっているかもしれないんだ」
「ええっ、それは大変」
「時々変な事を言うかもしれないけど、その時は教えて貰えれば大丈夫だと思う」
「そう、父さんたちにも言っておくわね。もし歩けるなら下のリビングで食事にしようと思うけど歩ける?」
「うん、歩けると思う」
俺はベッドから降りて両足で立ってみたが、二、三歩振ら付いた後は普通に歩けた。
「どうやら問題なさそう」
「では、下にいらっしゃい。夕食にするから」
母が先に部屋を出て行った後に続いて俺も部屋を出た。
思えば自分が寝ていた部屋から初めて外に出てみたが、日本で暮らしていた一軒家より大きい。
部屋を出て右に行った突き当りに階段があり、下に続いている。その階段を降りると扉があり、その扉を開けると広いリビングがあった。
「アルディ、大丈夫か?」
真っ先に声を掛けて来たのは兄だ。その言葉に続くように父も声を掛けて来た。
「今日は久々に全員で食事だな」
俺が席に着くとキッチンから姉が食事を運んで来て、テーブルの上に置く。
「今日はアルディの好きなシチューよ」
この世界にもシチューがあるのか。それは楽しみだ。
シチューの他にも唐揚げ、サラダ、パンが並んだ。父と母はワインをグラスに注ぎ、そのグラスを重ねた。
主食はパンなのか。久々に米が食べたいが、シチューに米は合わないから仕方ないか。
「よし、では食べようか」
父の発声で全員がスプーンを取る。
「いただきます」
「「「「えっ!!」」」」
俺の言葉に俺以外がびっくりしたような声を出す。
「アルディ、何だそのおまじないは?」
兄が聴いてくるが、俺は前世の仕草で声が自然と出ただけだ。
「え、えーと、食べる時の気合かな。ほら、シチューとか熱いじゃん」
「どこでそんなの覚えたんだ?」
「寝ている時の夢の中で・・・」
「ふーん、変な夢もあるんだな」
「そ、そうなんだよ。ははは・・・」
食事が終わったら、風呂に入って部屋に戻ったが、生活自体は前世の俺の生活とほとんど変わらない。
家に風呂があり、その風呂にバスタブが有る事には驚いた。前世でも世界的にバスタブがあるのは珍しかった。
一軒家にバスタブがあるのは世界でも主に日本だけだったのに、この世界で一軒家にバスタブがあるのはどういう事なのだろう。
部屋に戻り部屋の中をいろいろと見てみるとクローゼットの中に真新しい服がある。どうやら学校の制服のようだ。
そう言えば1週間後には学校の入学式があると聴いたような気がする。
ベッドに入ると『アームデバイス』に色々と聴いていたら、そのうち眠ってしまった。




