第15話 就職先が決まりました
そんな話をした1か月後、俺達の所属パーティが決まった。
まず、俺は「若き血潮」というパーティだ。母艦は「ヤングブラッド」という、300メル(300m)級のアウトサイダー宇宙艦だ。
次に決まったのが、ジョンで「星雲の彼方」という冒険者パーティで、母艦は「ビヨンドネビュラー」と言うらしい。
シュリーは、女性だけのパーティで「紅い百合」というパーティだ。母艦は「レッドリリィ」という。
シュリーは、その美貌から多くの男性パーティから声が掛かったが、本人がそれを嫌い、女性パーティに決めた。
そしてマーガレットだが、治癒士の募集が無かったので、惑星間航行病院船に就職が決まった。
そして、3年間過ごした冒険者訓練校を卒業する事になった。
入校時1000人居た学生だったが、卒業時は900人に減っていた。それでも、900人が卒業するし、その就職先も900人もの卒業生を受け入れる冒険者パーティがあるのも凄い。
卒業生は入校時に入校式を行った講堂に集まった。
壇上では、校長の話や来賓の挨拶が有るのは未来でも同じだ。
そして、冒険者校独自のセレモニーがある。
壇上に上がった教師がマイクで言う。
「それでは、これより冒険者クラスA1のランクを授与する。
これからの活躍次第でランクアップは可能なので、君達の今後の活躍に期待する」
A1ランクと言うとかなり高ランクかと思うが、実はAはアドベンチャーのAであり、ランク自体は数字で表される。つまり、A1は駆け出しで最高クラスはA9と言う事になる。
ちなみに商人のクラスはビジネスのBとなり、航海士はクルーズのCとなる。なお、クラスが与えられるのは宇宙を航行する職業の者だけであり、惑星間でそれが共有されており、待遇が保証されている。
アームデバイスにA1の文字が表示されたが、文字が読めない多くの学生には何の事だか分からないだろう。
俺たちは、入学時に持って来た荷物を持って学校を出た。制服は返却したので、今は私服だが、パーティの加入に当たっては制服が支給される。
「エアロパイロット」は返却するが「アームデバイス」はそのまま供与される。
卒業式が終わると、構内に乗り入れているトレインに乗車しギルドに向かう。校内にトレインが乗り入れているので、冒険者訓練校はかなり大きい学校だ。
ギルドは帝国王都内に5つあり、アルファギルド、ベータギルド、ガンマギルド、デルタギルド、イプシロンギルドとなっており、優劣は無いが各キルドは移住惑星の成果を争っている。
俺は加入パーティが所属するイプシロンギルドに向かう。シュリーはアルファギルドに、ジョンはガンマギルドに向かう。
マーガレットは宇宙航行病院船勤務となるので、病院船が所属する帝立セントラルホスピタルに向かった。
イプシロンギルドに到着し、ギルドの建物内に入る。
ギルドは30階建ての高層ビルで、このビル全てがギルド本部となっている。
そして、1回のロビーには冒険者訓練校を卒業した新冒険者が5人居た。俺を含めた4人は人族だが、1人は鬼族だ。
鬼族は肌が岩のようであり、頭に角がある。種族により1本角と2本角があるが、彼には角が1本、頭の真ん中にある。
すると、その鬼族の男が話し掛けて来た。
「や、やあ、君も冒険者訓練校を卒業して来たんだろう。実は僕もなんだ。よろしく頼むよ」
顔や身体に似合わず、ちょっとおどおどしている。
「い、いや、こちらこそ。君は何と言うパーティに加入するんだ?」
「僕は『閃光の雷撃』って言うパーティなんだ。そこがタンクを求人していたので、タンク志望の僕は良かったのさ」
惑星冒険者と一言で言っても様々な役割がある。戦闘で星獣と対峙するのはアタッカーと呼ばれ、冒険者の花形である。
アタッカーは基本1人で、この隊のリーダーが努める。アタッカー以外はサブアタッカー、バックアタッカーがあり、サブアタッカーが2人から5人、バックアタッカーは10人以上備えるパーティが多い。
一方、仲間を守りつつ、攻撃を指揮するのはタンクと呼ばれる役割だ。タンクは攻撃以外にも不利と見れば退却の指示をし、退却時には殿を受け持つとても重要な役割をこなす。
