12歳--5
「みんなどうしちゃったの?彼氏が好きとか好きじゃないとか難しいよ」
歳をとって歩くのもだいぶのんびりになったカイに付き添って歩きながらユミカが文句を言ってる。
「友達に変って言われないようにしただけだったのに・・・」
立ち止まる。泣きそうなのかな。
「ユミカ、ほらハグ。みんな怒ってたんじゃないよ、心配してるの」
ユミカが抱きついてくるけど、強い。痛い。
カイも止まってくれてありがとう、座ってて。
「なんで心配するの?私が変だから?気持ち悪い?」
「変じゃないし、気持ち悪くもないよ。ただ、間違えたなとは思ってる」
ユミカも、もちろん俺も間違えた。
「何を間違えちゃったのかなぁ」
ぎゅうぎゅう力込めないで。苦しい。
「友達の言うことをそのままやったことじゃない?」
「どういうこと?」
「彼氏が欲しくないのは変って言うなら『欲しいけどまだいらない』って言えばよかったよね?」
「あ〜」
「俺も『特別な人がいるから他に彼女はいらない』って言えばよかった」
「タダタカには私がいるからね!」
「うん。俺にはユミカだけでいっぱいだもん」
ほんとに。気がつくのが遅かった。バカだなぁ。
ユミカしか見てなかったから、告白されたってわからなかった。
「もし、また『彼氏になりたい』って言われたら『イヤ!』って言えばいいよね!」
イヤ!って・・・
せっかく力弱くなってたのに『イヤ!』で力込めないで。それに告白されて返事が『イヤ!』はひどい。言ってるユミカが想像できて面白いし、ハグが苦しい。
「イヤ!は、やめとこ。『特別な人がいるからごめんなさい』にしときな」
「タダタカだね!」
「そう。それで大丈夫だと思うよ」
「わかったぁ」
不満そうに一回ぎゅうってしてから体を離したユミカに、キスをしてあげる。
「これで頑張れるよ」
「うん。頑張る」
ユミカはへにゃっと笑って座ってるカイを撫でた。
どうしよう。
今までは何も考えずに『俺のユミカ』って言ってたのに。
どこか普通じゃない、どこか壊れてるユミカ。
『好き』がなくて『特別』もなにが『特別』なのかわかってない。
人のことも自分のこともわからないのに『変』が怖いユミカ。
治さずに壊しきったのはきっと俺なのに。
ユミカって呼ばないでって言われたときも。
『俺もユミカって呼びたい!』
初めての夏休みにアッチに行ったときも。
『俺もユミカの特別にして?』
姉ちゃん達が結婚してぐちゃぐちゃになったときも。
『俺のユミカでしょ?』『俺のユミカ』
そして今も。
『特別な人(俺)がいるからごめんなさいって言えばいいよ』
ユミカのパックリと開いた傷口のそばにいるフリをして『俺』を入れられるだけ詰め込んだ。
外側のユミカは治ったように見せかけて。
本当にどうしよう。
自分のやってきたことを今になって自覚して、壊れたまま『俺』だけが詰まったユミカを見て。
『嬉しい』と思ってる。
「ユミカ、帰ろうか」
「うん。みんなに心配させてごめんねって言うよ」
ユミカが帰ったあと、俺は母さんになんて言われるかな。




