借金返済~そして
それから数日。
カズキはレナとサクラと一緒に、いくつかの依頼をこなしていた。
薬草採取。
街道周辺の魔物討伐。
農場を荒らす魔物の駆除。
どれも低ランク冒険者向けの簡単な依頼だった。
最初こそ張り切っていたカズキだったが、すぐに現実を知った。
薬草採取では。
「カズキ、それ違う」
「これじゃないのか?」
「それ雑草」
「似てるだろ」
「全然違うわよ」
魔物討伐では。
「カズキ!」
「分かった!」
ドゴォン!
「…………」
「…………」
「倒したぞ」
「なんで木まで倒れてるのよ!」
農場では。
「絶対に畑を壊さないでね」
「分かってるって」
「絶対よ」
「信用ないなあ」
結果。
魔物は無事に退治した。
畑も無事だった。
代わりに、畑の横にあった柵が一本なくなった。
「……不可抗力だろ」
「農家の人に謝ってきなさい」
「はい」
そんな調子ではあったが、依頼そのものは順調にこなしていた。
そして今日。
三人は冒険者ギルドの受付に立っていた。
「以上で、今回の依頼は完了となります」
受付嬢が報酬の入った小袋を差し出した。
カズキが受け取る。
じゃらり。
硬貨の音がした。
「おお……」
この世界に来て初めて、自分で稼いだまとまった金だった。
「これ、俺の分?」
「そうよ」
レナが答える。
「全部?」
「三人で分けた後だから、それがあんたの取り分」
カズキは袋の中を見る。
銀貨が入っている。
「冒険者って、本当に金もらえるんだな」
「今さら何言ってるのよ」
「いや、なんか実感なくてさ」
異世界に来て。
冒険者になって。
依頼を受けて。
魔物と戦って。
そして報酬をもらった。
ようやく少しだけ、この世界で生活しているという実感が湧いてきた。
カズキは銀貨を取り出した。
一枚。
二枚。
三枚。
そして、そのままレナに差し出す。
「ほら」
「なに?」
「借金」
レナが銀貨を見る。
「……借金?」
「剣」
「あ」
ギルドの訓練場で折った、貸し出し用の鉄剣。
弁償代は銀貨三枚。
あのとき、金を持っていなかったカズキの代わりにレナが払ってくれた。
「覚えてたの?」
「当たり前だろ」
「別に、急がなくてもよかったのに」
「借りたものは返す」
カズキはレナの手を取り、その掌に銀貨を三枚置いた。
「これで借金なしな」
「……そう」
レナは銀貨を見つめた。
それから、小さく笑った。
「そういうところはちゃんとしてるのね」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味」
「俺をなんだと思ってるんだ」
「剣を折る人」
「それはもういいだろ!」
「岩を砕く人」
「手加減した!」
「畑の柵を消す人」
「消してない! 壊しただけだ!」
「もっと悪いですよ、それ」
横からサクラが言った。
「サクラまで!」
二人が笑う。
カズキはため息をついた。
だが、悪い気はしなかった。
この世界に来たときは、一人だった。
金もなかった。
知り合いもいなかった。
右も左も分からなかった。
それが今は、こうして一緒に依頼を受ける相手がいる。
「さて」
レナが銀貨をしまった。
「借金も返してもらったことだし」
「なんだ?」
「そろそろ、これからのことを決めない?」
「これから?」
レナはサクラを見る。
サクラも頷いた。
「毎回なんとなく三人で依頼を受けるのも変でしょ」
「まあ、そうだな」
「だったら――」
レナはそこで言葉を切った。
「ちゃんと決めましょうよ」
「何を?」
「私たちのこと」
カズキは首を傾げた。




