第311話 え、パパが勇者!? 草原に出た神崎家!ここはどこなのー!? 未知の村を目指して家族みんなで歩き出す!?
第五部 【紫雷編】~試される家族の絆と天空の二大決戦!?~
第三十六章、始まります!
無事に地下通路を抜けた神崎家ともっふるが新たに降り立ったのは、果てしなく広がる大草原。
「今度こそ静かなスローライフを」……なんて願う間もなく、目の前に広がる見知らぬ世界では、思いがけない驚きの連続が待ち受けています。
温かな出迎えや、これまでの常識を覆す未知の体験、そして旅の先で揺らめく新たな謎とは?
相変わらず娘たちの鋭いツッコミと愛情が響き渡る、熱く賑やかな新章が開幕します!
神崎家のドタバタ異世界スローライフ(?)、今回もぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
亮「出口だー」
湿った暗闇が続いていた地下通路の先で、亮が楽しそうに声をあげる。
眩しい陽光が差し込み、ひんやりとしていた空気が一気にぬくもりを帯びた。
あんな「あ、眩しっ……! やっと抜けたー!」
みゆ「無事に地上へ到達したようです」
ベアトリス「外の光ですわ! お日様が眩しいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
光に向かって足早に歩みを進めた神崎家の面々は、次々と通路の外へと躍り出た。
視界が一気にひらける。
そこに広がっていたのは、地平線の彼方まで青々と続いていく、果てしない大草原だった。
あんな「うわあ……すごい広さ。見渡す限り緑だよ」
亮「いやー、いい風だなあ。やっぱりお日様の下は気持ちがいいぞ」
亮は深呼吸をしながら、大きく両手を広げた。
神崎家の全員が完全に通路から外へ出た、まさにその直後のことだった。
あんな「えっ、何?」
背後で、通路の輪郭がうっすらと眩い輝きを帯び始めた。
柔らかな光の粒子がふわりと舞い上がり、暗い通路の入口全体を幻想的に包み込んでいく。
亮「おおっ!? 通路がなくなっていくぞ!」
ベアトリス「そんな……! 通ってきた道が消えてしまいますわ!」
振り返った全員の目の前で、石造りだった地下通路の枠組みが、まるで幻だったかのようにじわじわと透けていく。
やがて光が収まった時には、そこには最初から何もなかったかのように、ただ一面の草が生い茂っているだけだった。
あんな「ちょっと待って! これ、戻れなくなったってこと!?」
亮「うーん……。通路そのものがなくなっちゃったな」
みゆ「少なくとも、今までの道を使って戻ることは不可能です」
ベアトリス「では、別の帰り道を探す必要がありますわ!」
もっふる「ピィー!」
もっふるは短い手をパタパタと振って、消えてしまった空間をペシペシと叩いて見せる。
だが、そこには確かな手ごたえのある空気と草の感触があるだけだった。
亮「なくなったものは仕方ない、とりあえず……」
あんな「とりあえず?」
あんなはゴクリと唾を飲み込み、頼れる(?)父親の言葉を待った。
亮「のんびりするぞー」
亮は草原の上にゴロンと寝転がろうとした。
あんな「ちょっと期待した私って……!」
みゆ「安定のパパです。想定の範囲内とはいえ、危機感の欠如には目を見張るものがあります」
あんな「パパ! のんびりする前に、どこか人がいるところを探そ!」
みゆ「肯定します。野宿は避けたいです」
ベアトリス「野宿ですわ! キャンプファイヤーですわ!」
あんな「ベアトリス、目を輝かせないで! また火力を間違えて草原全体を燃やさないでね」
ベアトリス「そんな、火魔法の加減はバッチリですわ!」
あんな「そのバッチリが怖いのだけどね……」
もっふる「ピィー♪」
もっふるはベアトリスの足元で心配そうに首を横に振っている。
あんな「はいはい、行くよー。もう、本当に目が離せないんだから……」
亮「よーし! 出発だー」
ベアトリス「出発ですわ!」
意気揚々と歩き出そうとしたその時、あんなはハッと足を止めた。
あんな「ところでここは……どこなんだろ?」
ベアトリス「ドワーフ国に戻ってきたのですわ!」
みゆ「その可能性はあります。ただ、今の情報だけでは判断できません」
あんな「どこにでもある草原だもんね。特徴がないっていうか……」
みゆ「ドワーフ国に戻って報告しないと、皆さんも心配していると思います」
あんな「だよね。あの時、崩落で分断されて別れたままだもんね」
みゆ「捜索隊を出している可能性が高いです」
亮「そうだな。まずは現在地を確認しよう」
あんな「そうだね」
みゆ「近くに村があれば、情報を得られると思います」
亮「よし! まずは人がいるところを探そう!」
亮が先頭に立ち、神崎家は果てしない草原を見渡しながら歩き始めた。
風が草を揺らす音が心地よく響く中、のんびりとした足取りで進んでいく。
しばらく歩き続けた時だった。
あんな「あっ! あそこに村があるよ!」
あんなが指さした方向の遠くに、いくつかの建物が集まっているのが見えた。
みゆ「まだ距離があるので、詳しい様子までは分かりません。ただ……」
亮「ただ? 野宿しなくてもすんだな!」
みゆ「それはそうなんですが……」
あんな「パパ、ちょっと大人しくしてね」
亮「……はい」
亮はあんなに嗜められ、しょんぼりと口をつぐんだ。
みゆ「私たちが知っているこっちの世界とは、雰囲気が少し違うように見えます」
あんな「えっ? そうなの?」
あんなは目を凝らして遠くの建物を見つめたが、家々が見えるくらいで、はっきりとした違いは分からない。
みゆ「今は遠くから見ただけです。判断するには、もう少し情報が必要です。建築様式や、屋根の形状にわずかな違和感があります」
亮「そっか。どこの国なのか、村で聞いてみよう」
あんな「うん。まずは、あそこを目指そう!」
神崎家は遠くに見える村へ向かって、再び歩き出した。
通ってきた道は、もうどこにも存在しない。
そして、彼らはまだ知らなかった。
この草原が、これまで訪れたどの国ともまったく異なる場所へと続いていることを。
こうして――
帰り道を失った神崎家は、見知らぬ国の村を目指すことになった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
静かに形を変え始める。
周囲の心配を余所に、どこまでも自分たちのペースを崩さない神崎家。
国々を揺るがす噂と深まる懸念の裏で、暗躍する影が次なる企てを静かに巡らせる。
すれ違う思惑と忍び寄る不穏な気配の行方は。
次回、第312話 え、パパが勇者!? 世界中が心配しているのにパパはのんびりスローライフ!? すれ違う思惑に裏で蠢く影!?




