12歳--6
ユミカを松崎の家に送ってから帰ってきた。
「タカ、話しましょう?」
「いいよ」
母さんの部屋で2人で向かい合って座る。
「まずは何から話せばいいのかしら・・・」
「彼氏と彼女の話ならもう別れるし、これからどうするかもユミカと話したよ。ユミカはなんとも思ってないだろうけど、俺は相手の子に悪かったなとは思ってる」
「ユミちゃん、なんとも思ってないのね・・・」
母さんが苦笑いをした。
「思うわけないよ。ユミカは『変じゃなくなるために彼氏』って考えただけだから。彼氏がいなくても『変』じゃないやり方があるならいらないんだよ」
「ユタカ君に聞いたんだけど、ユミちゃんの話してた友達も違う友達よね?」
う〜ん。説明が難しいな。
「母さんの考えてる友達が、ユミカの『友達』かって言われたら違うと思う。ユタくんに『友達って何?』って聞いて、『名前呼ばれて嫌じゃなければ友達じゃないか?』そう教えてもらったって俺は聞いてる」
「あなたそれお母さんに言ってないじゃない・・・」
え、そうだっけ?
「それに、ユミちゃんに彼氏ができたって最初に聞いたのタカでしょ?ユタカ君とかお母さんには言ってくれても良かったんじゃないの?」
「ユミカに『内緒よ!』って言われたから。それに母さんたちに言う必要もないと思った」
「それよ。お母さん達がなにより驚いたのが、あなた達がそれぞれ『恋人』を作って、普通に生活してたことにびっくりしたのよ」
「それはごめん。ユミカはともかく、俺も『彼氏彼女』が『恋人』とは考えなかったんだよ」
母さんが目を丸くした。
「タカ・・・あなた姉兄のいる末っ子でうまく立ち回るし、昔は甘えることもあったけど、ある程度の歳からしっかりしてきて同年代の子と比べると賢くて達観してて、たまに子供らしくないわぁって思ってたけど・・・ちゃんと子供だったのねぇ」
うるさいな。子供だよ。笑うな。
「そういうところが、ユミちゃんの刺激になればって思っちゃったのよね。タカに影響されて、少しずつで良いからユミちゃんが『自分』を形作っていけたらって」
「・・・失敗したって思ってる?」
「失敗・・・とは思ってないの。初めの頃にタカと過ごしてるユミちゃんはちゃんと良い方に変わってた。ユタカ君の両親の家でしか『ユミカ』ちゃんでいられなかったユミちゃんが、タカのそばで『ユミカ』ちゃんでいられることは成長だと思ったわ」
あれはカイのおかげだけどね。
「でもね、タカがユミちゃんの『特別』になったときに・・・もっとなにかうまくできたんじゃないかとは思うわ」
「は?」
「タカが『特別』になるまでは、ユミちゃんの『特別』って『家族』だったんだと思うのよね。家が複雑すぎて家族がわからなくなって家族じゃないけど『特別』をつくることでそれ以外には心を閉ざしちゃったの」
「あぁ、うん」
「ユタカ君に聞いた昔のユミちゃんは機械か人形だったらしいわ。自分で『特別』を作ることでなんとか心を守ったのね」
松崎の家は本当の家族だけど『家族』じゃない。
おじさんおばさん姉ちゃんたちは『家族』だと思ってたのに『家族』じゃなかった。
ユミカの中に『ユミカの家族』はいない。
欲しいものを聞いたときにユミカが答えた言葉を思い出した。
『私だけの家族』
心臓が痛い。今すぐユミカに会いにいきたい。




