11歳--夏休み
この年からユミカは夏休みにおじさんおばさんのところへは泊まりに行かなくなった。
エリ姉ちゃんとミユ姉ちゃんが続けて結婚して、姉ちゃんたちの旦那さんが住み始めたから。
姉ちゃんたちの旦那さんはおじさんおばさんの会社関係の人だから、ユミカのことも知ってるしそのまま住むことにしたんだって。
おじさんおばさんも、姉ちゃんたちも旦那さんたちも『気にせず泊まりにおいで』って電話してたらしいし、俺の家にも『ユミカを連れて泊まりに来て』って電話が来たんだけど、俺がどんなに話してもユミカは『行く』とは言わなかった。
『行かないよぉ』『もう中学生だしね』『部活あるし』『行かない』
それでも俺の家には泊まりに来た。
ただそれまでは姉貴の部屋と母さんの部屋で順番に泊まってたのが、母さんの部屋だけになった。
ときどき朝起きてこない日があって、その日は母さんに『そろそろ行って起こしてきてあげて』って言われてから母さんの部屋に行くと、ユミカが布団に座ってる。
「ユミカおはよう。ハグして」
「ユミカ・・・ハグ・・・」
「俺のユミカでしょ?ほらハグ」
「うん・・・」
寝起きは悪くないはずのユミカが、寝ぼけたみたいにソロソロ手を出してくるからぎゅーってハグして起こしてあげる。
「ほーら、ユミカ。俺のユミカ。起きてよ」
最初は俺の背中にくっついてるだけのユミカの手にだんだん力が入ってくると、大丈夫。
「おはようタダタカ。寝ぼけちゃった、起こしてくれてありがと」
「いいよ。母さんがご飯食べちゃえって」
ユミカが着替えるから俺だけ部屋から出る。
ほんとは母さんには『ユミカ』と『ハグ』だけで起こしてって言われてるんだ。
今のユミカは気持ちがぐちゃぐちゃになってるから、落ち着くまではいつも俺が言う『俺のユミカ』は言っちゃダメって。
でもほんとのことだから気にしないで言っちゃう。
そのほうが早く起きるしね。
「お待たせ!早くご飯食べちゃうからね!」
ほら。くしゃって笑う、いつもの俺のユミカだ。




