第32話「港の診療所」
港町リヴァリアの裏通りは、表通りとはまるで空気が違っていた。
中央の円形闘技場へ続く大通りでは、『ギア・コンチェルト』の開催を明日に控え、屋台や見物客の声が絶えなかった。
蒸気笛。
呼び込み。
海鳥の鳴き声。
荷揚げ機の軋む音。
街全体が祭りの前日のように浮き立っている。
けれど、少し道を外れると、その喧騒は急に遠くなる。
狭い石畳の路地。
潮風に晒されて色褪せた看板。
壁際に積まれた木箱。
古びた水路から漂う湿った匂い。
そこに、目的の診療所はあった。
白い漆喰の壁に、青い薬瓶の絵が描かれた小さな看板が掛かっている。
――レピオス診療所。
ミリアが看板を見上げる。
「ここだね」
「うん」
ノアは頷き、扉を軽く叩いた。
返事はない。
もう一度叩く。
すると中から、何かが崩れるような音がした。
「うわっと……ああ、はいはい、開いてるよー。生きてる人も、死にかけの人も、順番にどうぞー」
中から軽い声が聞こえた。
ミリアがノアを見る。
「……お医者さんだよね?」
「たぶん……」
少し不安になりながら扉を開ける。
中は、意外なほど明るかった。
窓辺には干した薬草の束が吊るされ、棚には薬瓶や包帯、古い医学書がびっしりと並んでいる。
床には数冊の本と紙束が散らばっていたが、診療台と器具棚だけはきちんと磨かれていた。
その奥で、白衣の男が本の山から顔を出した。
細身で背が高く、癖のある薄茶の髪を後ろで適当にまとめている。
鼻には細い縁の眼鏡。
目はいつも笑っているように細く、表情だけ見れば気の抜けた学者のようだった。
男はノアたちを見ると、ひらひらと手を振った。
「やあやあ、旅人さん。怪我かな? 病気かな? それとも人生相談? 恋の悩みなら専門外だけど、聞くだけなら安くしておくよ」
「えっと……」
ノアが言葉に詰まる。
ミリアが小声で囁いた。
「ノア、この人ちょっと怪しい」
男はにこにこと笑う。
「聞こえてるよ、お嬢さん。安心してくれ。決して怪しい医者じゃない」
「ほんとに?」
「とても腕のいい、怪しい医者だ」
「もっと怪しくなった!」
ミリアが思わず突っ込む。
男は満足そうに頷いた。
「いい反応だねえ。港町では元気な子ほど長生きするよ。たぶん」
「たぶんって言った!」
ノアは苦笑しながら、一歩前へ出た。
「あなたがレピオス先生ですか?」
「いかにも。僕がレピオス。この港で、怪我人と病人と無茶をした若者の後始末をしている者だよ」
レピオスはそう言って、ノアたちを順に見た。
そして、ミリアの首元で淡く光る携帯導光端末に視線を留める。
端末の上では、手のひらほどのルナが静かに立っていた。
レピオスの細い目が、ほんのわずかに開く。
「……へえ」
その声だけ、少し色が変わった。
ルナが丁寧に一礼する。
『初めまして。ルナと申します』
「おぉ喋った」
レピオスは眼鏡の奥で目を細める。
「いやあ、これは珍しい。光の妖精かな? それとも、もっと面倒くさい類の古代端末かな?」
『妖精ではありません。中央補助人格端末です』
「うん、面倒くさい方だった」
『ご認識に誤りがあります。私は『面倒くさい方』ではありません』
「それを自分で言える端末はだいたい面倒くさいんだよ」
ミリアが小さく笑う。
ルナは少しだけ首を傾げた。
ノアは咳払いをして話を戻す。
「レピオス先生。僕たちは、ある場所を探してこの街へ来ました」
「ある場所」
「王国第四避難施設、という名前に心当たりはありませんか?」
その瞬間。
レピオスの笑みが、ほんの一瞬だけ止まった。
本当に一瞬だった。
すぐにまた、いつもの細い目の笑顔に戻る。
「王国第四避難施設ねえ」
彼は白衣の袖をまくりながら、机の上に腰をかけた。
