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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第九章 再会編

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79.第0部隊とぶつかりました。

遠くの方で、ドンッという何かが爆発したような耳をつんざく音が響いた。

地響きのようなものと同時に、まだ周りに残っていた鳥や魔獣たちが一斉に鳴き声をあげて逃げ去って行く。


「な、なんだ!?」

「何かの魔法が弾けたような……」

「向こう側は合流地点だ。第0部隊がもう動いたのかもしれない」

「そんな協調性のないことします?」

「敵の方から襲撃してきてそれに応じた可能性もある。とにかく、向かうぞ!」


音もすごかったけれど、熱風のようなものもここまで届いており、熱い空気が一帯を襲う。ここでこれほどの影響があるなら、発生源は一体どんな惨状になってるのだろうと寒気立った。


「やけに静かですね……」


爆発音を聞いてから、奇妙なくらいも静かな道を四人で全力で駆け抜けていく。

途中、グリモア先輩の指示でそれぞれの身体に耐炎属性の結界を張り万が一に備えた。

そして、辿り着いた先で、思わず呟きが漏れた。



「なに……これ」



合流ポイントは、少し木々が開けた場所で、小さな湖畔があるのだと聞いていた。


「――焼け野原だな」


グリモア先輩の呟き通り、そこには真っ黒な焼けた地面があるだけ。

湖畔がどこにあったかすらわからない。それほどまで、何もない空間になっていた。

地面はあちこちに煙が燻っており、歩く度にジュワッと音を立てる。

――自分に結界を張ってなければ、靴底は溶けていたかもしれない。


「それに、誰もいない……」


てっきり合流地点で交戦が続いていると思っていた。

だというのに、ここに着いてからも、奇妙なくらいに静かだ。


――と、そこへバサバサと翼をはためかせ、灰色の斑な鳥が私たちの元へと飛んできた。


「伝書鳥だ……」

トロイ先輩が呟く。伝書鳥は近くの小枝に羽根を下ろし、口をパカリと開いた。


『サポート班へ告ぐ。我々第0部隊はおまえたちの到着の遅さにしびれを切らし、ここより東側へ二キロの場所にて、目標と交戦。が、もうすぐ終わる。

遅いおまえらは自分たちに結界でも張って震えとけ。もし少しでも手柄が欲しけりゃ、最後だけ譲ってやってもいい。その場合、十分以内にこっちへ来い』


伝書鳥は「キュイッ」とあかんべをするようにこちらに向かって鳴いたあと、バンッと大きな音とともに派手に弾けて消えた。


「……」

「……」

「……」

「……」


消えた瞬間、全員の気持ちが一つになる。


(これは――ない)


全員の士気が振り切れた。


「お前らーっ!!! 交戦しに行くぞ! 相手へのサポートはいらん!

俺たちで手柄を横取りに行くんだっ!」

「「「おおおおおーっ!!!」」」


グリモア先輩の怒号に、みんな手を振り上げて雄たけびを上げた。


(ないないないないっ! 震えとけって何!?

到着が遅かったんじゃなくて、あんたらが私たちを置いていったからでしょ!?)


ずぇったいにサポートなんかしてやらないと心に誓いながら、伝書鳥から伝えられた場所に移動する。

私を含め、みんな殺る気まんまんだ。


山の中を十分以内に二キロ走り抜けるなんて、学園時代では考えられなかった。けど、キリク班でゴリゴリに扱き上げられた結果、なんてことはない。


(それよりも、第0部隊にひと言いってやらないと気がすまない!)


身体は、疲れよりも憤り。

頭は、敵よりも彼らへの怒りが占めていた。




憤りで興奮しきった私たちが、ぜーはーと息を切らしながら辿り着いた先に、彼らはいた。


「うっわ、ほんとに来たよ。やっすい挑発に乗ってきたなぁ!」

「俺のおかげでサポート班が早くこっちに合流してきたんだから、感謝しろよ? お礼は煙草でいい」

「え、煙草とか、今どきまだ吸ってるんですかぁ? ほんとイケてなーい」

「人の嗜好をイケてるかイケてないかで判断すんなよ。隊長の飴よりマシだろうが」

「ぁめ、ばかに、すんな」



(この人たちが、第0部隊……?)



四人の真っ黒なローブを被った軍人たちが、駆けつけた私たちを見て和気あいあいと駄弁っている。

それだけだと、別になんてことはない一部隊のよくある光景。


――が、異様なのは二点。


まず、全員がフードを被った上で、何故か目元を覆う仮面を付けており、一人に至っては仮面の上から何故か眼鏡を掛けている。


(いや、そこまでするなら仮面いらなくない……?)


