表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第九章 再会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/97

77.任務終了の後は、新たな任務です。

(あ、今日は制服のローブだ)


起きたら夢の内容は覚えてないのに、夢の中では前回のことを不思議と覚えている。

彼はいつもの森ではなく、見知らぬ鬱蒼とした森の中にいて、じっとこちらを見ていた。



「エンデ先輩」



懐かしい名前で呼びかけるも、彼は首を振った。

そしてそのまま踵を返し、森の奥へ進もうとする。


(待って、止まって――)


歩き去る彼の元まで駆けて行き、慌ててその身体を抱き留める。

彼の背中に顔を埋め、叫ぶようにして懇願した。


「お願い、どこにもいかないでっ!」


(なんでいつも私の前から消えてしまうの)


夢の中くらい、一緒にいてくれてもいいじゃないか。


そんな私の願いを聞き入れてくれたのか、先輩の足がピタリと止まる。

そして――耳を澄まさないと聞こえないくらいの声で、たどたどしく言った。


「まぇ、きょぜつ、された……」


(え――)


言われた内容と聞き慣れないもの言いが、いつもの彼ではないと顔を上げて視線を滑らせる。


すると……

目に入ったローブが黒一色のものに、彼を抱きしめている感触が、前回感じた骨ばったものに変わっている。

しかも彼はいつのまにかフードを被っていたので、顔を覗きこむこともできない。


「わ、私、拒絶したつもりなんかない!」


この前の夢では、先輩が"別の誰か"に変わっちゃったから、びっくりしただけ。

でも、この人は先輩だ。

私の大好きな――


彼が後ろを振り向き、私を腕の中に閉じ込めた。

やっぱり、その感触は記憶にあるものよりも痩せていて……


見上げた先の真っ赤な炎のような瞳が、私を捉えた。

ただし――眼鏡のレンズ越しに。

落ちたフードからは、雪のような真っ白な髪が姿を現す。


「ネモ……」


……なのに、「ネモ」と言う声は、以前と変わらない声で。


(ああ、彼は――「今の」彼なんだ――)


急速に理解した。

もう、なんの違和感も目の前の人に感じなかった。


「やっと、会えた――――!」


私の中で、彼の姿はずっと五年前のまま止まっていたのに、それなのに、"今"を見ることができるなんて――

心のどこかで、彼を過去の人にしようとしていた自分を恥じる。



「ダリオさんっ!!!」



全力で叫んだ。

やっと彼に辿り着けたことに、胸いっぱいに喜びを噛みしめながら。


そして。


私が彼の反応を見ることのないまま……唐突に目が覚めてしまった。





「今回の"失敗"の全容だ」


あの後、非常事態宣言は解除され、私たちは支部からの伝令を受け、一度北東支部の拠点に集められた。


そして、今回の討伐の結果と、各街の被害状況が一堂に通達された。


まず、討伐隊は途中で伝書鳥の報告通り、三班全員が重傷者含め負傷者多数で近隣の村に撤退し、そこで手当てを受けているとのこと。幸いにして、死者は出なかったらしい。

また、討伐地点から一斉に南下したコカトリスの襲撃を受けたのは、私たちがいたテラの街のみだったことが判明した。シアトレやその近辺の街はワームとコカトリスが通過したたけだったそうだが、それでも相当な被害が出たという。

