第304話 え、パパが勇者!? 地震の原因は地底の何ー!? 笑うだけで震度七の緊急事態!?
???「……騒がしいのう。誰だ〜、わしの頭の上で騒いでいるのは……」
亮「……ん? 頭の上?」
突然、地面の底から地響きのような声が響いた。
低く、重く、腹の底まで震えるような声だった。
亮「誰だ?」
あんな「どこから声がしたの? 周りには誰もいないし……」
あんなは首をかしげながら、ぐるりと周囲の岩場を見渡す。
みゆ「分かりません。音響解析の数値が測定不能を示しています。全方位から振動として直接伝達されています」
ベアトリス「周囲には、誰も見当たりませんわ! 隠れ潜んでいる様子もございませんわ!」
もっふる「ピィー!」
神崎家が一斉に周囲を見回す。
しかし、人影も魔物の姿もどこにも存在しない。
亮「誰かいるのかー?」
???「お主らか……?」
亮「俺たちがどうした?」
???「そうだ。だが、お主たちではないな」
亮「何が?」
???「わしの眠りを邪魔したのは」
あんな「眠りを……邪魔した?」
みゆ「どういう意味でしょう?」
ベアトリス「眠っていらしたのですか?」
???「そうだ。わしは長い間、眠っておった」
あんな「それなのに、起こされた……?」
???「何者かにな」
亮「誰に?」
???「……分からぬが、お主たちではない」
その答えに、神崎家は顔を見合わせた。
みゆ「起こした相手が分からないんですか?」
???「分からぬが、わしが自ら目を覚ましたわけではない」
あんな「じゃあ、無理やり起こされたってこと?」
???「そういうことだな」
亮「うーん……」
亮は腕を組み、ここまでの出来事を順番に思い返した。
ドワーフ国を襲う地震。
地下に隠された謎の通路。
固く封印されていたはずの扉。
あの巨大なイモムシとの激闘。
そして……。
亮「じゃあ……あいつらが起こしたということか?」
あんな「あの例の二人?」
みゆ「可能性は非常に高いです。封印の扉を破壊し、内部に接触した目的と一致します」
???「わしの眠りを邪魔した存在に心当たりがあるのか」
みゆ「あくまで予測ですが、検討はつきます」
???「……」
みゆ「ですが、その目的までは分かりません」
???「……目的か。おそらく、この状況を作り出すことだろうな」
亮「この状況?」
???「わしが目を覚ますと大地が揺れる」
亮「じゃあ、この地震は?」
???「わしだ」
あんな「……あなたが?」
???「そうだ」
みゆ「地震の原因が、あなたなんですか?」
???「わしが眠っている間は、大地も静かだ。だが、目を覚ませば揺れる」
あんな「では、地震を起こすためにあなたを目覚めさせたということなの?」
みゆ「それだけが目的とは思いませんが、可能性はあります」
その瞬間、足元の地面がぐらりとわずかに揺れた。
亮「おっと……」
あんな「また……」
みゆ「今のも?」
???「わしが息をした」
亮「息をするだけで地震になるのか?」
???「そうだ」
ベアトリス「……一体、どれほど大きな存在ですの?」
???「さてのう……わしには、よく分からぬ」
亮「いやいや、分からないって……それはそれですごいな」
あんな「すごいというか……怖いよ」
みゆ「理論上は説明可能です」
???「そういうことだな」
亮「じゃあ、もう一回眠れば、地震も止まる?」
???「そうだ。わしが眠れば、大地も静かになる」
あんな「それなら、早く眠ったほうがいいよね」
???「わしも、そうしたい。せっかく長い間眠っておったのに、無理やり起こされてしまったからな」
亮「それは大変だったな」
???「まったくだ、まだ眠い」
亮「寝起きなんだな」
あんな「パパと一緒ですね」
亮「俺は寝起きでも元気だぞー」
みゆ「パパの寝起きはいつもぼんやりしています」
低い声が、再び地面の底から響いた。
???「お主らは、ずいぶん賑やかだな」
亮「仲良し家族だからな!」
あんな「まあ……そうですね」
みゆ「はい」
ベアトリス「家族ですわ!」
もっふる「ピィー!」
???「そうか……ならば、わしも安心した」
亮「何が?」
???「いや……なんでもない」
あんな「それより……」
あんなは声の聞こえる足元に向かって話しかけた。
あんな「あなたのお名前は?」
???「名前か」
少しの間があった。
???「わしは、ランドタートルじゃ」
亮「ランドタートル……」
みゆ「ランドタートル……」
ベアトリス「聞いたことのない名ですわ!」
ランドタートル「そうか」
亮「無理やり起こされて怒っているから地震が頻繁に?」
ランドタートル「別に怒ってはいない」
亮「そうなの?」
あんな「パパとは大違いだね」
亮「そんなことはないぞ」
あんな「……」
みゆ「……」
ベアトリス「……」
神崎家一同、無言の眼差しを亮に向ける。
ランドタートル「なかなか愉快な人間だな」
地底の巨亀、ランドタートルが楽しそうに笑った。
――ズズズズズズズン!!
その瞬間、大地が割れんばかりの激しい揺れが襲いかかった。
亮「おお! でかい地震だ!」
あんな「きゃー! 立ってられない!」
みゆ「震度七クラスです!」
ランドタートル「すまぬ、すまぬ。笑うと揺れてしまうのじゃ」
あんな「笑うだけでこの大地震!? 早く寝てもらわないとドワーフ国が壊れちゃうよ!」
亮「よし、じゃあ早く二度寝できるように子守唄でも歌おうか」
あんな「パパの子守唄で寝れるのー」
神崎家は、声の主の凄まじい存在感を全身で感じ取っていた。
目の前に姿は見えない。
それでも、足元から伝わってくる桁外れの気配だけで、その巨大さが理解できる。 並の魔物など比べものにならない、真の古代の存在。
ランドタートル「さて……」
地底からの低い声が、静かに尋ねてきた。
ランドタートル「お主らは、何をしにここへ来た?」
こうして――
地震の驚愕の正体が地底に眠る巨大なランドタートルだと判明する。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
未知の存在との不思議な対話とともに静かに広がっていくのだった。
ドワーフ国を揺らす大地震の真相は、私たちが今立っているこの「山」そのものにあった?
今までの常識を覆す規格外の事態に、大パニックのあんなと完全順応のパパ。
さらに明かされる黒幕たちの真の目的に、神崎家はどう立ち向かうのか―。
次回、第305話 え、パパが勇者!? 山全体がまさかの……!? 圧倒的スケールの真実!?




