12歳--12
あ、終わりそうだ。
さっさと自分の部活道具を片付けて、武道館の人に声をかけて駐輪場でユミカを待つ。
自転車に跨ってはいるけど、歩きのユミカに合わせて押して帰るからヘルメットはカゴのまま。
帰り道はこっちに向かってくるはずだからここで待ってよう。
『お疲れ様、また明日頑張ろう』
あ、先生の声が聞こえた。
それぞれ挨拶してる声も聞こえるな。もう来るかな。
『あ、松崎!もう暗いし送ってこうか?』
『いえ、大丈夫です。1人で帰れます』
『でも1人じゃ危なくないか?途中まででも、送ってやるよ』
『私の家そこまで遠くないので・・・』
『暗いんだからさ、危ないって』
『本当に大丈夫です』
『遠慮しないでいいって』
おいおい待て待て。
「ユミカ?練習終わったの?もう帰れる?」
駐輪場からユミカの声のする方に歩いてく。
うっかり素で声かけちゃった。
「タダタカ!うん、今終わったから帰る。先輩、幼馴染が送ってくれるので大丈夫です。今日の練習もありがとうございました。お先に失礼します」
ペコッと頭を下げて『え?』とか『は?』とか言ってる先輩らしき人のところからユミカが小走りで俺のところに来る。
俺の体操着の裾をギュッて握ったから、嫌だったことが伝わってきて隠れてその手を握ってあげる。
「先輩!俺が送るんで大丈夫です。幼馴染で家も近いんで!お疲れ様でした」
軽く頭を下げてユミカの手を引く。
繋いだ手をにぎにぎしながら大人しくついてくる。
「カゴに荷物入れな。ヘルメットは横にぶら下げるから」
「ありがと。そうだ、待っててくれたの?タダタカの方が終わるの早かったでしょ?」
俺が自転車押してるから、手は繋げないけど近めに並んで歩く。
「先輩にユミカ達まだ終わらないって聞いたから、自主練したいって嘘ついて待ってた。俺がいてビックリした?」
「嘘ダメじゃん。悪い後輩だなぁ!タダタカだから待ってるだろうなって、ちょっと?だいぶ?思ってたからビックリしなかったよ」
バレバレか。そりゃ俺だからな。
「タダタカこそ、めちゃくちゃビックリしてたね。しかも部活も全然できてないの。先輩にも怒られてるし、私の方見過ぎなんだよ。こっちですごい笑うの我慢してた」
「あれはしょうがないでしょ!ユミカがいたら俺は見るもん」
「で、怒られる」
「うるさい」
あはは!ってユミカが笑う。
そっか、ユミカも俺のこと見てたのか。もうちょっと練習頑張れば良かった。無理だけど。
「いつも大会前は武道館来るの?」
「選抜メンバーだから、私がいつも来るわけじゃないけど、ウチの部は毎回お願いしてるね」
「え〜、毎回頑張って選抜入ってよ。それで一緒に帰りたい」
すごいこの状況が嬉しいから、何度でもやりたい。
「簡単に言うじゃん。今回頑張ったんだよ?選抜入ったら武道館練習だな!ってぇ。タダタカあっちで練習なの知ってるから」
「ほんと嬉しかったよ。ユミカの部活姿初めて見たから」
しかも一緒に帰れる。最高か。
「まぁ頑張るけど!だから怒られてるところばっかりじゃなくて、たまにはタダタカのカッコいい練習姿見せてね」
「今日はたまたま!ビックリし過ぎたから。慣れたらちゃんと見せられるよ。たぶん」
「たぶんなのが正直すぎる」
頑張ってカッコいいところ見せたい気持ちはある!
ユミカを前にしてそれができるかどうかの問題!




