第90話 え、パパが勇者!? 猿に学んだ家族の選択!? 娘たちと見届ける『自分たちで決める』未来の第一歩ー!?
リオを乗せた馬車が、朝霧の向こうへと消えていった。
村の入り口には、見送った村人たちが立ち尽くしている。
そこには、以前のような対立の刺々しさはなかったが、代わりに「自分たちで選んだ」という、重く静かな覚悟が漂っていた。
クラウス「……さて。神崎殿、そして村長。不本意な結末か?」
リオが旅立った後の静けさ。
その余韻が残っている。
マーレイ村長がゆっくり口を開く。
マーレイ「さて……決める時だな」
ざわめきはない。
若者A「……俺、昨日考えた」
若者B「俺もだ」
若者C「リオが言ってたろ」
若者A「守る力が足りないって」
年配者Aが頷く。
年配者A「急ぎすぎだと思っていた」
年配者B「だが……考えないのも違う」
マーレイ村長が紙を見つめる。
マーレイ「王都の庇護に入れば、確かに安定する」
若者B「商人の話も悪くない」
年配者C「だが、村は村だ」
神崎家も輪の中にいる。
あんな「どうするか、決めるんだね」
みゆ「選択の時間です」
ベアトリス「どちらを選んでも、責任は生まれますわ」
亮は腕を組んで、穏やかに村を見渡す。
誰も急がせない。
マーレイ村長がゆっくり言う。
マーレイ「温泉は、村で守る」
静かな決断。
村人たちが頷く。
マーレイ「経営権は渡さない。でも、閉じるわけじゃない。商人とは協力できる。流通や宣伝は頼めばいい」
年配者A「外と繋がるのは悪いことじゃない」
年配者B「ただ、決めるのは村だ」
答えは一つにまとまっていく。
そこへ、クラウス伯爵が静かに歩いてくる。
クラウス・ヴァルハイム伯爵。
クラウス「決まったようだな」
マーレイ村長が頭を下げる。
マーレイ「村で守ります」
伯爵は少しだけ空を見た。
温泉の湯気。
山の木々。
クラウス「選択を尊重しよう」
反論も説得もしない。
クラウス「だが覚えておけ」
村人たちを見る。
クラウス「守ると決めたなら、守り続けろ」
残った騎兵とともに馬車へ乗り込もうとしていたクラウス伯爵が、ふと足を止めて振り返った。
クラウス「あなたは面白い」
亮「ただの温泉好きですよ」
伯爵は皮肉めいた笑みを浮かべたが、その瞳には一抹の敬意が宿っていた。
彼は亮に短く一礼すると、今度こそ馬車へと乗り込み、王都へと去っていった。
若者たちも年配者たちも同じ方向の空を見上げる。
亮がゆっくり言う。
亮「……猿は、奪わなかった。分け合えたんだよね」
村人たちが振り向く。
亮「人は、選べる」
守るために、強くなることを。
失わないために、一度手放すことを。
そして少し笑う。
亮「だから難しいんだけどね」
あんな「でも、選んだよ」
みゆ「村としての答えを」
ベアトリス「立派な決断ですわ」
湯気が、いつものように優しく空へ溶けていく。
村の景色は、明日から少しずつ形を変えていくだろう。
けれど、この温かな湯がある限り、帰ってくる場所は変わらない。
山の上では、猿たちが木の実を分けている。
争わない。
奪わない。
ただ、続いていく。
亮「じゃあ、出発しようか!」
あんな「もう出発?」
みゆ「いつもの即決」
ベアトリス「もちろん私も同行しますわ」
もっふる「ピィー♪」
村人たちが笑う。
マーレイ「また来てくれ」
亮「温泉入りにね」
あんな「ありがとうございます」
みゆ「また来ます」
ベアトリス「お世話になりましたわ」
もっふる「ピィー♪」
――そして、その空のさらに高潔なる場所。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、本当に退屈という言葉を置き忘れてきたようですね。
偶然掘り当てた温泉が、国家を揺るがす戦略資源となり、ついには伯爵や商人をも巻き込む国際問題にまで発展してしまうとは。
富を求める商人の誘惑や、生存を説く国家の正論。
それらが渦巻く中で、村の人々が「自分たちで決める未来」を選び取ることができたのは、あの勇者の飾らない一言があったからこそ。
最強の力を持ちながら、それを誇示することなく、ただ「分け合うこと」の尊さを説く。
その無自覚なまでの純粋さが、迷える若者に道を示し、バラバラになりかけた村の絆を再び一つに結びつけたのでしょう。
「奪わない強さ」を胸に旅立った一人の若者の背中は、この世界の理をまた少し、優しい方向へと塗り替えていく……。
力とは本来、誰かを支配するためではなく、大切な場所を自分たちの手で守り抜くためにあるべきものなのかもしれませんね。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
一つの決断を終え、再び歩み出したあの家族の旅路に、次はどんな賑やかな出会いが待っているのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと湯気を運ぶ。
その微笑みは、朝露に濡れる山々のように優しかった。
こうして――
村は自分たちの未来を自分たちで選び、
静かな温泉の湯気とともに新しい一歩を踏み出した。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
次に訪れる出会いが、どんな景色を見せてくれるのか!?
第九章「利権編」を終えて
亮が偶然掘り当てた温泉が、まさかの国家予算級の「戦略資源」へと発展した第九章 。
商人の誘惑や伯爵の正論に揺れる村でしたが、最後は「自分たちで決める未来」を選び取り、若きリオが「奪わない強さ」を求めて王都へ旅立つという、ちょっぴり切なくも温かい結末を迎えました 。
パパの無自覚な一言が、今回も世界を(いい意味で)変えてしまったようです。
亮「いや〜、温泉まんじゅうを夢見てただけなのに、伯爵様まで来ちゃうなんてびっくりしたよ! リオ君も立派になって……パパは感無量です!」
あんな「もう、パパが穴を掘るとすぐ国際問題になるんだから! でも、村のみんなが自分たちの足で歩き出せたのは、パパのあの一言があったからこそ、だね」
みゆ「肯定。パパの無自覚な発言による影響力は、もはや国家レベルの演算予測を超えています。今後の観測データを維持するためにも、読者の皆様の評価(★★★★★)やブックマークが必要です。それが『神崎家のやらかし』を未然に防ぐ、唯一のフラグ管理になりますから」
ベアトリス「情熱の応援を、ぜひよろしくお願いいたしますわ! 私も次なる旅路では、キャンプファイヤー以外の料理もマスターしてみせますわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮「みんなの応援があれば、次はもっとすごい温泉……じゃなくて、美味しいお米が見つかる気がするんだ! これからも神崎家の旅を見守ってくれると嬉しいな!」
次はどんな賑やかな出会いが待っているのか。第十章も、ぜひお楽しみに!




