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第10話 ワープって凄い

 この世界では農業は全てオートプラントで生産管理しているため、不作というものがない。更に機械化が進んでおり労働者が少なく、人口数から見た生産量から飢えるということが無いので、ある程度の生活水準を保つ事が出来れば反乱は起きないと言う事だ。

「そういう事だっのか」

「だけど、この帝国では努力すれば良い暮らしをする事は可能だ。その一つが我々商人であり、冒険者だ。

 最も、商人はいきなり成功って訳ではないし、私のように企業に属している人がほとんどだけどね。

 その企業でトップに立つには能力や人柄、それに貴族や皇帝一族とのコネも必要だ。私にはとても無理だけどね」

「そんな事はありません。それで、冒険者についても詳しく教えて下さい」

「冒険者って未開の星に探査に行くって事は知っているね。その星を開発したらその星の領主、つまり男爵位を得る事も出来る。

 だから、冒険者は一攫千金の職業でもあるんだが、その地位を得る事はそう簡単ではない。

 帝国ではこの50年程そんな冒険者は出ていないし、未開の星で命を落とす事も珍しくない。

 それ以外にも、航路開拓とかも冒険者の仕事だ。宇宙航路を開拓するのも大変なんだ。危険な空間だってあるし、場所によってはブラックホールや中性子星、パルサー空域があって、ワープアウトした途端、出れなくなってしまう事があるからね」

 そんな話をしていたら艦内アナウンスがあった。

『本艦は帝国時間21:00定刻通り出港いたします。途中の入港惑星は、エルフレッドランド、3日後の帝国時間11:00到着です。なお、最終目的地である帝国首都星到着は7日後の帝国時間8:00となります』

 アームデバイスが無いので現在の時間が分からないが、エリーさんが言うにはあと30分で出発のようだ。

「あと30分程で出港のようだけど、出港を見に行くかい? と、言っても係留してある宇宙港から離れるだけの事だけど・・・」

「宇宙を旅するのは初めてなので、出来れば見てみたいです」

「私も見てみたい」

 どうやら、マーガレットも俺と同一意見のようだ。

「では、もう少ししたら、展望フロアに行って見てみようじゃないか」

「出港したら直ぐにワープするんですか?」

「いや、ここでは干渉する恒星重力が大きいから、6時間程飛行してからワープインすると思う」

「一回のワープでどれ位ジャンプできるんですか?」

「この船だと1000光年ってとこかな。大型艦や帝国戦艦になると、1500光年から2000光年ジャンプできる船もあるけどね」

「では、次の停泊地であるエルフレッドランドは、3000光年離れているってことですね」

「そう単純な話ではないんだよ。ワープアウトして直ぐにワープインは出来ないんだ。

 その理由の一つがワープエネルギーの充填だ。一回のワープに要するエネルギーはかなり大きくて、ワープの最中はエネルギー充填が出来ないから、ワープアウト後にエネルギーを充填しないといけない。1000メル(1000m)級の船だと、これに約6時間かかる。

 それとワープ地点の管制を行わないと、いきなり次の地点にワープアウトしてしまうと、そこに別の船が居たら大変な事になってしまう。

 だから、ワープする場合は管制官の指示に従って、ワープする必要があるんだ」

 アニメの世界のように、いつでもどこへでもワープする訳にはいかないんだ。

 出港5分前に俺達3人は展望フロアに来た。そこには同じように出港を見ようとする人が既に30人ぐらい居て、全員が窓の外を見ている。

 俺達も空いているスペースから外の様子を見ていると、係留ロックが外されて出港になった。

 それと同時に艦内アナウンスが流れる。

『本艦はただ今、ヘーデルランド宇宙港を出港致しました。これより6時間後にエルフレッドランド国に向けてワープインに入ります』

 窓の外を見ると加速している為か星の動きが速い。ルーム内に設置されたディスプレイには我が母星であるヘーデルランド星が凄い速度で遠ざかって行く。

 恐らく光速に近い速度で航行しているのではないだろうか?

