ローリスの訪問1
「え? なんで?」
ユーナはランティエの思惑を計りかねた。
「ユナマリア様のご友人のクリスティーネ様、アンネッテ様、ニキア様とは、一緒に呪猟をしたことがあります。彼女たちなら、実力的に問題は無いでしょう」
「そんな安直に……」
ユーナも、助けを求めるとしたら、彼女たちしか思いつけない。彼女たちのことだから、頼めば付き合ってくれるかも知れない。
「大丈夫だと思いますよ、ユナマリア様」
ランティエはにこりと笑顔で答え、レオンハルトに向き直った。
「そのためにはリッツジェルド伯爵閣下、いくつか約束をお願いいたします」
「聞こう」
「絶対に無理はしないこと。死者を出すようなことはしないこと。そのために、敵討ちを放棄することも覚悟すること。いいですか?」
「承知した」
「その上で、私たちは全力を尽くすとお約束しましょう。……これでよろしいですか、ユナマリア様?」
「え? ええ、うん」
「ありがとう、ユーナ!」とルツィア。
「お礼ならランティエさんに言ってよ」
「ええ、ランティエさんも、ありがとう」
「お礼はまだ早いですよ。問題は山積みなんですから」
馬車はメーゼンブルクの東にあるリッツジェルド屋敷の前庭でその車輪を止めた。この屋敷はこじんまりとしていて、少し裕福な商人が住むのに相応しいとくらいの大きさだった。伯爵家が所有するにはあまり相応しいとはいえない。それでも維持しているのは、レオンハルトが伯爵としての公務を行う場所が必要だったからだ。レオンハルトはいつもはリッツジェルド寮に住んでいるので、貴族の仕事を果たすのにそれ程大きな場所は必要ない。
馬車の音を聞きつけたのか、見計らったようにメイドが扉から姿を現した。
4人全員が下車したところで、メイドが、レオンハルトに向かって、
「ご主人様、ローリス・イルトゥース公爵様がご用とのことで、お待ちです」
と告げる。
レオンハルトは、「応接にお通ししたのか?」と訊くと、メイドは「はい」と答えた。
「これから行く。この者たちも行くとお伝えしろ」
一礼してメイドが消えた。
まるで、ローリスが来訪するのが当然のような対応に、ユーナは驚いた。ローリスの方から屋敷を訪れるくらいなのだから、親密な間柄ということになる。
いつのまにそんな関係を築いたのか、ユーナは疑問に思うと同時に羨ましく思った。
ランティエがいつも通り玄関で守衛の任に就こうとするのを、レオンハルトが止めた。
「今回はあなたも当事者だ。ご一緒願いたい」
ランティエはユーナに判断を求める。ユーナは「彼の言う通りにしましょう」と頷きを返す。ランティエもまた頷いて、「承知しました」と答えた。
ユーナたちが応接室に赴くと、そこには優雅にお茶をたしなむローリスが待っていた。
「リッツジェルド伯爵、お邪魔しています」
その口振りから、今日のローリスは館生としてではなく、貴族のイルトゥース公爵として出向いてきているのだと判る。