そしてもう一点。

それは、彼らが座って休憩している場所。


「あれは、人か? それと、幻獣?」


人に見えるそれは、猿轡を噛んで、全身を紐のようなものでぐるぐる巻きにされて寝そべっている――だけでなく、なぜかその上に眼鏡の隊員が跨って、棒付きの飴を舐めていた。


他の三人はというと、血だらけで横たわっている鳥型の幻獣の上でそれぞれが足をぶらつかせていた。

幻獣は人間のような身体に、鳥の頭、そして大きな翼が付いており、三人で座っても余裕があるくらいに大きい。

首には従属の首輪がしっかりと嵌められている。


そして――椅子代わりにされている一人と一匹は両方とも真っ黒で、大火傷を負っているのが遠目からでもわかった。


「お初にお目にかかる。我々は第0部隊のサポートで駆け付けたグリモア班だ。

貴殿らが乗っているのは、親玉か?」


グリモア先輩が代表して、彼らに確認の声をかけた。

すると、この中で一番ガタイのいい隊員が彼の声かけに応じる。


「ん? ああ、そうだ。コイツらが最近のここいらの災害の元凶だ。……ったく、最初の襲撃のときに気付けっつーの」


やれやれといったジェスチャーをし、ガンッと踵を下へ落とす。

彼が乗っている幻獣から、苦し気な呻き声が聞こえた。


――駆けつけてから、そんなに時間も経ってないのに――過去二回も失敗した討伐をあっさりやってのけるなんて。

しかも彼らの方は全く怪我を負った様子がない。圧倒的な力でねじ伏せたというのが見て取れた。


(これが……第0部隊……)


確かに頼りにはなる、のかもしれない。


「……幻獣はわかるが、そこの拘束されている者は、一体何者なんだ?」


グリモア先輩の質問に、女性隊員が「うんうん、気になるよね~」と無邪気に答える。


「ガラナの残兵だよぉ! まーだ残ってたみたい。殺しちゃったら、使い道なくなっちゃうから、一応生かしてあげてるの」


(ガラナの残兵? 終戦から五年も経ってるのに?)


ガラナはすでに解体され、各周辺諸国で押し付けあった結果、国民たちは属国に散り散りになったはずだ。

なぜ今さら……と疑問に思っていると、若めの声の隊員が、場違いな提案をしてきた。


「いやぁ、ガラナにも魔法使いっていたんすね。てっきり爆発するだけが取り柄の火薬集団と思ってたのになぁ。あ、そうだ!

拷問で全部の情報吐かせたあと、こいつら使って花火しません?

バーンッて派手に散らしましょうよ!」


「おまえが後片付けすんならやってやってもいいぜ。絶対にクセーから、俺はゴメンだ」


げんなりした様子で、ガタイのいい隊員が鼻を摘む。

女性隊員は「それ、綺麗かなぁ?」と呑気に首を傾げている。


眼鏡の隊員はというと、他の三人に比べ、先ほどから妙に静かだ。


(あ、飴を食べてるから喋れないのか)


一応任務中だというのに、えらく呑気なものである。

ただ……私のことをじっと見ている気がするのは、私の気のせいではないはず。


「あ、そうだ。お前らちゃんと十分以内に来れたから、この幻獣にトドメ刺していいぞ。じゃないとお前の班、なーんもしてねぇもんな? 報償どころか、足が遅くてすいません、第0部隊の皆様ありがとうございますって報告文を、恥さらしながら書く羽目になるだろなぁ」


ニヤニヤしながらガタイのいい隊員が挑発するように言ってくる。


――間違いない。さっき伝書鳥を送ってきたのは、コイツだ。

私を含む、グリモア班全員が第0部隊全員に白い目を向ける。


「……幻獣はそのガラナ兵に従わされてただけじゃないのか?

契約解除してやれば、幻獣界に還るだろう。トドメを刺すのは、それからでいいのではないか?」


グリモア先輩がみんなを代表して言った。

まさに、私も同じことを考えていた。

契約獣は主に逆らえない。それが意にそぐわないものだとしても、だ。

だからこそ、ガラナ兵の聴き取りが終わってからでも処分は遅くないと思ったのだけど、彼らの考えは私たちのものと違っているようだった。


「え、おまえら正気!? このペアのせいで、何人が亡くなったと思ってんの!? 頭ヤッベェな、北東支部!」


若い声の隊員が、ゲラゲラと不愉快な声で手を叩いて笑う。


(この人にだけは言われたくない……)


人間花火を打ち上げるなんてぶっ飛んだことを言う奴より、自分たちはマシだと思う。


「ふーん。まあ、そっちがいいなら、俺らがトドメ刺すだけだけど。でも、それだと面白くないよな?」

「つまんなーい」


ガタイのいい隊員が周りに尋ね、女性隊員が面白がるようにして同意する。

いちいち神経を逆なでするようなことを言ってくる第0部隊の隊員たちに、段々とイライラが募ってくる。


(つまんないも何もないでしょ……ほんと、なんなの、この人たち)


「じゃあ、こうしようぜ。俺らは全力で自分たちに結界を張るから、それを制限時間内で崩せたら、この契約獣はおまえらのもん。崩せなかったら、俺らが潰す。どうだ?」


「な……、そんな命をゲームみたいに……!」


はっきり言ってドン引きだ。

この人たちは圧倒的な力を持っているのに加えて、圧倒的に人としての倫理観が足りていない。


グリモア先輩も、そろそろ耐えかねてるだろうと、彼を仰ぎ見ると――


「よし、わかった!!!」


顔を上げ、高らかに宣言する。


「やってやろうじゃないかっ!」


「!?」

「マジで!?」

「げぇっ、ここ乗っかっちゃうんですかっ!?」



グリモア先輩のまさかの賛同に、グリモア班全員がひっくり返りそうになった。


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