それ以外にも遠隔攻撃のスナイパー、後方支援のバックアッパーなどの役割がある。
アタッカーの武器はプラズマブレード(剣)、ブラスターガン(拳銃)、硬合金スピア(槍)などの比較的軽量な武器を使用し、その機動性によって星獣を倒す。
タンクはジェルミンガードと呼ばれる軽くて堅い盾を持っているのが特徴で、攻撃用武器はアタッカーとほとんど同じものだ。
スナイパーの武器は、携帯レールガンとプラスターライフルだろう。遠隔から相手の急所目掛けて先制攻撃を仕掛ける。
バックアッパーはブラスターライフル、アストロゴーガン弓矢を使う。この時代に弓矢かと思ったが、この矢は相手に当たると分子分裂反応で相手の身体の中に入り込み、中から身体を燃やし尽くすとんでもない弓矢だ。
とても高価で相手が大物でない限りは有効な武器ではないが、これをどれだけ持っているかで、そのパーティの価値が決まると言っても過言ではない。
その鬼族の男は「マイケル・モレノ」と名乗り、21歳と言っていた。
俺たちがギルドの中に居ると、別の扉からパーティメンバーと思われる人たちが入ってきた。
その人たちは俺達を見つけると近寄って来る。その中の一人が言う。
「君たちが冒険者訓練校卒業生で良いかな。俺は冒険者パーティ『若き血潮』の『ボブ・アレクサンダー』と言う。
君達をパーティ代表として迎えに来た。
それで、『アルディ・モーデスター』君は居るかな」
「はい」
俺が手を上げると、その男性はにこやかに近づいてくる。
「君がそうか。これからよろしくな」
今度は別の男性が言う。
「次は、『マイケル・モレノ』君は誰かな」
「はい」
マイケルが手を上げる。
「思ったより大きいな。俺は『閃光の雷撃』の『ドナルド・ロックリー』だ。よろしくな」
俺達以外の卒業生も、それぞれのパーティに呼ばれ解散となった。
俺は迎えに来た「ボブ・アンダーソン」と名乗った男性の後ろをついて行く。
「アルディ君、アルディで良いかな。これから、軌道エレベータで宇宙港まで上がって、母船に入るから。
そこで必要な備品とか渡して、他のクルーに紹介しよう。それが済んだら出港だ。
ところで、俺が君の教育係をやる事になったから、これからよろしくな」
「よろしくお願い致します」
ギルドから出発するトレインに乗って、宇宙港に向かう。
地上宇宙港では出国審査を行った後に、軌道エレベータヘ向かう。今まではコミューターでの移動が多かったので、軌道エレベータは二度目だ。軌道エレベータは4畳半ぐらいのただの部屋で椅子も何もない。
「軌道エレベータは初めてか?」
「いいえ、入校のためにこの星に降り立った時に乗りました」
「スペースコミューターよりは軌道エレベータの方が便利だから覚えておくと良い」
扉が閉まり、室内にあるランプが赤から青に替わった。すると、部屋が上昇し始め、身体に浮遊感が生じる。
「宇宙港って、どれくらいの高さにあるんですか?」
「高度400キル(400km)だ。その高度だと静止衛星と同じになる」
30分程で部屋が停まった。その瞬間、身体が浮いた。
「え、ええっ!」
「ここは無重力だからな。吐くなよ」
身体が空中に浮き、宇宙酔いで気分が悪くなるが、冒険者訓練校でも何度か無重力訓練をして来たから、吐くまでの事はない。
扉を出て、宇宙港に入ると重力が戻った。俺達以外にも歩いて宇宙港に入る人もいる。
宇宙港で歩いている人は様々だが、冒険者は一目で分かる。それは衣装が冒険者訓練校の制服と同じで、男性はきっちりとした短パンとランニング、それにブレザータイプの上着、女性はミニスカートとブラジャー、それに男性と同じようなブレザーだからだ。
冒険者訓練校の女性はミニスカート姿は可愛かったが、冒険者の女性は大体20歳以上なので、どちらかと言うとミニスカート姿は色っぽく見える。
宇宙港中心部に行くとそこは広いロビーになっており、沢山の人が行き交っていた。
「うわー!」
俺は思わず声を出した。




