出発
相談するとしたら、クリス、アンナ、ニキアの3人になる。
ランティエは、この3人なら大丈夫だろうと言った。理由としては、
3人とも呪猟をすでに実戦を経験済みであること。
それぞれに特技があり、呪猟において有効であること。クリスは持力発現が強力だし、アンナには圧倒的知識に裏打ちされた知略がある。ニキアは呪闘士専攻だが、その戦闘センスは目を見張るものがある。
と言ったところだ。
無理をしないことを言い含めて参加してもらう分には十分に戦力になる、と言うのがランティエの見解。
一方、今回の呪猟の対象は未知の魔物。しかも、呪猟士のランクでもかなり上位に位置する人物を返り討ちにしている。それを、トップクラスの呪猟士一人と館生だけで狩ろうというのだ。
ユーナは悩んだ。悩んで、その結果、やはり3人にはお願いできないという結論に達した。そもそも、3人はリッツジェルドに関係ない。
ユーナは、呪猟のことを内緒にして準備を進めた。
そして、2日後。出発の日。
誰にも見つからないように、早朝を選んだ。
荷物を寮のロビーに運んで、リッツジェルドの馬車が到着するのを、ランティエと一緒に待っていた。
ユーナは気が重いのに対し、ランティエが機嫌が良いようだった。
「ランティエさん、なんだか嬉しそうですね? 呪猟が楽しみなんですか?」
「そう見えますか? まあ、ハズレではないですね」
「凄いですね。あたしは緊張してます」
「いまからそうだと、本番まで持ちませんよ?」
「それは、そうなんですけど……」
無理な話だとユーナは思った。
「ユーナさん、こんなに早くから、どちらへ?」
後ろから、アンナの声が聞こえる。慌てたユーナは、「え、いや、これは違うのよ?」と弁明しながら振り返る。
そこには、すっかり旅支度を整えたアンナが立っていた。
「アンナ、その格好……」
「旅行なら、連れて行っていただかないと」
「でも……」
その時、前庭から蹄が石畳を叩く音が聞こえる。馬車が到着したようだ。アンナに「ちょっと待って」と言い置いて、ユーナは外に出て、出迎える。しかし、その馬車は、リッツジェルド家のものではないようだった。
「ユーナさん!」と聞き間違えようのない声がかかる。思った通り、馬車の窓からこちらに手を振るクリスの姿がある。その隣にはニキア。
また、後ろからアンナの声。
「未知の魔物とは、どのような存在なのでしょう。この目で見てみたいです」
「どうして、それを……?」
と言ったところで、ユーナははっと思い当たった。
「ランティエさんでしょ、教えたの? どうしてそう言うことするんですか⁈」
ランティエは、にまーと笑顔になる。
「あなた達は、どんな時も4人で居るべきだと思いますよ」
「それって、どういう?」
「さあ? どうでしょう」
ランティエは、はぐらかした。
馬車から降りてきたクリスとニキアが近づいてくる。
「水くさいですよ、ユーナさん。こういう時は頼ってくださって良いんです! それにレオンハルト様とご一緒出来るんですよね? そんな千載一遇のチャンスを逃すわけにはいきませんから!」
クリスが胸の前で手を組んでそう言った。興奮している様子だが、呪猟よりもレオンハルトと一緒できることの方が興味ありそうだった。
「あっはっはっはー! 任せろ! あたしがいれば大丈夫だ!」
ニキアは、根拠がよく判らない自信に満ち溢れている。
「でも、今回はすごく危険なんだよ? 命がけになるかも知れない、ううん、多分、そうなると思う。だから声をかけなかったのに」
「人数は多い方がきっと役に立ちますよ」とクリス。
「それにしたって……」
「大丈夫だって! みんなでやれば出来ないことはないさ」とニキア。
「そんな安直な」
「足手まといになるかも知れませんが、是非、お供させてください」とアンナ。
ユーナは黙った。
「行きましょう!」
クリスが手を差し出す。ユーナは笑顔になってその手を握り返した。




