最強?!パーティ結成
「私たちのこと」
そう言われても、カズキには何のことか分からなかった。
「俺たち?」
「そう」
レナが頷く。
「ここ数日、ずっと三人で依頼を受けてるでしょ?」
「そうだな」
「だったら、正式にパーティーを組まない?」
「パーティー?」
「冒険者同士で組むのよ。依頼を受けるのも、報酬を分けるのも基本的に一緒」
「なるほど」
カズキは少し考えた。
確かに、ここ数日はずっと三人で行動している。
だったら今までと大して変わらない。
「でも俺、一人でも――」
「無理ね」
即答だった。
「まだ何も言ってないんだけど」
「一人でもやれる、とか言おうとしたでしょ」
「……なんで分かった?」
「見てれば分かるわよ」
レナはため息をついた。
「あんた、一人だと死ぬわよ」
「いやいや」
カズキは自分を指さした。
「このステータスで?」
「このステータスだからよ」
「どういう意味だよ」
レナが指を一本立てる。
「薬草の見分けがつかない」
「覚えればいいだろ」
二本目。
「加減ができない」
「手加減Lv1がある」
「岩を砕いたわよね?」
「…………」
三本目。
「武器を持たせたら壊す」
「それは……」
四本目。
「金銭感覚もこの世界の常識もない」
「来たばっかりだから仕方ないだろ!」
「あと、たぶん罠とかにも普通に引っかかる」
「それはまだ分からないだろ!」
「引っかかるわよ」
「なんで断言できるんだよ!」
レナは腕を組んだ。
「あんたね」
「なんだよ」
「そんなに強いのに、一人じゃまともに冒険できないのよ」
「…………」
否定したい。
だが、この数日を思い返す。
薬草採取では雑草を集めた。
魔物を倒せば周りの木まで倒した。
農場では柵を壊した。
初日には剣も折った。
「……俺、もしかして結構ダメ?」
「今さら気づいたの?」
「強いんですよ」
サクラが横から口を挟んだ。
「そうだろ?」
「でも、一人で冒険するのは難しいでしょうね」
「サクラまで!?」
サクラはにこりと笑った。
「というわけで」
レナが腰に手を当てる。
「私が組んであげるわよ」
「なんで上からなんだよ」
「嫌なの?」
「嫌とは言ってない」
むしろ助かる。
この世界のことを何も知らないカズキにとって、レナがいてくれた方がいいのは間違いなかった。
「じゃあ決まりね」
レナは今度はサクラを見る。
「サクラはどうするの?」
「私ですか?」
「ここ数日は一緒だったけど、正式に組むならサクラにも都合があるでしょ」
「そうですね……」
サクラは少し考えた。
「最近の魔物の動きも気になりますし」
「魔物?」
カズキが聞く。
「はい。街道の近くまで出てくる魔物が、少し増えているんです」
「そうなのか?」
「まだ異常と言えるほどではありません。ただ、以前とは少し違います」
サクラの表情がわずかに真剣になる。
「調べておきたいと思っています」
「なるほど」
「それに」
サクラがカズキを見る。
「カズキさんと一緒なら安全ですね」
「おお」
ようやくまともに評価された気がする。
カズキが胸を張る。
「分かってるじゃないか」
「カズキさん自身から少し離れていれば、ですが」
「どういう意味!?」
レナが吹き出した。
「それ大事ね」
「二人ともひどくない?」
「冗談です」
サクラは笑う。
「それに、カズキさんの隠しステータスが今後どうなるのかも興味がありますから」
「ああ、そっちか」
カズキは自分のステータスを思い出す。
レベルが上がっても、数値は変わらなかった。
代わりに覚えたのが《手加減Lv1》。
しかも、ほとんど役に立っていない。
「次はまともなスキルが来ると思うんだけどな」
「どうかしらね」
「来るだろ」
「手加減だった人が?」
「次こそは!」
「楽しみにしています」
サクラはどこか本当に楽しそうだった。
「じゃあ、三人で決まりね」
レナが右手を差し出した。
カズキがその手を見る。
「何?」
「こういうときは握るものでしょ」
「ああ」
カズキがその手を握る。
サクラも、その上に手を重ねた。
「よろしく、カズキ」
「ああ。よろしくな、レナ」
「よろしくお願いします、カズキさん」
「サクラもよろしく」
こうして――。
異世界に来たばかりで常識もない。
強すぎて手加減もできない。
武器を持てば壊す。
そんなカズキと。
盗賊のレナ。
巫女のサクラ。
三人のパーティーが正式に結成された。
カズキは重なった三人の手を見ながら思う。
これなら、どんな依頼でも何とかなるんじゃないか?
自分には、とんでもないステータスがある。
レナはこの世界のことに詳しい。
サクラは治癒も補助も使える。
かなりバランスのいいパーティーではないだろうか。
いや。
もしかすると――。
「俺たち、最強のパーティーになるんじゃないか?」
「それはない」
レナが即答した。
「なんでだよ!」
「少なくとも、あんたがまともになるまではね」
「すぐなるって!」
カズキはまだ知らなかった。
自分の強さが、場所によっては何の役にも立たないことを。




