11歳--4
ユミカの気持ちがぐちゃぐちゃなのが治るのはそんなに何日もかからなかった。母さんに『ありがとう』って言われたけど、ユミカのことを俺がやるのは当たり前でしょ?って不思議だった。
でもアッチの家に行きたがらないのはそのままで、ときどきおじさんおばさんに電話するくらいに変わった。
変わったのは、ユミカだけじゃなくて俺もで。
俺は父さんやナオと違って、背も高いほうじゃなくて太ってるほう。
それをからかわれたことも無かったし、学校が新しくなっても前の学校の時より友達できたくらいだから、気にもしてなかった。
『男の子はそのうち背が伸びて痩せるから』
家族や周りの大人に言われても『ふ〜ん』で終わっちゃうほど何も思わなかった。
夏休みが終わるころからなんか体があちこちちょっと痛くて『へんだな〜』とは思ってたけど、それも気にしてなかった。
「タダタカちょっと背伸びた?」
夏休みが終わって、また休みの日だけになったカイの散歩でユミカと歩いてたらそう言われた。
「え、ほんと?」
「うん。私とほとんど変わらなかったのに、今はタダタカの方がちょっと大きい気がする!」
向かい合わせになってみる。
わかんない。変わんないよ。
また並んで歩く。
「う〜ん?」
「ユタくんも『タカは背伸びるだろうな』って言ってたよ!成長期だね。体痛い?」
「たまに痛い時ある。ユミカは?」
「私は痛い時はないけど、ちょっとずつ伸びてるみたい!」
「ユミカも一緒に伸びてたらわかんないじゃん!」
「あはは!ほんとだ!でもね、私も背が高くなりたいの」
「なんで?今までそんなこと言わなかったじゃん」
背の高さの話なんかしたことなかったよね?
「友達がね、みんな私より背が高くて大人っぽいから私もそうなりたいなって」
「ともだち?」
「うん。ユタくんに友達ってなんだろ?って聞いたら『ユミとかユミちゃんって呼ばれて嫌じゃない子は友達じゃないか?』って言われたから、何人かは友達なんだ〜って思った!」
「女の子だけ?」
「うん!男の子には呼ばれてもすごいイヤだから友達じゃないし『松崎って呼んで』って言ってる!それでもやめてくれない子は本当にイヤ!話すのもイヤ!近寄ってこないで!って思う」
ものすごくイヤそうな顔で怒ってるユミカの顔を見て安心した。
「ユミカ?」
「ん?なぁに」
ユミカがさっきの怒った顔からくしゃって笑ってこっちを向く。
「背、伸びると良いね」
「え!?無理だって思ってない?」
「絶対俺のほうが伸びるけど」
「も〜!」
この顔を知ってるのは俺だけ。




