12歳--8
「ユミちゃんがもっと周りに目を向けるように、距離を置くとか」
「むり。俺がいなくてもユミカは周りなんか見ないよ」
「タカだけじゃなくてお兄ちゃんとお姉ちゃんにもコミュニケーションとってもらうとか」
「むり。兄貴はユミカの変化に気づかないポンコツだし、姉貴は時間が合わないでしょ」
「タカよりもユタカ君との時間を多くとってもらうとか」
「今だってユミカって呼べもしないのに?」
あ、イヤな言い方しちゃった。母さんも微妙な顔になっちゃった。
「わかったよ。母さんが言いたいのは、ユミカが俺ばっかりになってるのが不安なんでしょ?でもユミカもバカじゃないからちゃんとしてるところはしてるはずだよ?『ユミカ』じゃなければ学校も普通に楽しそうにしてるってナオから母さんも話聞いてるはずだし」
「それは聞いてるから心配はしてないけど・・・」
「まずは困ったときに1人で考えないで、ユタくんとか母さんとかに話してみるようには言ってみるよ」
俺がいないときにも困るからね。
「う〜ん、そうね・・・?」
「俺もユミカで困ったことがあったらちゃんと話すから。だからそのときはよろしく」
「わ、わかったわ。とりあえずはそれでいいわよ」
さっさと母さんの部屋から出て自分の部屋に戻る。
いろいろありすぎて頭がパンクしそうだ。
でもこれからを考えないといけない。
俺はユミカが好きだ。
ユミカは今は俺だけが『特別』だ。そこが変わらなければそれでいい。
『松崎』『松崎さん』『ユミ』『ユミちゃん』
そうやって呼ぶ人は好きにすればいい。
たぶんこれからもユミカは俺だけに『ユミカ』でいるから。
でもたしかにずっと一緒には無理だ。
どうしても離さなきゃいけないときもきっとある。
その間の代わりを誰かに。誰に?
あぁ、母さんが言ったのはこういうことか。
大丈夫だ、あと2年ある。俺が中学校に入ってから探そう。
やることが多いな。
ユミカの友達と、俺も友達を見直すか。
ナオに高校の話も早めに聞こう。
俺が入学するまであと2ヶ月もない。制服姿は見せてもらったけど、中学校のユミカはどんな風なんだろう。
また朝一緒に行けるかな。
たまには一緒に帰れるかな。
学年は違うけどナオはけっこう見かけて話してたらしいから、俺もそんな感じかな。
部活見に行ったら恥ずかしいって怒るかな。
思ったより違う学校に通う1年間が俺は寂しかったみたいだ。
早くまた同じ学校に通いたい。




