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はじめての異世界転生、ステータス補正で無双する!  作者: 若菜みかん


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19/22

異世界の銭湯

「あんた、血なまぐさいから寄らないでよ」


レナはカズキをにらみながら言った。


「えー、血まみれの棒を握っただけなのに?」


「そういえば、みんな血なまぐさいですね……」


カズキの返事に、サクラがかぶせた。


「しょうがないわね。早く宿に戻りましょう」


一行は帰路を急いだ。


---


「申し訳ございません。お風呂が今日は使えませんので、銭湯へ行ってもらえますか?」


宿屋のお姉さんは申し訳なさそうに告げた。


「へー、この世界にも銭湯ってあるんだ」


「まあ、あるにはあるけどね」


「ええ、ありますわね」


「はい、あります」


「どうしたんだ、三人とも。歯切れが悪いなぁ」


「カズキ! あんた今日は外で水でも浴びてなさい」


「ひどい! 俺たちパーティーだろ! なんで風呂にも入れないんだよ!」


「もう、分かったわよ!」


三人は無言で銭湯へ向かった。


---


「はい、四人ですね。どうぞごゆっくり」


受付のおばあさんにお金を渡すと、奥へ行くよう促された。


「あれ? 入口が一つ……もしかして」


「そのもしかしてよ! 近寄らないでよ!!」


「そうなんです。混浴なので、若い女性はあまり利用しないんですよ」


サクラから嬉しい情報が飛び出した。


「まったく、これだから庶民は」


「あんたも庶民でしょ」


ニーナのぼやきに、レナがすかさず突っ込む。


カズキはニヤニヤしながら、二人の会話を聞いていた。


「先に行きなさい」


「え、みんなで行こうよ」


「さ・き・に・い・け!!!」


「はい……」


レナの圧に負けて、カズキは先に風呂へ入った。


「はぁー。でかい湯船なんて久しぶりだな」


手足を伸ばす。


温かい湯が、戦いで疲れた身体に染み込んでいく。


しばらくすると、タオルを厳重に巻いた三人が入ってきた。


レナの目が『こっちを見たらコロス』と言っているようだったので、カズキはそっと目をそらした。


「はぁ、まったくしょうがないわね」


「そうですわね」


「まったくですね」


三人のぼやきは、湯気の中へ溶けていった。


やはり、大きなお風呂はいいものだ。


しばらく湯に浸かっていたカズキだったが、さすがに居心地が悪くなってきた。


「さて、俺はもう出るよ」


カズキは湯船から立ち上がった。


その瞬間。


「おっと……」


少しのぼせたのか、ふらりと身体が揺れた。


そこへ、ちょうど風呂場を走っていた子供がぶつかってくる。


「うわっ!」


よろける。


目の前には三人。


カズキは、とっさに何かを掴んだ。


「え?」


それは。


タオルだった。


「きゃああああああああ!!」


風呂場に、三人の悲鳴が響き渡った。


---


「あんたね! 予想通りの展開じゃない! この馬鹿!」


「しょうがないですね、カズキさんは」


「と、殿方に触られた……」


三者三様の反応を味わったカズキは、


――異世界万歳。


と、心の中で叫んだ。


---


銭湯からの帰り道。


「見たの?」


レナが短くカズキに尋ねた。


「バッチリ!」


ポカッ。


「この変態が!」


頭を押さえるカズキ。


二人のやり取りを微笑ましく見ていたサクラが、ふと何かに気づいたように足を止めた。


「……もしかして」


「ん?」


「ちょっとカズキさん。隠しステータスを確認しますね」


「え?」


サクラはカズキのステータスを確認する。


そして。


「ああ、やっぱりですね」


「何が?」


「隠しステータスが増えています」


「え!? また俺、強くなるの?」


「いえ。分かりませんが……」


サクラは首を傾げた。


「《お約束》とあります」


「お約束?」


レナも覗き込む。


「何よ、それ」


「補正値もレベルもありません。ただ、《お約束》とだけ……」


「…………」


カズキは考えた。


混浴。


立ちくらみ。


偶然ぶつかってきた子供。


そして。


掴んでしまったタオル。


「じゃあ……」


カズキの顔が、みるみる明るくなる。


「このラッキースケベ展開は、お約束だったのか!」


両手を突き上げる。


「異世界最高――!」


ポカッ!


「喜ぶな! この変態!」


「痛っ!」


レナは大きなため息をついた。


「はぁ……つくづく変なスキルね」


サクラは《お約束》の文字を眺めながら、首を傾げている。


ニーナは顔を真っ赤にしたまま、カズキから距離を取っていた。


「……最低ですわ」


「俺、何もしてないのに!?」


「バッチリ見たと言ったでしょう!!」


三人の声が、夜の街に響いた。


カズキの隠しステータスに、新たな謎が加わった。


《お約束》。


それが何を意味するのか。


この時のカズキは、まだ知らなかった。


「……次は何が起きるんだろうな」


「期待するんじゃない!!」

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