エピローグ
目が覚めたとき、ああ、またこの世に生を受けたのかと、本能で悟った。
私が生まれ落ちた場所は、まるで戦場のような騒然たる惨状になっていた。
人間が作った乗り物が道の端にひっくり返っていて、血まみれになって動かない人間が道に散らばっている。
この乗り物の爆発で、私が生まれたのかと最初は思った。
けれど……倒れている人間の中で、一人だけ――うっすらと炎のような瞳を開けて、魔力の渦をくすぶらせている子供がいた。
ああ――この子が、私を復活させてくれたのか。
その小さな子供は、煙に巻かれながらも浅く息をして必死に生にしがみついている。
いいわ、私が助ける。
あなたは私の生みの親。
そして私はあなたの家族。
<私と家族になってくれる?>
『家族は、まだいる。だから、大丈夫』
彼は意識を朦朧させながらもはっきりと答えた。
見る限り、彼の家族と思われる四人はすでに息をしていない。
けれども、彼はまだ信じていた。自分の家族がまだこの世にいるということを。
<わかった。私は待つわ。いつかあなたと家族になれる日まで>
私にとっては一瞬、けれど、人間にとっての月日が流れていく。
次に目が覚めたとき、私はあのときよりも酷い人間たちの争った場所にいた。
彼はその場に一人佇んでいた。少年が青年になっていて、人間の成長はほんとうにあっという間だとしみじみ感じる。
そんな彼は、あのときと違って傷はないのに、あのときよりも心は死んでいるように見えた。
<また、あなたのおかげで私は復活できた。今度こそ、家族にならない?>
『……』
返事は、いくら待っても来なかった。
まだ今は時間が必要――
<わかった。今回も待ってあげる。けれど、次こそ家族になりましょう。
あなたの炎は――誰よりも繊細、それでいて、とても心地いいの>
また次に私が復活したとき。
彼の方から声をかけてきた。
『契約を――。どうか、支えになって欲しい』
いまにも泣き出しそうで壊れそうに懇願する彼は、まるで小さな雛鳥。
<もちろんよ。私はあなたの家族よ、私のかわいい坊や――>
常に怒りを含んだ炎を撒き散らす彼も、嫌いじゃない。
けれど、いつか、優しい炎を分けてくれると心のどこかで願っていた。
そうして、いつの頃からか、彼の番の様子を見に何度も空を舞った。
私は坊やが壊れていく様子も、その裏で坊やのために成長していく彼女の様子も……ずっと見守ってきたのだ。
その二人が、ようやく一緒の時を過ごしている。
今は優しい炎に包まれ、この穏やかな時間を家族として過ごしているのだから、見守ってきた側としては感慨深い。
彼らが学校で子供たちに魔法を教え、ときに彼らの子供が元気に外を駆け回っている様子を空から眺める。
「フェン~! ごめん、この子らと遊んでやってー!」
名前を呼ぶ声が聞こえ、返事をするように炎を燃やす。
――もう間もなく、私はまた深い眠りにつく。
けれども、この二人にはまだまだ優しい炎を灯していて欲しい。
そう、願ってやまなかった。
(おわり)
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需要あるか不明ですが、来週末に後日談追加予定です。こちらもお読み頂けると幸いです。




