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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第九章 利権編〜偶然出た癒やしの湯が、国家予算級の国際問題に発展ー!?〜

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第87話 え、パパが勇者!? 良かれと思って掘った温泉が村の絆を破壊中!? 無自覚チートが招いた最悪の『正義のぶつかり合い』ー!?

昨晩の集会から一夜明け、ミルナ村の空気は、朝霧よりも重く沈んでいた。  

集会所では早くも若者たち数人が集まり、昨日ルイスが提示した資料の写しを囲んで熱心に議論を交わしている。


若者A「……やっぱり、このチャンスを逃すべきじゃない」


若者B「道が綺麗になれば、俺たちの代でこの村を王国一にできるんだぞ」


若者C「王都から人が来るんだぞ。こんな機会、そうない」


夢を語るというより――未来の可能性を見ている。


宿屋こもれび。  

入り口から村長マーレイが力なく入ってきた。

その顔には、一晩中悩み抜いたような深い隈がある。


マーレイ「……エルド。すまんが、温かい茶を一杯くれんか」


エルド「村長……。昨日は一睡もしてないんじゃないか?」


亮「村長さん、おはようございます。顔色が悪いですよ」


亮が心配そうに声をかけると、マーレイは弱々しく首を振った。


マーレイ「いや……。亮さん、すまんな。ただ、村の空気が……まるで二つに割れてしまったようで、胸が痛むんじゃ」


あんな「……さっき外を通ったら、若者たちが『今のままだとジリ貧だ』って、お年寄りたちと口論になりかけてたわ。パパ、これ放っておいたら大変なことになるわよ」


みゆ「……状況を客観的に報告します。現在、村の意見は『開発推進派』と『現状維持派』に二分。それぞれの主張には正当性があり、妥協点が見出せないデッドロック状態にあります。統計上、このような分裂はコミュニティの崩壊を招くリスクが極めて高いです」


みゆが静かにデータを提示する。


そこへ、いつものように厨房から煤だらけのベアトリスが飛び出してきた。


ベアトリス「パパ! 村長殿! 悩みなどはこの火魔法で焼き尽くして差し上げますわ! 今、勇気と元気が湧き出る『爆熱トースト』を焼いておりますの!」


あんな「ベアトリス! 勇気じゃなくて火災が発生してるわよ! 早く火を止めて!」


ベアトリス「あら? ……あらら? 情熱がオーバーフローしましたわ!」


もっふる「ピィ……」


そんな騒がしいやり取りの中でも、マーレイの表情は晴れない。


マーレイ「……若者代表のリオは、村を守るために力が必要だと言っておる。一方で古くからの連中は、静かな暮らしが奪われるのを恐れておる。どちらも村を思ってのこと……ワシには、どちらが正しいか選べんのじゃ」


亮「……難しいですね。でも、みんな村が好きだってことだけは同じなんですよね」


亮は穏やかに、けれど少しだけ悲しそうに窓の外を見た。


その日の午後。

集会所ではついに、若者たちと年配者たちが一堂に会した。  

言葉の応酬は激しくはない。

けれど、互いの視線は冷たく、かつてのような一体感は消え失せていた。


リオ「……俺は、奪われたくないんだ。この平穏を、外の連中に土足で踏みにじられる前に、自分たちの足で立てるようになりたいんだよ!」


リオの叫びに、年配者の一人が小さく応える。


年配者「……その代わり、この村の『心』を商人に売るというのか。それはもう、俺たちの知るミルナ村ではない」


リオ「守る力が、今は足りない」


静かな声。

視線が集まる。


リオ「猿の時もそうだった。あの時、パパさんたちがいてくれなかったら、俺たちは奪われる一方だった。……このまま客が増え続けたら、俺たちの手では管理しきれなくなる」


リオが見ているのは、きらびやかな金貨ではなく、いつか自分たちの手が届かなくなる「管理の限界」という現実だった。


年配者A「……急ぎすぎだ。そんなに人を呼んで、何になる」


年配者B「わしらは、この静かな村が好きなんじゃ。石畳ができ、他所の兵が歩き回る村は、もうミルナ

村じゃない」


声は強くない。

怒ってもいない。

ただ、温度が違う。


若者A「変わるのは悪いことじゃない」


年配者B「変わらないことにも価値がある」


言い争いにはならない。


それでも――

空気は揺れている。


神崎家は少し離れた席にいる。


あんな「増えたら、景色は変わるよ」


みゆ「豊かさは、何かを削ります」


ベアトリス「守りという点では整備も必要ですわ。でも……守るものを見失っては意味がありませんわね」


亮は黙って聞いている。

誰の言葉も遮らない。

誰の意見も否定しない。

若者の一人が、リオに言う。


若者B「結局さ、怖いだけだろ?」


リオは首を振る。


リオ「怖いよ」


正直な声。


リオ「でも、奪われるのはもっと怖い」


静かな言葉が落ちる。

誰もすぐには返さない。

村人たちは、少しだけ考える。

正論と正論がぶつかり、火花さえ散らない冷たい沈黙が広場を支配する。  

亮は群衆の端で、腕を組んでその様子を静かに見ていた。

亮がゆっくり口を開く。


亮「守るって、難しいね」


少し笑って、続ける。


亮「何を守るかだよね」


会議は結論が出ないまま、持ち越しとなった


亮「……あんな、みゆ。俺たちが掘った温泉が、みんなを困らせちゃってるのかな」


あんな「……パパ。それは違うわ。パパはみんなを元気にしようとしただけ。それを利用しようとする人たちがいるのが問題なのよ」


集会所を出たリオは、一人で暗くなり始めた山を見上げていた。

視線の先。

月明かりに照らされた枝の上で、猿たちが身を寄せ合い、ただ静かに木の実を分け合っている。


リオ「……あれは、力がなくても続いてるのか? それとも……」


猿は、奪わない。けれど人間は、どうだ。  

リオの独白は、風にさらわれて夜の闇に溶けていった。  

答えは出ない。

温泉の湯気が夜空へ上がる。

村はまだ選んでいない。


でも――

「守る」という言葉の重さだけが、静かに残っていた。


こうして――

守りたいものは同じなのに、答えだけが見つからないまま、村の夜は静かに沈んでいった

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は

ついに王都からの視察!? 村の未来どうなるのー!?


「富」の次は「権力」の襲来!? 磨き上げられた黒塗りの馬車から現れたのは、冷徹な正論を放つ伯爵様! 趣味で掘ったはずの温泉が、いつの間にやら国家を揺るがす「戦略資源」に認定されちゃった!?

「守る力はあるのか?」という究極の問いに、神崎家と村人たちはぐうの音も出ない事態に……!


次回、第88話 え, パパが勇者!? 掘った温泉が国家の戦略資源に指定!? 趣味の穴掘りが伯爵様を動かす国際問題に発展した落差ー!?

圧倒的な「正論」の暴力が村を切り裂く! 亮パパ、これどうやって収めるの!?


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