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13 オブ・ザ・デッド


 季節は変わり、移り行く。

 世界は変わり、時代は進む。

 落ち葉が散るように、人類は死滅してしまった。僕らは枯れた枝にしがみつくように、小さな社会を形成している。


「ははっ、合理的な考え方ができるじゃねぇか。見直したぜ。そんじゃ、一つお手本を見せてやる。ゾンビの正しい殺しかたってやつをな」

 アカがニタリと笑って銃を構えた。

 秋の風が彼女の髪を浮き上がらせた。

「な、なぜ」

 止めとなくキンの瞳から涙が溢れている。

「なぜ、みなさん、逃げないのですか……」

「バカか、お前。この世界は狂っちまってんだ。遅かれ早かれ死ぬなら、テメーの抗体とやらにかけることにしたんだよ。……分かりやすく言ってやる。テメーに死なれると困るんだよ」

「っ……」

 歯を見せてアカを笑い、一番近くのゾンビに銃口を向け、引き金を引いた。

 弾ける頭部と同時に、銃声に引かれ、車に残っていた数体もヨタヨタとぼくらに向かって腕をつきだし動き出した。

 ゾンビが散らばり、ひしゃげたレクサスが人波の隙間に見えた。

「……」

 潰れたトランク、外れたナンバープレート、割れたブレーキランプ、そして、

「!」

 これだ、と思った。

 僕らが生き残るための最後の一手。

「アカ! トランクを狙え!」

 僕は、唸り声にかき消されないように、大声で叫んだ。

「トランク? 車のか? なぜ?」

「早くしろ。時間がない。僕らとゾンビの距離がある今だけなんだ!」

「よくわかんねぇが、まかせな。今日はな、すこぶる調子がいいんだぜ」

 少女は僕にウインクをして、小さな指に力を加えた。

 銃声が響き、銃弾はまっすぐ狙い通りの位置に飛んでいく。奇跡を祈るしかない。

 アカのぶっぱなした一撃はゾンビに当たることなく、トランクに命中し、そして、

 大爆発が起こった。


 轟音とともに地面が揺れ、熱風が吹き、辺り一面真っ赤に染まる。ゾンビは吹き飛び、衣服に散った火の粉が彼らをバーベキューにした。

 町を浄化せんと立ち上る火柱と飛び散った車の破片がゾンビたちの足を止めさせた。

 それでもなお僕らに手を伸ばすゾンビは少なからずいたが、数はたかが知れており、大多数は爆発に巻き込まれて、文字通り天に昇っていった。

「そうか。ガソリンをポリタンク入れて、トランクに積んでたな……」

 ごうごうと立ち上る黒い煙を見て、アカが呟いた。これだけ大規模な爆発になるとは思わなかったが、危機を脱することはできたらしい。

 あとは爆発に巻き込まれなかったごく一部のゾンビを寝かしつけてあげるだけだ。

 銃声が響くが、町の真ん中のどんど焼きの音の方が大きいのが、ゾンビが寄り付くことはなかった。

 秋の青空に赤い火柱がごうごうと立ち上る。澄んだ空気が淀んでいく。

「これは、凄いな。世界が変わるほどの大爆発だ」

 シロがぼそりと呟いた。

「いいえ、違います」

 キンがゆっくりと立ち上がり、にこりと微笑んだ。

「アレこそは狼煙、人類の反撃の狼煙ですわ」


 こうしてピンチを脱した僕らは、目的地を選定し直し、再び歩み始めた。

 その後がどうなるかは、誰にもわからない。

 世界が平和だった頃は、明日に備えて生きるのでさえ億劫だった。

 世界が緊張に包まれてからは、明日が常に来るものとは思えなかった。

 それでも今はだいぶましだと胸を張って言えるだろう。覚めることない悪夢に囚われているのは代わりないが、僕はバッドエンドは嫌いなので、できるだけハッピーエンドにしたいと考えている。

 

「何チンタラしてやがんだ。さっさと町を出るぞ!」

 感傷に浸っていたら、アカに叱咤されてしまった。

 僕は最後にため息をついて、生まれ故郷を目指すことにした。


 

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