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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第九章 再会編

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78.会ったこともない第0部隊に引いてます。

指令室に着いてすぐ、北部支部の支部長から命令が下った。

この場には五人。

支部長と、私を含むテラの街で一緒だった四人だ。


「今回の任務を簡単に説明すると、先日の討伐で確認された親玉一匹の討伐が目的だ。

テラの街で防衛に成功したグリモア班をサポート班とし、第八部隊北東支部第二班班長グリモア隊員。引き続き君をこの臨時班の班長に任命する」


「はっ! 謹んで拝命致します!」


「そして、第一部隊第三班フィリアス隊員」

「はい!」


支部長に呼ばれ、びしっと敬礼し、大きな声で返事をする。


「フィリアス隊員には敵の結界崩しとして活躍を期待している。

現時点で、敵は物理結界、炎属性結界を扱うと報告を受けている。君はこれらの結界崩しに対応できるか?」

「はい! 属性関係なく、叩き壊すことが可能です」


「心強いな。また、君は契約獣フェンリルも扱えると聞いたがそれは本当か?」

「はい、フェンリルは私の相棒です。ただ、魔力消費が激しいので、結界崩しと使役の両方は正直なところ厳しいです」


「承知した。結界崩しに専念し、有事の際は契約獣を使用してくれ」

「はい!」


「このグリモア班はあくまでサポート班だ。

基本的には、討伐本隊となる第0部隊の指示に従うように」

「承知しました!」


全員の返事のあとに、支部長が「ここまでで質問がある者は?」と聞いてきたので、遠慮なく挙手をする。


「なんだ、フィリアス隊員」

「あの……第0部隊というのは北東支部の所属部隊ですか?」


入隊時に、軍の組織は第一部隊から第十部隊に分かれていると習った。そのため、先ほどの説明で出てきた"第0部隊"なんていう単語が、ピンとこなかったのだ。


「いや。彼らはどこにも属していない。通称、特務部隊と言われている組織だ」

「特務部隊?」

「――ここのグリモア班も、あまり深入りするな。彼らの腕は確かだが、こちらも出来れば頼りたくない存在だ。彼らを刺激しないように、上手くやって欲しい」

「はい」


返事をしたものの、しっくりこない。

――なんだか前に聞いたことあるようなないような。けれども誰から聞いたのか思い出せない。


(頼りたくないような存在って、一体なに?)


頭の中は疑問だらけだが、支部長の言うとおり、サポートに徹し、その第0部隊に従っておけば間違いないのだろう。


「すでに第0部隊は現場へ向かっていると報告があった。……本当はここで顔合わせの予定だったんだがな。

先日からの疲れも残っているだろうが、すぐにグリモア班も合流して欲しい」

「はっ!」





「隊長~。勝手に行っちゃってよかったんですかぁ? 北東の支部長がサポート班が来るまで指令室に待機っていってたのに~」

「ぃそぃでる、から、ぃぃ」

「あっはぁ、自己中! ほんと隊長のそういうとこシビれるわ」

「おい、ヒルデン。ちゃんと気ぃ張っとけよ。この辺りさっきから魔獣たちがうようよとこっちの様子見してんだから」

「はーい。てか、魔獣狩りしてきていいっすか!? ヨランダさん、何匹捌けるか競争しようぜ!」

「え~じゃあ、多いほうが今日の酒代奢りねぇ!」


(ああ、早く終わらせたい)


何がサポート班だ。

足止めを食らわせるなら、いないほうがマシだろうに。


鬱蒼とした森は魔獣だらけだが、腕の制御具を外して少し威圧するだけで、すぐに逃げてしまい、近寄ってくることすらない。


親玉がいる地点まであと少し。

これまでの鬱憤を、思う存分に晴らせる時間まで、もう間もなくだ。





「うわ、この森、めちゃくちゃ魔獣がいるな」


グリモア班のトロイ先輩が辺りを見て呟く。


「襲ってこない限りほっとけ。魔除けの防具が効くくらいのショボいやつらだ」


グリモア先輩はこの森に慣れているのか、迷いなく目的地までの道を進んでいく。


「それにしても、なんか僕らを見て怯えてません?」


もう一人の先輩隊員であるチゼット先輩が少し訝しげな様子で言った。


「確かに、ちょっと目があっただけで逃げていきますね……」


普通、多少なりとも人間に警戒して敵意を向けてくるのに、ここの森の魔獣たちは一目散に逃げていく。


「ん? なんだ、あれ」


グリモア先輩が道の先にある山みたいなものを指さして言った。

何かの罠か、と慎重に歩を進め、その物体に近づくと――


「うわっ、何だこりゃ!?」

「酷い……」


そこには、山積みになった魔獣が折り重なっていた。山は二つ。

どちらも様々な種類の魔獣たちが、無惨な姿で絶命している。


「誰か狩りでもやったのかな」

「非常事態宣言が出されてた後に、狩りに来るか?

