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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第九章 利権編〜偶然出た癒やしの湯が、国家予算級の国際問題に発展ー!?〜

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第89話 え、パパが勇者!? 旅立つリオへ贈る家族の合言葉!? 娘たちと見送る『奪わない強さ』への第一歩ー!?

ミルナ村。集会所。


王都の伯爵、クラウス・ヴァルハイムが席に着いている。

村人たちも集まっていた。

静かな空気。


クラウス「……国家が抱えれば、守れる。価値ある資源は、相応の力によって管理されるべきだ。それがこの村にとって、唯一の生存戦略だということが、まだ理解できないか?」


リオは視線を落とし、唇を噛みしめる。やがて、絞り出すような声で顔を上げた。


リオ「守れるって……誰が決めるんですか」


クラウス「決めるのは、守る力のある者だ」


空気が止まる。圧倒的な力の差という現実が、村人たちの肩に重くのしかかった。  

その時、亮が、いつもの穏やかな、けれどどこか透き通った声で間に入った。


亮「……守るって決める人がいるから、力が生まれるんです」


クラウス伯爵は否定しなかった。


亮「力で解決すると、今度はもっと大きな力に飲み込まれます」


村人たちが顔を上げる。

亮は窓の外を見る。

山。

猿たちが木の枝に座っている。


亮「この山の猿は、王都の資源ですか?」


クラウス伯爵は視線を山へ向ける。

少し間を置く。


クラウス「……管理対象ではない」


否定でも肯定でもない。

合理的な答え。

その瞬間、村人たちの顔に気づきが走る。

守りたいのは――

金か。

風景か。

クラウス伯爵は静かに続ける。


クラウス「理想は尊い。だが守る力がなければ奪われる」


誰も反論しない。

それは正しいからだ。

亮は穏やかに言う。


亮「奪うより与えよ。足を引っ張るより、手を差し伸べよ」


静かな言葉。


クラウス「……ならば、問おう。若者よ。君は今、この村を守れるのか?」


間。


リオの拳が震える。

村を見渡す。

温泉。

山。

仲間たち。


リオ「……俺は、守りたい」


誰も動かない。


リオ「でも、今の俺じゃ守れない」


声は小さい。


リオ「守る力が、今は足りない」


沈黙。

誰も責めない。

それが一番重い。

リオは山を見る。

木の上。

一匹の猿が、静かにこちらを見ている。

あの時。

温泉を奪わなかった猿。

何も言わない。

ただ、そこにいる。

リオの胸に、あの光景がよみがえる。

奪わないという選択。

リオは息を吐く。


リオ「……猿の時もそうだった。亮さんたちがいたから助かった」


静かな空気。

クラウス伯爵がゆっくり口を開く。


クラウス「……覚悟があるなら、来い」


一拍置く。


クラウス「王都で学べ」


村人たちが顔を上げる。


クラウス「力を持て! 守れる側に立て」


沈黙。

リオは深く息を吸う。


リオ「俺、行きます」


ざわめきは起きない。


リオ「奪うためじゃない! 奪われないための力を持ちたい」


亮「リオ。守るって決めたなら、もう守ってるよ。俺はそう信じてる」


村人たちが見る。


亮「行ってこい!帰る場所は、ここだ」


村人たちの胸の奥で、張り詰めていた糸が静かにほどけていった。


翌朝。  

薄い霧が山を包み、温泉の湯気はいつもより白く、空へと溶けていく。  

村の入り口。荷を背負ったリオが、一度だけ山を振り返った。  

岩陰に、一瞬だけ、一匹の猿の影が見えた気がした。


リオ「……奪わないでいられる強さ、持って帰るからな」


あんなは静かに見守り、みゆは流れを読み取るように空を見上げている。  

若者の一人が、目を逸らしながら、ぶっきらぼうに呟いた。


若者「……帰ってこいよ。絶対だぞ」


感情の爆発はない。

ただ、それが村の絆だった。


亮「行ってこい。……大丈夫、帰れる場所は、ずっとここだよ」


亮が笑う。  


馬車の車輪が回り出し、足音が小さく遠ざかっていく。  

霧の向こうに消えていくリオの背中を見送りながら、村は再び静寂に包まれた。

けれど昨日までとは、何かが決定的に違う。  

かつて、迷宮の猿は奪わなかった。  

そして、人は――自ら選んだのだ。


こうして――  

一人の若者が未来を掴むため、住み慣れた家を後にした。  

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、

静かな朝の中で、村は確かに一歩を踏み出していた。


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