私の親友。
「え~! やだ、うそ! 夢で会えた! 嬉しくて泣きそう」
茶色のフワフワした髪の女性が、感極まって泣きそうになっているのを、ふくよかな身体付きの女性が慰めている。
「泣かないでよ。むしろ笑って近況聞かせてよ?」
「近況って、こっちはずっと働き通しだよ~! 学園時代と違って、魔法省の薬剤部ってめちゃくちゃ忙しいんだから」
「ああ、やっぱカタリナ大変そうだね。私たち、なかなか休み合わなかったもんね」
「そうだよ! どうにか休み合わせて、遊びに行こうって言ってたのに! 先に逝くなんて薄情者!」
フワフワした髪の女性――カタリナは、もう一方の女性――ネモの身体をぽかぽかと叩く。
「はは、逝ってはないんだけど……でも、こうして会えてよかった」
「本当だよ! ――それより、私の中のネモはずっと痩身だったんだけど、なんでこの夢の中じゃ、こんなにふっくらしてるんだろ?」
カタリナは不思議そうに首を傾げ、目の前のネモの身体をあちこち突付く。
突付かれたネモは「くすぐったい」とぽちゃぽちゃとした身体を捩らせた。
「単純にめちゃくちゃ太っただけなんだけどね……。いま、自分史上最高にデブってる自覚あるよ……
学園時代の制服も、軍服も、今着たらきっとパツンパツン……寧ろ入らないんだろうな……」
「え、ネモって太れない体質だと思ってた! もしかして……
妊娠!?」
どこか確信めいたカタリナの言葉に、ネモは恥ずかしそうにして小さな頷きを返す。
「……って言っても、まだ初期だから、太った言い訳にはならないんだけどね」
その言葉を聞いて、カタリナには頬をぽりぽりと掻く親友の太った姿が、なんとも尊く見えた。
「おめでとう! それで相手は――エンデ先輩、で、あってる?」
恐る恐る問いかけると、ネモは再度小さな頷きを返した。
「うん⋯⋯そう」
丸くなった顔をくしゃりとさせ、緩く微笑む姿はなんとも幸せそうで。
「よ、よかった~……!!!」
カタリナの目から、とうとう涙が出た。
「なんだよ~幸せ太りじゃんー! あぁ、もうっ」
「はは、結局泣いてる。うん、今幸せなんだ。だから、安心して」
カタリナは目から次々と涙を出しながらも、ネモに向けて笑いかける。
「うん⋯⋯幸せそうで、安心した。ずっと一緒にいた中で、今のネモが一番キレイだよ」
「ふふ、お世辞でも、嬉しいよ。――元気でね、カタリナ。会えなくても、私たちずっと、親友だよ」
◇
「――大丈夫? 泣いているの?」
「え」
どうやら、泣きながら寝ていたらしい。
ベッドで隣に寝ていた彼が心配そうに顔を覗き込む。
「怖い夢でも見た?」
「ううん、逆。懐かしい夢を見て――違うな、懐かしいんじゃなくて、もう会えない親友の"今"を見たの」
目が覚めた今でもはっきりと記憶に残ってる。
自分の古い記憶には無いふっくらした彼女が――もう永遠に会えないと思っていた彼女が、幸せそうにして自分に会いに来てくれたことを。
「これは、嬉し涙なの」
たとえ、二度と会えなくても。
(私たち、ずっと、親友だよ)
あなたが穏やかに過ごして幸せを感じているなら、私はそれでいい。
それでいいけど、子供が生まれたら、また顔を見せに現れてくれないかな――
そう心の中で期待しながら、涙を拭った。
(おわり)