というか、今は軍が討伐を行うから、この区域は一般人には封鎖してるはずだが……」


グリモア先輩の言葉に、みなの考えが一つになる。


(この死体の山を築いたのは、軍の関係者しかいない――)


そして、今回任務を受けているのは、うちの班と、もう一つのみ。


『第0部隊』


「こりゃ……支部長が頼りたくないって言ってたのもわかるかも……」

「ですね……」


見れば無害で大人しい幼獣まで、無残な姿になって捨て置かれている。

胸を締め付けられるような光景に、動物好きの自分としては、言いようのない怒りが込み上げてくる。


――会ったこともない彼らのことが、一気に嫌いになってしまった。


「私、たぶん……第0部隊の皆さんとは仲良くできないです」

「俺も」

「僕もだよ」

「みんな個人感情は挟むなよ。俺たちがサポートすべき相手がいくら糞野郎でも、任務は任務なんだからな」


グリモア先輩に窘められ、なんとか気持ちを静めて先に進む。


「もう少しで合流地点ですね……。あの、その前にひとつ、気になってることがあるんですけど」


合流地点と言われているポイントまであと少しというところで、今回の討伐対象について、少し引っかかっていたことを共有する。


「なんだ、フィリアス?」

「今回親玉と言われている結界を扱う鳥獣なんですが、そんな魔獣、聞いたことがないんですよね……。私、これでも学園時代、魔法生物学は成績良かったんですよ。だから、どんな生態なのか気になっちゃって。新種なのかな……」


ローズシティナ学園で、魔法実践学に次いで、ハイマー先生の魔法生物学は得意分野だった。

なぜなら、生きとし生ける獣全てがかわいい。うん、かわいいものに限るけど。ついでに言えば、幻獣は管轄外だけど。


「そういえば見た目については鳥獣としか報告が無かったな……。鳥に見えた別の魔物だったとか?」

「うーん、それも該当するものが無いような……」


そもそも、結界魔法を操る魔獣なんて、数が限られている。

例えば、ドラゴン種や、それに準ずる幻獣たち。

結界は確かな知能がないと使えない代物なのだ。


(ドラゴンを鳥獣と見間違えた? そんなことあるのかな……)


「まあ、遭遇してみればわかることだ。先を急ぐぞ」

「はい……」


少しばかり――嫌な予感が胸をよぎる。

先日、予想外のワームの襲来があったように、自分たちの予想を超えることが起きるような、そんな予感が……



「ぉそぃ」

「ですねー。もう魔獣狩りも飽きたし、ていうか負けたからもうやる気もないし。親玉、先やっちゃいます?

突っ込んできていいっすか?」

「ゅるす」

「待て待て待て。俺らが着くのが早すぎんだよ。サポート部隊が来てくれないと、隊長の全力のとばっちりを俺らが浴びることになるだろうが。ここは楽しようぜ」

「え~私もちょっとは暴れたいんだけど。とりあえず、目標を挑発してきてもいいですかぁ?

てか、目標が見当たらないんだけど、もしかして逃げちゃった?」

「――ッチ」


逃げたとなると、厄介だ。

探し当てるのに時間を食う。


そもそも"結界を扱う鳥獣"なんてこの世に存在しない。

百パーセント幻獣か、人が擬態しているかのどちらかだ。

幻獣だと"向こう"に還られると跡を追えなくなる。それはこの討伐が長期戦となることを意味していた。


(絶対に今日で仕留める……昼までには、この森を抜ける――)


一人勝手な目標を立てながら、周囲の気配を探る。

制御具を一つ、また一つと外しながら。


「ひっ、お肌に障る~! ちょっとヒルデン、盾になって」

「ええっ。俺敏感肌だから勘弁してくださいよ!」

「おい隊長! サポート部隊待てっつってんだろ!」


全てを外し終えた頃。


部下たちが騒ぐ声以外、すっかり静かになった森に、一つの気配を探知した。



(――いた)



口の端が釣り上がる。


「ぃくぞ」


その言葉を合図に、辺りが爆ぜた。


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