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はじめての異世界転生、ステータス補正で無双する!  作者: 若菜みかん


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18/19

思いっきりやっていいって言ったよな?

「コボルトの群れです!」


サクラの声に、全員が足を止めた。


フェザーバードの討伐を終え、街へ戻る途中だった。


街道から少し離れた草原。


その向こうに、小さな影がいくつも見える。


一匹。


二匹。


三匹。


「……多くない?」


カズキが目を細める。


レナも表情を変えた。


「多いわね」


草原を埋めるように、コボルトたちが集まっている。


手には棍棒や錆びた剣。


数は――。


「三十匹ほどでしょうか」


サクラが言った。


「三十!?」


ニーナが剣を抜く。


「どうしてこんな場所に、それほどの群れが?」


「分からない。でも、街道に出られたらまずいわ」


レナも短剣を構えた。


最近、この辺りでは魔物の動きがおかしい。


旧鉱山のゴーレム。


ニーナの村を襲った魔物。


そして今度は、突然現れたコボルトの群れ。


「ギルドへ報告に戻りますか?」


サクラが尋ねる。


レナは少し考えた。


その間にも、コボルトたちはこちらへ近づいてくる。


「……間に合わないわね」


「でしたら戦うしかありませんわ!」


ニーナが前へ出る。


カズキも拳を握った。


「俺も――」


「待って」


レナが止める。


「また!?」


「ちょっと考えてるのよ」


レナは周囲を見渡した。


村。


ない。


家。


ない。


畑。


ない。


洞窟。


ない。


あるのは、どこまでも続く草原だけ。


「…………」


そして。


カズキを見る。


「カズキ」


「何?」


レナが草原を指さした。


「平原だから、思いっきりやっていいわよ」


「…………」


カズキの目が輝いた。


「マジで?」


「ただし、こっちに飛ばさないでよ」


「分かった!」


「あと街道も壊さない!」


「分かった!」


「本当に分かって――」


「よっしゃあああああ!!」


「最後まで聞きなさいよ!」


久しぶりだった。


何も気にしなくていい。


洞窟の天井もない。


村もない。


素材を残す必要もない。


つまり。


手加減しなくていい。


「さて……」


カズキは周囲を見た。


そして。


足元に落ちていた木の枝を拾った。


「……何をするつもりですの?」


ニーナが聞く。


「これを投げる」


「枝を?」


「うん」


レナの顔が引きつった。


「ちょっと待って」


カズキは枝を握った。


長さは腕ほど。


どこにでも落ちていそうな、ごく普通の木の枝だ。


「前に森で枝使ったら、結構強かったんだよ」


「それ、森を吹き飛ばした時の話!?」


「今回は何もないから大丈夫だろ!」


「そういう問題――」


「いっけえええええ!!」


カズキが。


木の枝を投げた。


ブンッ。


枝が回転する。


まるでブーメランのように。


いや。


ブーメランなんてものではなかった。


一瞬で。


消えた。


「え?」


ニーナが声を漏らした。


次の瞬間。


ドドドドドドドドドドドドッ!!


コボルトの群れの中を、何かが駆け抜けた。


一匹。


二匹。


五匹。


十匹。


枝は勢いを失わない。


草原を低く飛びながら、次々とコボルトの群れを薙ぎ払っていく。


そして。


ヒュンッ。


「お?」


カズキが手を出した。


パシッ。


枝が戻ってきた。


「…………」


静かになった。


「…………」


カズキは手の中を見る。


さっきまで茶色かった木の枝が。


真っ赤に染まっていた。


「…………」


「…………」


「…………」


「……戻ってきた」


カズキが言った。


誰も答えない。


草原を見る。


さっきまで三十匹ほどいたコボルトは。


一匹も立っていなかった。


「…………」


風が吹いた。


草が揺れる。


カズキはもう一度、手元の枝を見る。


「……ブーメランみたいで便利だな」


レナが一歩下がった。


「え?」


さらに一歩。


「なんで離れるの?」


「いや……」


レナが真っ赤な枝を見る。


「さすがにちょっと……」


「思いっきりやっていいって言ったじゃん!」


「言ったけど!」


ニーナも顔を青くしていた。


「あなた……」


「何?」


「もう少し、こう……ありませんの?」


「何が?」


「倒し方というものが!」


「倒せたからいいだろ?」


「三十匹ですわよ!?」


サクラだけは静かに草原を見ていた。


そして。


「……全滅していますね」


「サクラまで引いてない?」


「少し」


「少し!?」


カズキはショックを受けた。


「だって、みんなで倒すより早いだろ!」


「効率の問題じゃないのよ!」


レナが叫んだ。


「何よ、その枝!」


「拾ったやつ」


「知ってるわよ!」


「返した方がいい?」


「どこに!?」


そのときだった。


カズキの頭の中に、聞き覚えのある感覚が響いた。


《レベルが上がりました》


「お?」


《レベルが上がりました》


「また?」


《レベルが上がりました》


「おお?」


カズキは自分のステータスを開いた。


「レベル……六?」


「一気に!?」


レナが覗き込む。


「三十匹も倒しましたからね」


サクラもステータスを見る。


カズキは期待しながら表示を確認した。


レベル六。


そして。


筋力。


体力。


敏捷。


魔力。


「…………」


「どう?」


レナが聞く。


カズキは顔を上げた。


「ほとんど変わってない」


「でしょうね」


「なんでだよ!」


「今さら普通のステータスが上がってどうするのよ!」


確かに。


問題はそこではない。


カズキは表示を下へ送った。


《隠しステータス補正》


一八四〇倍。


「こっちも変わってないな」


「よかった……」


「なんで安心するんだよ!」


「これ以上増えたら困るでしょ!」


「じゃあ、新しいスキルは?」


カズキはさらに表示を見る。


そして。


止まった。


「……あ」


「何?」


「増えてる」


「何がですの?」


三人が覗き込む。


そこには。


新しい文字が表示されていた。


《投擲 Lv.1》


「…………」


「…………」


「…………」


カズキは手に持った枝を見る。


真っ赤だった。


もう一度、ステータスを見る。


《投擲 Lv.1》


そして。


笑った。


「これ、使えるんじゃない?」


「使わないで!!」


三人の声が。


草原いっぱいに響いた。


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