シアトレの街でいうと、コカトリスの上空通過とワームの通過がほぼ同時に起こった。

隊員たちは毒を持つコカトリスの対応を優先し、ワームの対応を後回しにした結果、地震による家屋倒壊の被害が一部あったとのこと。

その他の村や街も、結界に守られたものの、近隣の農地や工業施設が軒並み被害を受けていた。

もはや天災である。


しかも、グリモア先輩が支部宛てにテラの街への救援要請を出していたが、支部側の手が回っていなかったことが判明した。


「じゃあ、あのフェニックスは?」と皆が首を傾げたが、結局はわからず仕舞いだった。


ワームは全滅、コカトリスは方々に散っていったので、これで一旦事態は終結したかと思ったのだが――



「発生源に、厄介な魔物?」

「ああ。通常のコカトリスだけなら数がいても太刀打ちできたはずなんだ。だけど……そこに、結界を展開する見たことがない鳥獣の親玉が現れた。

物理と炎の強力な結界だよ――そこからは、負け戦。全員ボロボロにやられて、やむなく撤退したんだ」

「結界を扱う鳥獣……? なんだろ」


私は今、休憩時間の合間に、討伐で負傷したユリシスの元へお見舞いに来ていた。

討伐班の第一班に配置されていたユリシスは、支部拠点のベッドで全身を包帯で固定されている。


ユリシス曰く、第一班の面々は何とかして親玉に立ち向かったが、物理攻撃はすべて弾かれ、彼の得意の身体強化を以てしても、全く歯がたたなかったらしい。

第二班は第一班を逃がすために負傷し、第三班はしんがりを務めた。それが今回の討伐の詳細。


「それで――その親玉の元に、また他の魔獣の群れが集結するんじゃないかって。たぶんだけど、ネモ、そいつの討伐に、君にも声がかかるかもしれない」

「ん? 私?」

「結界崩しはネモの得意分野だろ? 俺が推しといた」

「うそでしょ!? 私、対魔獣の実戦で結界崩し使ったことないんだけど!?」


キリク班に配属されて二か月経つけど、ほとんどが訓練で、実戦に出ても結界を使う側。

現時点で結界を崩さないといけない相手と対峙したことがなかった。


そして噂をすればなんとやらで。


「あ、伝書鳥」

「!?」


『伝令、フィリアス隊員。いますぐ支部拠点、指令室まで出頭せよ。繰り返す……』


「早速来たね」

「タイミングよすぎるよ……私まだ休んでたいのに……お昼寝したい……」


私の言葉に、ユリシスが苦笑する。顔も傷を負ってるため、笑うと少し痛そうだ。


「はは、ネモは本当、ある意味軍人に向いてるよね。どんなときでも自分のペースを崩さないんだから……」

「全然褒められてる気しないんだけど、ありがとう。じゃあ、気乗りしないけど、行ってくるね。早く元気になって、またご飯でも行こう!」

「うん、また。気を付けて」


(結界崩しとか――ダリオさんの森の結界を壊して以来、手を出してないんだけど、うまくやれるのかな……)


あのときのことを思い出すと、すこし胸が痛んだ。

けれども、今考えるべきは目の前の任務だ。

頭を切り替えて、指令室へ向かった。





「隊長~。ちょっと今日、機嫌悪すぎません? どうしたんです?」

「……ぅるさぃ」

「制御具そろそろ新調すっかぁ? 駄々洩れじゃねぇか。こりゃ今回の任務で壊れるんじゃね?」

「ぃらなぃ」

「うっわ、相当キテますね、肌ビリビリする。俺、久々に隊長と任務なんすけど、怪我したくないなぁ」

「大丈夫だヒルデン。ヨランダが治すから、思う存分とばっちり受けとけ」

「うっはぁ! ヨランダさんに治してもらえるんなら、半殺しにされてもいいやぁっ!」


……朝から本当にうるさい。

大体、なんでわざわざ北東支部にうちの隊が集まる必要がある。

ただでさえ、こちらは機嫌が悪いというのに。


「ょびだしたゃっ、コロス……」

「おーい。呼び出した奴に隊長合わせるんじゃねぇぞ。また軍規違反起こして、この人帰ってこれなくなるから」

「いっそ、軍の地下牢に一年くらい入れとけば、大人しくなるんじゃないですかぁ?」

「あ、あの、それはちょっと逆効果な気が……地下牢を建物ごと破壊されて二次被害になるかと」

「お? 文句あんのかオッサン」

「なんで副隊長が喧嘩腰なんですか」


ああ、うるさい。

この際だ、全部まとめて黙らせてやろうか。


「まてまてまてまて、隊長、本気で止めて。マジで抑えて。おっさんが魔力酔いで倒れてもいいのか?」


ノールさんの言葉に、はたと我に返る。


「それは……マズぃ」

「だろ?」

「隊長ってば、すっかりオジサマに懐いたよね~」


否定はしない。

彼はこの頭のぶっ飛んだキチガイ集団の中で、唯一"まとも"だ。

この常識の塊を失うのは、非常に痛い。


「でも、今回の魔獣退治の件、うちの隊に要請が来るなんて珍しいですよね。うちは泥臭い対人案件が多いってのに」

「なんでも、討伐に失敗したらしいよ~。大量に負傷者出して人が足りてないみたい。

結界使うなんて思ってなかった! なーんて言い訳してたけど、油断しすぎよねぇ」

「……しくったゃっ、ぜんぶ、コロス」

「はいはーい。隊長は一回落ち着きましょうね」


ノールさんから、飴を口に突っ込まれる。いつもならこれで気分が落ち着くのだが。


(落ち着ける訳があるか)


あと少しだったというのに。

しかも、今日は夢でも彼女がこんな俺を受け入れてくれたというのに、朝っぱらから指令室へ呼び出され、叩き起こされたのだ。

これで憤らないでいられる奴がいるなら、お目にかかりたいものだ。


(早く終わらせて、顔を見に行きたい)


向こうから(こちら)へ飛び込んで来たんだ。

好きにやらせてもらって、かまわないはず。


あれこれ彼女のことを考えていると、そのうちやっと、飴の感覚も相まってイライラした気分が治まってきた。

なんなら任務終了が早ければ早いほど、会いに行くまでの時間が短縮されるとやる気が出てきたくらいだ。


「ふっ……」

「でたー、隊長の急な謎笑い。牢屋の前に情緒教育の方が先でしょ、この人」


今度こそ……例え、言葉を交わせなくても。

一目見るだけで、俺は充分なんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