11歳--5
冬休みがはじまって、そろそろ俺も中学校の準備とかいろいろしてる。
やっとか〜って思いながら、体が痛い。
この数ヶ月で背が伸びてきてユミカより高くなった。
「背抜かされた!私だって伸びてるのに!」
「ユミカは小さくてもいいじゃん」
珍しく俺のウチに泊まりに来てたユミカが朝からさわいでる。
夏休みが終わってからユミカは今までみたいに泊まりに来なくなった。俺が泊まりに行くのもほとんどない。
母さんが心配してユミカと話したりユタくんと話したりしてたみたいだけど、なにかあったのか、どうにもならないみたいだった。
『タカから見てユミちゃんが変だなって思ったら教えてね』
そうやって母さんに言われたけど、どうしようかなって考えてる。
「ユミカ、松崎どうなの?」
「ん〜?マリカちゃんが、1年早いけど来年から学校の寮でお泊りになって、週末だけ帰ってくることに決まりそう」
「マユミさんは?」
「あの人は・・・」
あ、からっぽの顔になった。
ユミカの気持ちのぐちゃぐちゃは治ったけど、そのあとからときどき俺の前でだけ『からっぽ』になる。
なんにもないみたいな、ユミカがここにいないみたいな、そんなからっぽ。
「ユミカ、ユミカ、手だして。ハグする」
「うん・・・」
のろのろ手を上げるユミカの腕をつかんで、俺の背中に回させる。
俺はユミカの背中に手を回してぎゅーってする。
「俺のユミカ、大丈夫だよ。ユミカのタダタカがいるよ」
ぎゅううううって力を込める。
「ぐえっ!くるしい!」
背中をバシバシ叩かれる。
暴れてるユミカの前髪が鼻をこしょこしょして、くしゃみ出そう。
「はーい、おわり」
「苦しいし痛いよ!馬鹿力!」
「俺はユミカになにしても許されるから平気」
「そうだけど、ひどい!」
ぷんぷん!って怒ってるユミカを見ながらまた考える。
母さんの言う『変』はこの『からっぽ』のことかもしれないって。
でも、からっぽでも俺のことだけはわかるし俺はからっぽのユミカも俺のユミカだと思ってるから、変だと思ってない。
それにからっぽになるようになってから、イイコの笑顔がうまくなった。
松崎でも嫌な思いすることが減ったって言ってたし、ユタくんも『ちょうど大人になるタイミングだったのかな?』そう言って納得してたし。
ちゃんと限界になると俺に『タダタカ、ハグして。もうイヤ。みんなイヤ』って言えるしハグすれば元気になる。
ナオも『ユミちゃん明るくなったな。学校でいつも友達と笑ってるよ』そう教えてくれた。
「ユミカぁ、朝ごはん何食べる?」
「パンがいいな!りんごのパンと、チョコのパン半分こして食べよ?」
「いいよ、じゃあ俺コーヒーいれるね。ユミカは甘いの飲む?」
「うん!」
いつもと同じ朝のユミカだ、なにも『変』じゃない。
いつだって『俺のユミカ』だ。
やっぱり早く中学生になりたいな。