「いやあ、物々しい名前だ。いかにも古い遺跡っぽい。旅人さんはそういうのが好きなのかな?」
「心当たりは?」
「うーん、知らないなあ」
軽い声。
だがノアには、なぜかそれが完全な答えには聞こえなかった。
ルナも同じように感じたのか、静かに言う。
『発言時の間隔と視線反応から、情報を保留している可能性があります』
レピオスがルナを見た。
「おやおや。ずいぶん遠慮のない端末さんだ」
『解析の結果です』
「医者としては、そういう子は嫌いじゃないよ。患者の嘘も見抜いてくれそうだ」
ミリアがじっとレピオスを見る。
「先生、ほんとは何か知ってる?」
「知らないよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「目、笑ってるのに笑ってないよ」
レピオスは口元に手を当てた。
「これは困った。お嬢さんまで観察眼が鋭い」
ノアはまっすぐに尋ねた。
「もし危険な場所なら、それも含めて知りたいんです。僕たちには、そこへ行く理由があります」
レピオスはノアを見た。
軽い笑みは浮かべたままだが、その奥の目は少しだけ鋭い。
「理由ねえ」
彼はしばらく黙った。
窓の外から、遠く闘技場の歓声が聞こえてくる。
やがてレピオスは、肩をすくめた。
「残念だけど、王国第四避難施設については本当に知らない。少なくとも、その名前ではね」
「その名前では……?」
「古い名前というのは、時代が変わるとよく迷子になる。施設も、地名も、人の記憶もね」
ノアが身を乗り出す。
「じゃあ、似たような場所は?」
「さあて」
レピオスは机から下り、棚の薬瓶を整え始めた。
「僕は医者だ。遺跡案内人じゃない。古い場所に首を突っ込んで帰ってこなかった連中なら、何人か診たことはあるけどね」
その言葉に、空気が少し沈む。
レピオスは、すぐに軽い調子へ戻した。
「まあ、若者が危ない場所へ行きたがるのはいつの時代も同じだ。僕の仕事は、その後で包帯を巻くこと。できれば巻かずに済ませたいけど」
「……教えられない、ということですか?」
ノアが尋ねる。
レピオスは笑顔のまま答えなかった。
ただ、細い目のままノアを見ている。
その時だった。
診療所の扉が遠慮がちに開いた。
「先生……」
丁寧に扉を閉めて入ってきたのは、小さな女の子だった。
年は十歳前後だろうか。
薄い栗色の髪を二つに結び、息を切らしている。
「やあ。今日もお見舞いかい?」
「うん……」
レピオスの知り合いのようだった。
誰か入院している患者の家族だろうか。
少女はノアたちに気づくと、一瞬だけ驚いた顔をして一礼した。
礼儀正しい子のようだった。
だがすぐに、ミリアの首元で光る携帯導光端末へ目を奪われる。
「……それ」
惚けたように少女が呟く。
「それ、すごく綺麗……」
「え?」
ミリアが端末を押さえる。
少女は突然、真剣な顔になって一歩近づいた。
「お願いします……! その手鏡を譲ってもらえませんか……!?」
「ええっ!?」
ミリアが慌てる。
ルナが端末の上で静かに言う。
『譲渡は推奨しません』
「私も推奨しないよ!」
ミリアが端末を両手で抱える。
少女は必死だった。
「お願いします! それを売ればきっとお薬が買えるの! お金は、いつか働いてお返ししますから……!」
その言葉に、レピオスの表情が変わった。
「シーニャ」
軽い声ではなかった。
医者の声だった。
少女――シーニャは、びくりと肩を震わせる。
「先生……」
「いきなり物をねだるのもダメだし、それを売るなんてもってのほかだよ。まず深呼吸」
「でも!」
「深呼吸」
シーニャは唇を噛み、言われた通り息を吸った。
その時、また扉が開いた。
今度は少年が飛び込んでくる。
「シーニャ! やっぱりここにいた!」
まだ幼い。
少女とほぼ同じくらいの年齢の少年だった。
