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第17話 出港って緊張する

「イチゴーマルマル時まで後10分しかないぞ。乗員確認はしたか?」

「乗員全て確認済。問題ありません」

「乗船口ハッチクローズ」

「ハッチクローズしました。ロック確認」

「良し、ボーデングブリッジ切り離し」

「ボーデングブリッジ切り離し指示出しました」

 艦橋の窓から母船と宇宙港を繋いでいたボーデングブリッジが切り離され、宇宙港に格納されていくのが見える。

「定刻イチゴーマルマル時になりました」

「抜錨」

 艦長が発声すると、クルーの動きが一層慌ただしくなる。

「サイドスラスターオン。離岸します」

 母船が、ゆっくりと宇宙港から離れて行くのが窓に写る景色で分かる。

「宇宙港との距離1,500メルとなりました。『ヤングブラッド』回頭します」

 母船が、ゆっくりと船首を回し始めた。そして、艦橋から見える先が宇宙空間となった。

「微速前進」

 航海士と思われる人が発声すると船がゆっくりと動き出す。

「港を出ます」

 そう言われ窓の外を見ると、宇宙空間に灯台のような物が左右にある。右が赤で左が白い灯台だ。

「宇宙港湾法で、港を出る時は右舷に赤い灯台、左舷に白い灯台があるように定められているんだ」

 説明してくれたのはボブだった。

「港を出たら、50,000宇宙ノットまで加速」

 再び航海士と思われる人が言う。

「50,000宇宙ノットまで加速します」

 50,000宇宙ノットとは光の速度の六分の1だ。光の速度を300,000宇宙ノットとしているが、船が受ける重力と時間の停止の関係、さらには隕石とかがあった時の衝突被害を考えて恒星系内では、最高速を出す事はない。

「ボブさん、俺たちはどこへ向かうんですか?」

「ああ、未だ教えて無かったな。新しく発見された『MZ649恒星系』に向かう。今回の依頼は、そこの第4惑星の調査だ。番号で言うと『MZ6494』だな」

 新しく発見された恒星系は基本的に番号が付けられる。この場合はMZ649が恒星系を表し、その第4惑星なので『MZ6494』という事になる。

 なお、その惑星に衛星があった場合、内側にある軌道からA,B,C・・・と付けられる。

 つまり、『MZ6494』惑星に衛星があったら、その衛星は『MZ6494A』となる。

「それで、依頼内容は調査でしょうか?」

「そうだ。空間光学望遠鏡、空間電波望遠鏡、空間ニュートリノ監視望遠鏡により発見された恒星系だ。その第4惑星がハビタブルゾーンにあるので移住の可否を調査すると言う事だ」

 空間光学望遠鏡は宇宙空間に打ち上げられた光学望遠鏡だ。前世では「ハッブル宇宙望遠鏡」と同じと思って貰って良い。

 空間電波望遠鏡は、やはり宇宙空間に打ち上げられた電波望遠鏡だ。

 そして、空間ニュートリノ監視望遠鏡は宇宙空間を飛んで来るニュートリノ粒子を監視する望遠鏡だ。

 これらを2地点に設置すれば三角測量法で恒星までの距離や、どのような惑星があるかが分かる。

 そんな話をしていると航海士の声が聴こえて来た。

「まもなく、花星を通過します」

「花星は帝国恒星系のハビタブルゾーンの一番外側にある星で人口は20億人だ」

 それは冒険者訓練校で教わった事だが、ボブが親切に俺に教えてくれたのだろう。

 窓の外には青く輝く地球に似た星が凄い勢いで後方に飛んで行った。いや、飛んでいるのはこの船の方だが、そう見えてしまう。

「次の雲星を通過後にワープインエリアに到達します」

 雲星は太陽系の木星のように大きく、雲がその表面を覆っている。見た目は木星と同じ感じだ。

 そして、その雲星の3つの衛星には既に環境改良が完了し、移住により人が住んでいる。

 艦橋での航海を見ていると、ワープエリアに到着した。

「ワープエリアに到着しました。ワープ管制塔からワープ許可を得ています。ワープ開始します」

「了解」

 帝国領内にワープインやワープアウトする場合は、航海する宇宙艦が多いため、ワープ管制塔の許可が必要だ。

「ワープエンジン異常なし」

「ワープドライブ航法オールグリーン」

「良し、ワープインだ」

「ワープイン」

 その途端、窓に写る景色から光が無くなった。ワープ空間に入ったということだろう。

「ワープアウトまで、航海士以外は休憩」

 艦長の言葉で艦橋に居た数人が、その場を離れる。

「艦長、後はよろしく頼む」

 リーダーも艦橋を離れるようだ。

「アルディ、レストルームに行こうか?」

 メラニーが俺を休憩に誘った。

 レストルームに着いた俺たちは、ウォーターサーバでコーヒーを煎れて座った。このレストルームは食事をする部屋でもある。

「休憩した後は船内を案内するわね」

「よろしくお願いします。ところで、メラニーさんはこのパーティに加入して、どれ位なんですか?」

「私は3年目よ。一応、治癒士ってことになってるけど、普段は何もする事がないから結局は雑用係も良いとこかな。でも、もしもの時に備えて勉強だけはかかさないけどね」

「お世話になります」

 メラニーさんの後ろ姿は、別の意味でもお世話になりそうだ。

「怪我しなきゃ、何もお世話する事はないわ」

「でも、こうやって色々と面倒をみて貰っていますし」

「必要な事だけ教えているに過ぎないから、恐縮する事はないのよ」

 それから家族の事、何故冒険者になったのかなど話をした。メラニーさんは「ジータント」星の出身で7人兄弟の末子と言う事だ。

 姉が5人と兄が1人おり、姉5人は既に結婚して家を出たらしい。兄は父親の跡を継いで農業に従事しているとの事だった。

 自分はこのまま結婚するのに抵抗があったので、冒険者になる事を志し、冒険者訓練校に入学したそうだ。

 この船の中にも女性は何人かは居るが、メラニーさんはその中でも若くて可愛いので人気があるだろう。

 しかも、治癒士となれば、男性の眼から見れば白衣の天使そのものだ。


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