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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
終章

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90/97

90.あなたがいるなら、喜んで。

残り3話。夜20時頃にもう1話更新します。

「最近のフィリアスは本当に目を見張るものがあるよな」

「恐れ入ります! 今なら、誰にも傷つけられない自信があります!」

「ははっ頼もしい!」


キリク班長に防御力を褒められて、素直に喜びを表現する。

ここのところ、さらに周りから言い知れない気配を感じるため、常に警戒を解くことができない。

おかげで、結界の重ね掛けや魔力維持についてはキリク班長から褒められるくらい、随分と腕が上がったように思う。




「……今日もいない、か」


あるのは真っ黒な夜空だけ。

今日は雲が出ているので、星の一つすら見えない。


<もう来ない>


「そんなこと言わないでよ……」


クロにばっさりと言われてしまい、肩を落とす。

彼と再会して以来、毎晩のように夜空を見上げるのが日課になっていた。

きっと……彼は来てくれる。炎の鳥を従えて――どんな事情であれ、私のもとに。


と、そこでクロがふんふんと鼻を鳴らしだした。


<――懐かしい匂いがする>


「え? 何? 誰か夜食でも食べてるのかな」


<違う、これは……>


その瞬間、びゅっと突風が吹き荒れた。


「きゃっ!?」


隙間を空けていた窓がガタガタと大きく揺れ始める。

目を開けられないほどの突風が部屋にまで吹き荒れ、咄嗟に窓枠の下にしゃがみ込んだ。


「なに!? 竜巻!?」


目を瞑ってクロに掴まって身体を伏せていると、しばらくしてやっと風が収まった。


「何だったの、今の……」


辺りを警戒するように伏せていた身体を起こすと、すぐ後ろに人の気配を感じ、咄嗟に振り向く。


その瞬間。



「ネモ」



真っ黒なローブが、

視界いっぱいに広がった。


まさか、と見上げた先に――

会いたくてしょうがなかった顔が、私のことを見下ろしていた。


「……?」


(……これは、夢? それとも――)


パサリと取ったフードの下から、真っ白な髪が現れる。

それでもまだ、目の前の光景が信じられない。


彼の存在が本物かどうか確かめたくて、ゆっくりと前に手を伸ばすと、目の前の人物は私に視線を合わせるようにしてその場へ静かにしゃがみ込んだ。


眼鏡の奥で炎のような瞳が揺れ、私の姿を映し出す。


「遅くなってごめん」


恐る恐る頬に触れると、確かに温かい。


「――やっと、迎えに来れた」


彼から出た言葉は、全くつっかえることなく、以前のような彼の話ぶりで……

彼の頬から手を退け、おずおずと身体を寄せた。


それから、


一気に掻き抱いた。


「ダリオ、さん……っ!」


(会いに来てくれた――!)


相変わらず細くて骨ばっていたけど、それでも、彼がここにいる。


どこか現実味の無い感覚から、胸の奥がじわり、じわりと熱を帯びていく。


彼も私の背に手を回し、初めは緩やかに、それからすぐ私のことをこれでもかというくらい強く抱き締めてくれた。


だけど――そうしたのも束の間、彼はそっと身体を離し、私の肩に両手を置いたまま真剣な眼差しを向ける。


「ごめん……実は、あまり時間がないんだ。急に言われて困ると思うけど……。どちらかを選択して欲しい」


彼の言葉に、こくんと一つ頷きを返す。


「一つは、このまま軍に残って今まで通りの生活を過ごすこと」


「二つ目は、俺と一緒に全てを捨てて、ここを去ること」


「……間違いなく、前者の方が、おまえにとっては幸せだと思う。おまえには家族もいるし、シャノンと新しい家庭を築くこともできる。

後者の場合、名前も捨てて――見知らぬ土地にいくことになる。

どっちがいいかなんて、誰に聞いても明らかだ。それでも、俺は……」



ダリオさんは、ほとんど泣きそうな声で囁くようにして告げた。



「ネモと一緒に――、

これから先を生きていきたいんだ」



言葉が耳に入った途端。

胸の奥の熱がドン、と堰を切ったように弾けた。


目の奥が徐々に温度を上げ、頭の中は一瞬にして喜び一色になる。


(私が……一番欲しかった言葉――……!)


これまでずっと、彼に『未来』のことを口にして欲しかった。


そしてそこに自分がいればいいなと、ずっとずーっと……長年、しつこく願ってきたのだ。


(そんなの――選ぶまでもない)


離した身体をもう一度強い力で抱き寄せると、震える声で告げた。


「私も……あなたと一緒に、生きていたい」



もう、探すのも、待つのも嫌。



隣に並んで、一緒にいたい。



私が望むのは、ただ――それだけ。



「これから先も、ずっと、おばあちゃんとおじいちゃんになっても、二人で一緒にいたいんです」


私の一世一代の告白に、ダリオさんは何故か眉根を寄せてくる。


「……ほんとに?」

「疑わないでくださいよ!」

「……」

「クロに誓います!」


その言葉を噛み締めるように、疑わし気だった顔はゆるゆると緩み、彼はそっと眼鏡を外して目元を覆った。


「ダリオさん、大丈夫?」

「うん……いや、嬉しすぎて」

「泣く?」

「泣いてる奴に言われたくない」

「バレましたか」


額を寄せ、互いに涙を掬いながら笑い合う。


<私も入れろ>


「もちろんだよ、クロ。一緒にいこうね」


二人でクロの背を撫で合い、この日、私たちはこの場から姿を消した。



永遠に。



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