短い黒髪に、日に焼けた肌。
膝や肘には小さな擦り傷があり、港町の子どもらしい元気さが全身から溢れている。
少年はシーニャの前に立つと、両手を広げた。
「人の物を勝手に売っちゃだめだろ!」
「だってハルト、セーラお姉ちゃんが……!」
「だからって、泥棒みたいなことしたらセーラ姉ちゃん怒る!」
「盗もうとしたわけじゃないもん! お願いしただけだもん!」
「お願いでもだめなもんはだめ!」
少年――ハルトは、そこでようやくノアたちに気づいた。
「あっ」
彼は少し気まずそうに頭を下げる。
「ご、ごめん。にいちゃんたち、びっくりした?」
「うん、少し」
ノアが苦笑する。
ミリアはハルトの勢いに少し目を丸くしていた。
「君、元気だね」
「うん! おれ、ハルト!」
少年は胸を張った。
「こっちはシーニャ。で、セーラ姉ちゃんが病気なんだ」
シーニャが小さく頷く。
さっきまでの勢いが嘘のように、今は泣き出しそうな顔をしている。
病気、という言葉にノアは真剣な顔になる。
「レピオス先生、病気というのは?」
レピオスは少しだけ沈黙した後、棚から一枚の布を取った。
「見た方が早いかな。こっちだよ」
診療所の奥には、小さな病室があった。
清潔な白い布のかかった寝台。
窓辺に置かれた水差し。
薬草の香り。
その寝台に、一人の少女が横たわっていた。
十代半ばほどだろうか。
穏やかな顔立ちの少女だったが、頬はひどく青白い。
額には汗が浮かび、呼吸は荒い。
手首から覗く皮膚には、黒い斑点が浮かんでいた。
その黒ずみは、ただの痣ではない。
まるで皮膚の奥から墨が滲み出しているようだった。
ミリアが息を呑む。
「……セーラお姉ちゃん……?」
シーニャが寝台のそばへ駆け寄る。
「セーラ姉ちゃん……」
ハルトも拳を握りしめる。
さっきまで元気いっぱいだった顔が、今は必死に泣くのを堪えているように見えた。
レピオスは寝台の横に立ち、セーラの脈を診た。
いつもの軽い調子は消えていた。
「民間では『黒熱病』と呼ばれている病気でね」
彼は静かに言う。
「正式には『粒子汚染病』。旧文明時代の汚染地や禁足地に残った有害な粒子を体内に取り込むことで発症する病だ」
ルナの表情がわずかに曇る。
「粒子汚染病……」
レピオスは頷く。
「高熱、呼吸困難、皮膚の黒化、黒い斑点、ひび割れ。セーラの症状は、その中でも黒化が強い“黒蝕型”と呼ばれるものに近い」
「治せるんですか?」
ノアが尋ねる。
レピオスは答えるまでに少し時間を置いた。
「『浄化石』を用いた浄化薬があれば、助かる可能性はある」
「じゃあ、それを――」
「高い」
レピオスが遮る。
「とてもね。港町の子どもたちはもちろん、大人だってそう簡単に手が出せるものじゃない」
眼鏡の位置を直しながら、レピオスが続ける。
「親類に金のあてがあるわけでもないし、僕が手配できるならしてやってるところだが、見ての通りうちもあまり儲かってる医者ではなくてね」
シーニャが俯く。
「だから、何か売れそうなものを探してて……」
ミリアは携帯導光端末を抱いたまま、何も言えなかった。
責める気にはなれなかった。
シーニャは、自分のために欲しがったわけではない。
セーラを助けたかっただけだ。
ノアはセーラの黒ずんだ手を見つめる。
「どうして禁足地なんかに……?」
ノアの質問に、ハルトが悔しそうに言った。
「『月蜜果』を採りに行ったんだ」
「月蜜果?」
ミリアが聞き返す。
「うん。すっごく甘い果物。めったに採れないんだ。小さい子たちが食べたいって言ってて……セーラ姉ちゃん、みんなを喜ばせようとして……」
シーニャが続ける。
「セーラお姉ちゃんも禁足地に入るつもりなんてなかったの。嵐のあとで、境界の標識が倒れてて……気づかなかったんだって……」
