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再会した先輩は心が壊れていました。~執着が止まらないなんて聞いてません~  作者: piyo
第四章 二人の触れ合い編

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37.湯たんぽは人間になり得るか。

翌日。


このときすでに、鳥頭の私は昨日先輩と手を繋いでたことなんて、すっかり頭から抜けていた。


だから、登校してすぐユリシスが昨日の課題について話しかけてきたときも、思い出して照れる……なんてこともまったくなかった。


「ネモは何回で課題成功した? 俺は三十回やり直したあたりで、途中で数えるのやめちゃったけど、二時間で出来たよ」


私とユリシスはポンコツ同士、度々課題の出来について成果を報告し合う仲だったりする。


(二時間か……いつもの私ならそれくらいはかかったはず。でも、今回は違う!)


「なんと私、一回目は失敗したけど、二回目にはうまくいったよ!」


「ええっ!? たった二回で成功したってこと!? 俺なんて、二回目とかスピードの調整がうまくいかなくて、鞄で窓にひび入れちゃったんだけど」


「ふふ……コツは、手の動きだよ、ユリシス君」


そう言いながら、先輩から教えてもらった動きを思い出す。


「えっとねぇ……」


ユリシスの後ろに周りこんで彼の手首を掴む。

それから昨日先輩が私にやってくれたように、手取り足取り動作を教えてあげる。


「な、なるほど……!」

「わかりやすいでしょ?」

「う、うん……でも、そろそろ手離してもらえたら……」

「あ、ごめん」


ユリシスは感心しつつも、なぜか顔を赤くしていた。


(うん、昨日学んだことを教えてあげる私、えらい)



と、そのとき。


「ぴぃっ」


ひよこのような、小さな鳴き声が聞こえ、ユリシスと同時に声の方を振り向いた。


ぱたぱたぱた……


ほぼ羽根が生え変わり終わったかどうかの、薄い赤い色をした雛鳥が、羽根を一生懸命ばたつかせ、教室の中をぱたぱたしている。


「……伝書鳥、かな?」

「っぽいね。なんか、危なっかしいなぁ」


あまりにも必死に羽根をばたつかせているから、そのうちバテて墜落してしまうんじゃないか……


思わず止まり木代わりに指を伸ばしてやると、助かった!と言わんばかりに、伝書鳥は指からずり落ちながらも、羽根を休めた。


「雛、だね……。かわいいけど、一体誰から、誰宛てなんだろう?」


見たことがない伝書鳥だ。

未熟な感じから、魔力が少ないか、あまり魔法が上手くない人物が送ったんだと思うけれども――。


「どうしよ、迷子っぽいよね?」

「うーん……伝書鳥が迷子って聞いたことないけどなぁ。ネモの手に止まったってことは、ネモ宛てなんじゃない?」


二人して「ううん」と首を傾げる。

伝書鳥は全身ではぁはぁ言って呼吸を落ち着かせると、ようやくぱかりと口を開いた。


『ぴぃっ。ほうかご、もり。くろ。ぴぃ』


「……っ!」


(まさか……クロ、放課後と来れば……)


「うわぁ、声も幼いなぁ。かわいいー」


まだ消えない雛をつんつん触ってほっこりしているユリシスに、静かに言葉を告げる。


「……これ、エンデ先輩からだ」


「え!? この子が!? いや、エンデ先輩の伝書鳥って、あのキレイな炎の鳥でしょう?

この前やってきたやつは声も完璧に先輩の声だったし、そんなまさか……」


「先輩、いま、大量の制御具つけてるから……」


まさかここまで魔法の威力が低下するとは。

恐るべし、制御具。


(いま朝イチでこれだけど、本当に放課後でいいの? 昼休みに前倒して、クロを派遣しようかな……)


伝書鳥はというと、急にユリシスの掌の中でパタン……と身体を倒し、儚くも消えていった。


「ああ……エンデ……」


その様子を見ていたユリシスは、まるで飼っていたペットが逝ってしまったかのように涙を滲ませていた。


(名前、まんまじゃん……)


ツッコミは、心の中に閉まっておいた。





昼休みになると、速攻でクロを呼び出した。

彼が姿を現すやいなや、その場にしゃがみ込んで黒いモフモフの頭を撫でる。


<――こんな時間に、珍しい>


「うん、ごめんね。エンデ先輩のとこまで行ってもらえる?

放課後って言ってたんだけど……たぶん、今の時間のほうが、クロの力が必要だと思うんだよね」


<行くには行くが……必要なければすぐに戻る>


「了解。それじゃあ、よろしく!」


クロはすぐにタッと駆けて姿を消してしまった。


(よし、今日も先輩の役に立てた)


胸の前で小さくガッツポーズをし、側で待っててくれていたキアラをお昼に誘う。


「キアラ、お待たせー。食堂い、」


……私の言葉は最後まで続かなかった。


「きゃん!」


「へ」


「あら、クロちゃん。お早いお戻りで」 


クロは一鳴きしたあと、尻尾をピンとさせて静かに足元に佇んだ。


(ええっ、行ってから数十秒も経ってないような……)


〈「違う」とはっきり言われた。だから主を連れてく〉


「え、私!? なんで!?」


先輩の呼び出しといえば、クロを愛でたいからに他ならない。

私は湯たんぽにはなり得るけど、それはあくまでクロのバーターとして、だ。


(そのクロを派遣したのに「違う」だなんて――クロを構う暇すらないっていうことなんじゃ……?)


「連れて行かれたら困っちゃうよ、クロ。先輩は忙しいんだよ」


〈いや、確かに主を呼んでいた〉


「えぇー……?」


そのとき、ぽんっと肩を叩かれた。

振り向くと、首を横に振るキアラがいた。


「往生際が悪いよ。早く連れていってもらいな」


「いや、でも、私もご飯食べたいし」


「そんなのあとあと! クロちゃん、今よ!」


キアラの声に、クロは身体を大きくして私の身体をパクリと咥えた。


「で、でけー!」

「すっげえ本物のフェンリルだ! いつものワンワンじゃない!」


まだ教室に残っていたクラスメイトたちが、クロの姿に驚きの声を上げる。無理もない、教室の扉を出られるか怪しいくらい、大きくなっているのだから。


「クロ! これ、めっちゃ目立ってる!」


〈目立たせとけばいい。ネモフィラ。おまえがフェンリルの主だってことを、周りに見せつけてやれ〉


「ええっ、それ必要!?」


「グッドラック、ネモ!」


キアラのウインクとともに、クロは私を咥えたまま、文字通り颯爽とエンデ先輩の元へと爆速で駆けていった。




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