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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、娘2人ともっふるで挑む最強Fランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第九章 利権編〜偶然出た癒やしの湯が、国家予算級の国際問題に発展ー!?〜

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第86話 え、パパが勇者!? 掘った温泉が国家予算級!? 爆速の近代化計画と大切な場所を守るためー!?

ミルナ村は、朝から奇妙な静寂に包まれていた。  

村長マーレイの前に、商都グラーディオから来たという丁寧な身なりの男、ルイスが立っていた。


マーレイ「……ふむ。宿の増築、さらには村までの石畳の整備、とな」


ルイス「左様でございます、村長。このミルナ村の温泉の価値を考えれば、今のままではあまりにも勿体ない。私共が資金を出し、この村を王国一の保養地にしてみせましょう」


集まった村人たちの間に、さざ波のような動揺が広がる。

それは歓喜ではなく、急激な変化への戸惑いだった。


一方、宿屋こもれび。

食堂で神崎家が朝食を食べているところに、宿屋の主人であるエルドが、困ったように頭をかきながら亮たちのテーブルにやってくる。


エルド「おはようございます……。少々よろしいでしょうか?」


亮「おはようございます」


あんな「そろそろだよね!」


みゆ「定番の展開」


もっふる「ピィ♪」


エルド「村長は慎重なのですが、若者たちは、あの商人の話に乗り気でして…」


亮「村が整備され石畳になれば、荷馬車も通りやすくなって便利にはなるとは思いますけど…」


あんな「パパ! 便利になるのはいいけど、宿屋を増築して経営権を渡すなんて、エルドさんたちは困るでしょ! 私はこの宿の、静かで落ち着く雰囲気が大好きなのよ」


エルド「あ、ああ……ありがとうよ、あんなちゃん。だが、村全体が潤うって言われるとなぁ……」


みゆ「……パパ、エルドさん。現状を分析します。商人の提示したプランを実行した場合、宿泊可能人数は現在の五倍に跳ね上がりますが、同時にこの宿特有の『静寂』という付加価値は失われます。また、経営権の譲渡により、エルドさんの裁量権は実質的に消失します」


みゆが厳しい数値を突きつける。


その時、キッチンの奥から「おーっほっほ!」という高笑いと共に、ベアトリスが(すす)まみれで現れた。


ベアトリス「お待たせいたしましたわ! 厨房をお借りして、村の発展を祝う『情熱の特製ハーブティー』を淹れましたわ!」


あんな「ベアトリス、ちょっと待って。そのティーポット、なんで真っ赤に焼けてるのよ!」


ベアトリス「火力が足りないと思いまして、少々火魔法でブーストをかけましたの。さあ、どうぞですわ!」


ベアトリスがテーブルに置いた瞬間、ポットの熱でテーブルから細い煙が上がった。


あんな「机が焦げてるよ! そんな熱いのどうやって持つのよ!?」


亮「あはは、ベアトリスも村のために張り切ってくれてるのだから。でも、熱すぎるのは火傷しちゃうから気をつけようか」


亮は窓の外に目を向けた。  

一見すれば希望に満ちた未来予想図のようだった。


亮「……みんな、嬉しそうな顔をしている。でも、エルドさんは少し悲しそうだ」


父の独り言に、みゆが静かに答える。


みゆ「合理的判断と、感情的愛着の乖離(かいり)です。パパ。この村は今、二つの正義の間で揺れています」


エルド「……神崎さんすまないが、ちょっと一緒に来てくれないか? 例の商人が集会所で村の今後について話すんだが、亮さんにもいてほしいんだ」


亮「俺がいてもお役に立てるかわかりませんが……温泉を掘った責任もありますし」


あんな「パパ! 私たちも行くわよ。パパだけでは心配!」


みゆ「……同感です。客観的データを把握する必要があります。巻き込まれ率は現在進行形で上昇中」


ベアトリス「お任せください、私がグラーディオ家の名にかけて、不当な要求は撥ね退けてみせますわ!」


もっふる「ピィー!」


村の集会所。そこには、先ほど広場にいた商人ルイスが待っていた。  

エルドに連れられて入ってきた亮の姿を認めると、彼は深く、優雅に一礼する。


ルイス「はじめまして。商都グラーディオ商人ギルド所属、ルイスと申します」


亮「グラーディオの商人さん! オルドさんは元気してますか?」


ルイス「ええ、元気にしてますよ。……さて、神崎さん。皆様お揃いのようですので、まずは現状の整理をさせていただきましょう」


机の上に広げられる資料。

・宿の増築

・道路整備

・物流の確立

・王都への宣伝

・安定した資金提供


商人ルイス「この温泉は価値があります。 いえ……この静けさが価値なのです」


村人たちがざわめく。


若者A「やっぱり、もっと広げられるんだ」


若者B「王都に名前が出るかもしれないぞ」


年配者A「急ぎすぎではないか」


ルイス「条件はひとつ。経営権の一部を、我々に」


ルイスが微笑みながら静かに告げた瞬間、室内の空気がわずかに張った。


若者代表のリオが資料を手に取り、じっと見つめる。


リオ「……利益、村の発展。確かに可能性がありますね」


ルイス「若いのに見る目があるな」


リオ「その代わり、経営権は移るという事ですね」


ルイス「経営は専門家に任せた方が伸びます。感情ではなく、合理的な判断を」


嘘はない。

あまりに正しく、冷徹なほど合理的な話だった。


あんな「村じゃなくなっちゃう気がする」


みゆ「豊かさは、静けさを減らします」


ベアトリス「ですが守りは厚くなりますわ。兵も雇える。設備も整う。……それも事実ですわ」


亮は腕を組み、静かに聞いている。


亮「みんなで考えよう。急ぐ必要はないよ」


亮は腕を組み、静かに、けれど村人全員に届くような穏やかな声で言った。  


ルイスは頷き、最後にこう付け加えた。


ルイス「もちろんです。ただ――王都も関心を持ち始めています」


夜。

集会は終わり、村に静寂が戻る。

リオはひとり、夜空を見つめている。


リオ「守れるのか、このままで」


お客さんは増えている。

だが、増え続ける保証はない。


山を見る。

猿が枝の上で木の実を分け合っている。


リオ「奪わない。……でも守られてもいない」


考える。


リオ「奪われない力は、いる」


だが、簡単には決められない。

温泉の湯気が、夜の空に溶ける。

遠く、街道を進む影。

王都へ向かう報告書。

村の灯りはいつもより少し多く、不自然なほどに静かだった。

決裂はない。

だが――

緊張は、静かに積み重なっていく。


こうして――  

差し出された甘い果実のような提案に、村の平穏は少しずつ形を変えていく。  

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、

取り返しのつかない分岐点へと足を踏み入れようとしていた。

「良かれと思ってやったのに!」 掘り当てた至高の温泉が、まさかの村をバラバラにする引き金に……!?

正論をぶつけ合う若者と、静寂を愛する年配者。神崎家の「無自覚チート」が、一番壊しちゃいけない【村の絆】を侵食していく!?


次回、第87話 え、パパが勇者!? 良かれと思って掘った温泉が村の絆を破壊中!? 無自覚チートが招いた最悪の『正義のぶつかり合い』ー!?

正解のない問いに、亮パパはどう向き合うのか……スローライフ崩壊の危機、到来!?



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