言葉の終わりは、震えていた。
セーラは、ただ子どもたちを喜ばせたかっただけ。
その結果が、これだった。
ミリアが唇を噛む。
「そんなの……」
ノアも胸が詰まった。
ミリアははっと気づいたようにルナに尋ねるが。
「ねぇルナ。王都の設備とか使って、治してあげられないのかな」
『残念ですが、王都の医療区画はまだ再起動していません』
ノアが顔を上げる。
ルナは続ける。
『また、仮に王都へ搬送するとしても、砂海の移動に耐えられる状態ではないと思われます』
レピオスがルナを見る。
「よく分かってるね」
『現時点で最も現実的な治療法は、リヴァリアで浄化薬を入手し、レピオス様の処置を受けることです』
「様はいらないよ。先生でいい」
『了解しました、レピオス先生』
レピオスは少しだけ笑った。
だが、その笑みには疲れが滲んでいた。
「その通りだ。ここで薬を手に入れて、ここで処置する。それが一番早い」
「薬代は、どれくらい必要なんですか?」
ノアが尋ねる。
レピオスは金額を告げた。
ミリアが目を丸くする。
「高っ……!」
ハルトが拳を握った。
「だから、おれが『ギア・コンチェルト』に出るんだ!」
全員の視線がハルトへ集まる。
ハルトは胸を張った。
「明日の大会、優勝したら賞金が出る! それで薬を買う!」
「ハルト」
レピオスの声が低くなる。
「ギア・ノードの操縦は遊びじゃない」
「分かってる!」
「分かってない」
レピオスは珍しく、はっきりと言った。
「君は整備場でギアに触ったことはある。簡単な動かし方も知っている。でも闘技場で戦うのは別だ。腕を挟まれれば骨が砕ける。蒸気圧を読み違えれば操縦席ごと潰れる。大人でも怪我をする」
「でも!」
ハルトの目には涙が浮かんでいた。
「セーラ姉ちゃんが死んじゃうかもしれないんだぞ!」
病室が静まり返る。
ハルトは泣きたくないのを必死に堪えていた。
「おれ、何もしないで待ってるなんて嫌だ。セーラ姉ちゃん、いつもおれたちのこと助けてくれたんだ。だから今度は、おれが助けるんだ!」
ミリアが小さく息を吸った。
ノアはハルトを見つめる。
小さな身体。
震える拳。
それでも折れない目。
その姿に、自分を重ねたわけではない。
けれど、胸の奥が動いた。
誰かを助けたい。
何かをしたい。
その気持ちは、痛いほど分かった。
ノアは静かに言った。
「ハルト」
「な、なんだよ、にいちゃん」
「君がセーラを助けたい気持ちは分かる」
ハルトはノアを睨むように見た。
けれど、その目は子どもの必死さそのものだった。
「でも、君が怪我をしたら、セーラはきっと悲しむ」
「……っ」
「だから――僕が出る」
ハルトが瞬きをした。
「え?」
ミリアもノアを見る。
ルナが即座に反応する。
『ノア。ギア・ノードの操縦系はアーク・ギガントとは大きく異なります。神経同期補助は存在せず、蒸気圧、操縦桿、ペダル、手動レバーによる機械制御です。危険です』
「うん、分かってる」
『いいえ、現時点では十分に理解しているとは言えません』
ルナの声は静かだが、はっきりとしていた。
『あなたはアーク・ギガントの支援を受けて戦闘を行っています。ギア・ノードは反応速度も出力制御もまったく異なります。安易な参加は推奨できません』
「それでも」
ノアはセーラを見た。
苦しげに眠る少女。
そのそばで泣きそうなシーニャ。
拳を握るハルト。
「このまま放っておけない」
ルナは黙った。
ミリアがノアの横に立つ。
「私は、ノアがそう言うと思ってた」
「ミリア……」
「危ないのは分かる。でも、ハルトが出るよりはずっといい。それに、困ってる子どもを見て放っておけるノアじゃないでしょ」
ノアは小さく笑った。
「……うん」
ハルトが慌ててノアの袖を掴む。
「にいちゃん、本気か!?」