「光速で航行してるんでしょうか?」

 俺の疑問にエリーさんは答えてくれる。

「光速で航行する事は出来ないんだ。最高速度でも光速の99%なんだよ。

 その理由は簡単で光速になると、船の重量が無限大になるんだ。そうなると船自体が自重に耐えれなくなり、圧壊してしまうんだ。

 それに重量が重くなると、エネルギーも沢山必要となる。ワープイン前にはなるべくエネルギーの消耗は避けたいからね」

 前世の車だって重量が軽い方が燃費が良かった。そういう事なのだろう。

 それと、光速で重量が無限大となるのは、相対性理論でも明らかになっていた。その理論はこの宇宙でも共通なんだ。

「相対性理論か」

 俺は呟いてみたが、その言葉をエリーさんは聴き逃さなかった。

「良く知っているね。どこでその言葉を知ったんだい?」

「アームデバイスで宇宙の事について質問していたら出て来たので」

「ほう、良く勉強しているね。そんなに勉強好きなら冒険者になるより、商人になってみないか? ただし、商人訓練校は冒険者訓練校と違って、費用が掛かるが」

「うちにはお金がないから無理ですし、もう冒険者になると決めてますから」

「うーむ、それなら仕方ない」

 展望フロアからエリーさんの部屋に戻り、宇宙とその航行について色々と教えて貰っていたが、6時間後ワープインに入るアナウンスが艦内に流れる。

『本艦は、これよりエルフレッドランド星に向けてワープインに入ります。安全のため、全ての窓のシャッターを降ろさせて頂きます。

 なお、ワープ中の映像につきましては、各部屋またはお近くのディスブレイをご覧下さい』

 アナウンスが終わると同時に部屋の窓のシャッターが降り出した。そして、部屋の中にあるディスブレイに外の映像が映し出され、ディスブレイの下には数字がカウントダウンされている。

 だが、文字が読めない人にはこの数字の意味が分からないだろう。

 俺はエリーさんから教えて貰った事もあり、既に数字は理解出来ている。

 ディスプレイに映し出されている星の後方に光の線が流れ出したと思ったら、数字が0になり、画面が真っ暗になった。

 数字は今度はマイナス表示になっている。

「あれ、真っ暗になりましたよ」

「ああ、ワープ中って真っ暗な空間を航行するんだ。ワープって、空間と時間に歪を作って、そこにワームホールを作り出すだろう。

 ワームホールの中は空間も時間もない世界だから、光も無いから真っ暗になるんだ」

 つまり、光がないと見れないと言う事か。

「それでこの状態が6時間続くと言う事ですか?」

「いや、ここの航路だと4時間位だな。その後は80%の速度でエネルギーを充填しながら6時間程航行し、またワープを繰り返すということだ」

「つまり、1階のワープに必要な時間は12時間って事ですか?」

「良く計算できたね。場合にもよるが、10時間から12時間毎に1回ワープすると言う事だね」

「ワープエンジンって、どういう仕組みで航行するんですか?」

「うーん、それは僕にも説明出来ないね。もし、疑問に思ったら、この船の説明が20階ロービーの所にあったから、行ってみようか」

 俺達3人は、20階にあるロビーに来た。このロビーはこの船のメインであり、レストランや娯楽室が併設されているが、これはあくまで2等、3等船室用のためである。1等船室以上の乗客は、30階にある専用フロアーとレストランに行く。

 そのロビーの一角に船の構造が書かれたレリーフがあるが、文字が読めない人たちがほとんどなので、それを見る乗客はいない。

 俺たちがそのレリーフを見ていると、一人の男性アテンダントが通りかかった。

 エリーが、そのアテンダントを引き留めて説明を求めると、そのアテンダントは心良く説明を始めてくれた。

「この船のメインエンジンは融合粒子加速ワープドライブというものです。

 宇宙空間にはエネルギーを持った粒子が存在しますが、宇宙を航行するには、このエネルギーを持った粒子を集めて、粒子融合リアクターで圧縮します。このエネルギーは『ミジハロスキー粒子』と言い、2000年前までは単にダークマターと呼ばれていたものです。ダークマターと言っても色々な粒子の総称ですから、その中のエネルギーを持った粒子が発見されたということですね。

 この粒子は広く宇宙空間に存在しているため、何処に行っても収集は可能ですが、ワープエンジンで使えるようになるには、集めた粒子を圧縮する工程が必要になります。

 これをリアクターで圧縮してやる訳です。どうでしょうか、ご理解頂けたでしょうか?」

 正直分からん。ただ、ダークマターとかは、俺の前世でも聴いた事がある。要するにそのダークマターの一部を使っていると言う事だな。

「えーと、大体は分かりました。ありがとうございました」

 俺がお礼を言うと、アテンダントは何かあったらまたお聴きくださいと言って離れて行った。

「アルディ君、分かったのかね?」

「いえ、ほとんど分かりませんでした」

「ははは、そうだろう。実は私も分からなかった」

「なあーんだ、結局誰も分からなかったんだ」

 エリーさんとマーガレットさんが笑った。


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