10歳--7
新しい散歩道を興味津々で歩くカイと、その後ろからカイのリードと散歩セットを持って歩く俺のちょうど間、リードのあたりでユミカちゃんが歩く。
俺からは斜め後ろからの顔しか見えない。
「カイ君、この道はいろんなワンちゃんが散歩してるからいろんな匂いがするかもね」
「カイ君、そっちの草は薬撒いてるからダメだって。行っちゃだめだよ」
ちゃんとした笑顔で話しかけてる。
カイに。
「ねぇ」
「・・・?」
話しかけた俺に顔を向けたユミカちゃんの顔は、あの笑った顔。
「なんでもない」
「そう?」
また歩く。歩く位置も変わらないまま。
「カイ君、慣れない道で疲れてない?」
「カイ君は今まではどんなお散歩してたのかな?」
「このお散歩コースは気に入ったかな?」
カイにはちゃんと笑顔なのに。
「ねぇ」
「?」
俺にはその顔、なんで。
「リ、リード持つ?」
カイのこと好きみたいだから、喜んでくれると思ったんだ。
「いい。カイ君慣れてない場所で慣れてない人にリード持たれるの嫌だろうし、カイ君が走り出したら私止められないから」
またその顔!!
「もういい」
また歩き出した俺たちだけど、イライラ?モヤモヤ?してるのは俺だけで、ユミカちゃんとカイは楽しそうにしてる気がする。
なんで。
「ユ・・・ユミカちゃん」
「どうしたの?」
「カイに・・・水飲ませる」
「あ、そっか。ごめんねカイ君」
土手にしゃがんだユミカちゃんに飲み水のお皿を持たせて、隣に俺が座って水を入れてあげた。
大人しく水を舐めてるカイの背中を撫でながらちゃんと笑ってるユミカちゃんを近くで見る。
隣に座ってるからよく見える。
「犬、好きなの?」
なぜかちっちゃい声になっちゃったけど、ちゃんとユミカちゃんには聞こえたらしい。
「うん。お・・・おばあちゃんの家に小型犬のジュリっていう子がいるの」
「カイは大きくて怖くない?」
「カイ君は大きいけど、優しくて怖くないよ。ジュリとは全然違うのに、ジュリがいるみたいで嬉しい。ありがとうね、カイ君」
もうすっかり慣れたのか、カイはユミカちゃんの顔にスリスリしてる。
そんなカイにユミカちゃんはびっくりするくらい可愛い顔で笑った。
なんでカイにだけ?