「本気だよ」
「ギア、乗ったことあるのか?」
「ないよ」
「えええええ!?」
ハルトが大声を上げた。
「ギアの操作って大変なんだぞ! 右のレバーで腕! 左で角度! 足はペダル! 蒸気圧が落ちたら動きが遅れるし、腕だけ振ったら転ぶ! 腰から動かすんだぞ! あとギアはびっくりするくらい重い!」
ノアは圧倒される。
「詳しいね……」
「おれ、毎日整備場に行ってるからな!」
ハルトは胸を張った。
「ギアのことなら、おれが教えてやる!」
そう言ったあと、少しだけ言い直す。
「……じゃなくて、教える! えっと、お願いされたら!」
ノアは笑った。
「お願いするよ、ハルト。僕にギア・ノードのことを教えてほしい」
ハルトの顔がぱっと明るくなる。
「まかせろ、にいちゃん!」
レピオスは大きくため息をついた。
「やれやれ。医者の仕事が増える予感しかしない」
ミリアが振り向く。
「止めないんですか?」
「止めたいよ。とても止めたい」
レピオスは肩をすくめる。
「でも、止めても別の誰かが無茶をする。ハルトが出るよりは、そこのお兄さんの方が多少は生存率が高そうだ」
「それ褒めてます?」
「褒めてるとも」
「そうですか……」
レピオスは眼鏡を直し、ノアを見た。
「ただし、怪我をしたらすぐここへ来ること。隠して悪化させたら、治療費を三倍にする」
「三倍……」
「冗談だよ」
少し間を置いて、レピオスは真顔で言った。
「半分くらいはね」
ミリアが顔を引きつらせる。
ルナが静かに言う。
『冗談と本気の境界が不明瞭です』
「医者には必要な技術だよ、ルナ君」
レピオスは軽く笑った。
病室に、ほんの少しだけ空気が戻る。
シーニャがミリアのそばへ来て、小さく頭を下げた。
「さっきは、ごめんなさい。手鏡、売ってなんて言って……」
ミリアはしゃがみ、シーニャと目線を合わせた。
「いいよ。セーラを助けたかったんだよね」
「うん……」
「じゃあ、一緒に助けよう」
シーニャの目に涙が浮かぶ。
「うん……!」
ハルトは拳を握りしめ、ノアを見上げた。
「にいちゃん、絶対勝とうな!」
ノアは少しだけ考えた。
勝つ。
もちろん、そのつもりで出る。
けれど、ギア・ノードという未知の機械。
明日の大会。
経験者たち。
そして、ハルトたちの願い。
軽く頷けるものではなかった。
それでも、ノアは言った。
「できる限り、やってみる」
ハルトは一瞬きょとんとしたあと、にっと笑った。
「うん! それでいい!」
ミリアが笑う。
「いいの?」
「セーラ姉ちゃんが言ってた。できる限りやるやつは、だいたい最後まで逃げないって!」
その言葉に、ノアは胸の奥が温かくなるのを感じた。
レピオスが病室の扉を開ける。
「さあ、作戦会議は外でやろう。患者は休ませる。ハルトは騒ぐなら診療所の外。ミリア君も、走らない。ノア君は無茶をする前に深呼吸。ルナ君は……まあ、そのままで」
ルナが小さく頷く。
『了解しました』
ミリアが笑いながら言った。
「先生、やっぱりちょっと怪しいけど、いい人ですね」
診療所の外では、遠く円形闘技場の歓声がまた大きく響いていた。
明日、ノアはギア・ノードに乗る。
アーク・ギガントではない。
防衛機兵でも統治機兵でもない。
現代の人々が作り上げた、人型重機。
その操縦席に座り、セーラを救うために戦う。
ノアはまだ知らない。
この戦いによって、自分が突きつけられる事実を。
アーク・ギガントの力ではなく。
自分自身の力で機械を動かすことの難しさを。
そして、自分がまだどれほど未熟であるかを。
――第33話へ続く
※おことわり
本作品は、設定の整理や本文草稿の作成補助・推敲に生成AI(ChatGPT等)を使用しています。使用用途・範囲の詳細については、作品概要ページをご確認ください。




