第309話 え、パパが勇者!? 地環石の神力を継承する!? 温かな絆に包まれて新たな日常!?
神殿全体を優しく包み込んでいた認可の温かな輝きが、静かに祭壇の中央へと集束していった。
家族を認めた地環石は、いまやその核にひとすじの凝縮された黄金の波動を宿し、あんなを静かに見つめるように佇んでいる。
ランドタートル「……あんなよ」
足元の重厚な岩盤から、地底からの声が重々しく、けれどどこか温かな慈愛を込めて響いた。
あんな「はい」
あんなは胸の前でそっと両手を握りしめ、ゆっくりと息を吐き出した。
家族の絆が認められた温かい余韻の中、彼女の表情には「家族を支える役割を担う」という静かな覚悟が宿っていた。
あんなは神殿の中央の光を湛える地環石をまっすぐに見つめた。
ランドタートル「お主たちの絆は確かに示された。これより、家族を支える安寧の担い手たるあんなへ、地環石を託す」
あんな「私が……地環石を……」
あんなは自分の胸にそっと手を当て、緊張と高揚の入り混じった表情で小さな息をのむ。
ランドタートル「恐れることはない。肩の力を抜き、そのまますべてを受け入れるのじゃ」
亮「あんな、大丈夫だぞ! 力を抜いて、リラックスだ!」
亮がグッと胸を張り、眩しいほどの笑顔で力強いエールを送る。
あんな「パパが一番力入ってるよ。……でも、うん。ありがとう、パパ」
あんなの肩からすっと余計な力が抜け、表情が柔らかくなった。
みゆ「お姉ちゃん、私たちがすぐ近くについていますから。何も心配はいりません」
みゆは心強い眼差しであんなの隣に並び立つ。
ベアトリス「わたくしたちがいつでも見守っていますわ! あんなお姉さまなら絶対に大丈夫ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「みんな、本当にありがとう……!」
あんなは深呼吸を一つ挟むと、意を決して地環石に向かってそっと両手を差し出した。
すると、祭壇に満ちていた黄金の光が一点へと集まり始める。
集束した光はゆっくりと凝縮し、やがて小さな結晶となって宙へと浮かび上がった。
その結晶は導かれるようにあんなの前まで降りてくると、そっとその手のひらへと収まった。
その瞬間、手に伝わる確かな重みとあたたかさを、あんなはぎゅっと噛みしめるように受け止めた。
あんな「……」
手のひらから伝わる温もりを、あんなは確かに感じ取った。
亮「おおっ……! 光が全部あんなの中に吸い込まれていったぞ!」
みゆ「エネルギーの揺らぎはありません。神力が『安寧』の担い手であるお姉ちゃん個人の波形と寸分の狂いもなく同調し、定着完了を確認しました」
ベアトリス「なんて温かく、神々しい輝きですわ! まさに大地の神力を授かられたのですわ!」
静寂が戻った神殿の中で、あんなはゆっくりと目を開けた。
ランドタートル「継承は成った。お主が受け継ぎしは『土』の属性、そしてすべてを支え包み込む『安寧』の神力じゃ」
あんな「安寧の……力……」
あんなは自分の手のひらを見つめ、そっと指先を握りしめた。
身体の奥から、まるでひだまりのような温もりがじんわりと湧き上がってくる。
それは力任せに敵を薙ぎ払うようなものではなく、家族みんなを優しく守り、支えたくなるような穏やかで温かな感覚だった。
ランドタートル「その温もりと、家族を支える心を忘れるでないぞ」
あんな「はい。この温もりを、ずっと大切にします!」
あんなはまっすぐに佇み、地面に向かって深々と頭を下げた。
亮「あんな、おめでとう! いやぁ、なんかカッコいいなー、良いなー……俺もそういうカッコいいの、欲しいぞ」
あんな「パパは一番最初にもらってるでしょ」
みゆ「肯定します。水の神殿にて、第一番目に継承されています」
ベアトリス「わたくしも炎の神殿で継承されていますわ!」
亮「え? 俺も持ってるの? あ!もしかして、釣りの重りに使っていたあの石か?」
あんな「そんなバチ当たりな使い方するのはパパだけだからね」
あんなが速攻で鋭いツッコミを入れる。
みゆ「肯定します。パパはなぜかそれで許されます」
亮「えーー!? だってあの石、ちょうど良かったし、ちゃんと大事に使ったぞ」
亮は心底心外だと言わんばかりに、大袈裟に両手を広げて抗議してみせる。
あんな「大事にするところが完全に間違ってるのよね」
あんなは呆れたように大きな溜息をつき、肩をすくめた。
あんな「まあでも、パパもベアトリスも、もらったからって別に普段何か変わってるわけじゃないもんね。……これで本当に私、何か変わるのかな?」
みゆ「現状、お姉ちゃんのバイタルや魔力数値に目立った変化や異常は見られません。過去の先例を見ても、具体的にどのような力として発現するのかは未知数です」
ベアトリス「わたくしも日常生活で何か特別な変化を感じたことはありませんわ! いつも通り剣を振って、時々お料理で火力を出しすぎるくらいですわ!」
あんな「それ、火力が調整できてないだけじゃないの……」
亮「なんだ、じゃあ今まで通り、普通に暮らしていればいいってことだな!」
あんな「パパはずっと一緒だったと思うけどな。まあでも、何も変わらないのが一番なのかもね」
もっふる「ピィー♪」
神殿の中に、いつもの神崎家らしい賑やかで温かい笑い声が静かに広がっていく。
あんなは、胸の奥に宿った温かな神力を確かめるようにそっと手を当て、大切な家族とともにしっかりと未来を見据えて立っていたのだった。
こうして――
太古の巨亀から土と安寧の神力を無事に受け継ぎ、家族の絆をより深めた神崎家。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
新たな神力を携えて次なる冒険へと向かって静かに動き出すのだった。
事態を丸投げしたまま超速で突入する?
残された重大な言葉に呆然としながらも、相変わらずマイペースなノリを崩さない神崎家。
次回、第310話 え、パパが勇者!? 第四部完結!? 安寧を受け継ぎ、家族は次なる冒険へ!?




