第300話 え、パパが勇者!? 300話記念にノリノリ大暴走!? 実質ただの「号令係」で完全勝利!?
亮「よーし! 記念すべき300話記念回だー!」
山間の盆地に、亮の突き抜けんばかりの大声が響きわたる。
あんな「パパ!? 急に何を言ってるの!?」
みゆ「意味不明です。パパはまだ完全に回復しているわけではないと思われます」
ベアトリス「よく分かりませんが、300話ですわ!」
もっふる「ピィー!」
亮「何を言っているんだ。パパは絶好調だぞ! しかもこんなめでたい記念回だ。せっかくだし、今回は全員で派手にいこう!」
あんな「せっかくの意味はさっぱり分からないけど、あのイモムシを全滅させるのには大賛成だよ!」
あんなが剣を構え直し、鋭い視線を前方へ向ける。
みゆ「お姉ちゃんと同意見です。あの不快な虫には、即刻退場してもらいます」
ベアトリス「派手にいきますわ!」
もっふる「ピィー♪」
最後の巨大イモムシ群へ向かって、神崎家全員が一斉に駆け出した。
幾重にも巨大な身体が重なり合い、地鳴りを立てて迫ってくる。
その先頭へ、亮が飛び込んだ。
亮「うおおおっ!」
亮の振るう剣が巨大イモムシを鋭く斬り刻む。
そのまま衝撃波を放ちながら、次の一体へ向かって突っ込んでいく。
亮「ここは俺が開ける!」
あんな「任せたよ、パパ! あたしはこっち!」
あんなが亮の背中から勢いよく跳躍した。
あんな「大地斬!」
振り抜かれた大剣から放たれた衝撃波が大地を割り、巨大イモムシが次々と空へと吹き飛んでいく。
その切り拓かれた空間を、みゆの魔法が突き抜けた。
みゆ「インフェルノ・バースト!」
爆炎が広がり、押し寄せる巨大イモムシの群れを灼熱の火柱が包み込む。
ベアトリス「わたくしも続きますわ! 火炎剣ですわ!」
炎をまとったベアトリスの連撃が重なる。
もっふる「ピィー!」
もっふるも風のように駆け抜け、巨虫たちの足元を崩していく。
次々と吹き飛ばされていく魔物の群れに、亮がさらに前へ出る。
亮「まだだ! 一気に押し切るぞ!」
その背後には、絶対の信頼で結ばれた家族がいる。
あんな「パパ、中央任せるよ!」
亮「任せろ!」
亮が力強く剣を振り下ろし、中央の群れを吹き飛ばす。
みゆ「右から来ます!」
ベアトリス「そちらはわたくしにお任せくださいですわ!」
ベアトリスの炎が一直線に放たれる。
もっふる「ピィー!」
巨大イモムシの一体が、もっふるへと迫る。
あんな「もっふるに手を出させない! 大地斬!」
振り抜かれた一撃で巨大イモムシが弾き飛ぶ。
もっふる「ピィー♪」
あんな「よし、大丈夫!」
群れの勢いが一瞬削がれたその隙を、亮は見逃さなかった。
亮「よーしそれじゃ! みんなー! いっくぞー!」
あんな「了解! 準備はバッチリだよ!」
みゆ「出力、最大に固定しました」
ベアトリス「パパのご命のままにですわ!」
亮「全部まとめて吹き飛ばせー!」
亮の大号令に応じ、みゆが静かに前へ躍り出た。
溢れ出す濃密な魔力が、大気を激しく振動させる。
みゆ「《インフェルノ・エクスプロージョン》(煉獄の爆炎)!」
みゆの手から解き放たれた極大の炎が、地を走り、一気に天へと激しく噴き上がった。
真っ赤な爆炎が渦を巻き、灼熱の熱風が戦場のすべてを包み込む。
その猛火の渦中へ、ベアトリスが一切の躊躇なく踏み込んだ。
愛剣に限界以上の火炎魔法を宿らせ、一閃する。
ベアトリス「これで、どうですわ!火炎剣ですわ!」
火炎剣の軌跡から放たれた灼熱の刃が、みゆの作り出した爆炎の渦と完璧なタイミングで重なり合う。
二つの高熱が衝突した瞬間、轟音とともに炎は幾重にも巨大化し、眩い光を放ちながら膨れ上がっていった。
赤々と燃え上がる暴風の中で、二人の魔力が交じり合い、密度を増していく。
みゆ「まだよ……!」
ベアトリス「もっとですわ!」
さらに限界を超えて注ぎ込まれた火炎が、天を突く巨大な炎の柱となって舞い上がった。
そして、その燃え盛る火柱のただ中で、静かに大剣を構えるあんなの姿があった。
二人が作り出した灼熱の嵐を背に受けながら、あんなは深く呼吸を整える。
あんな「……最後は私に任せて!」
あんなが大地を強く踏みしめた瞬間、足元の岩盤がドカンと激しく跳ね上がった。
剣先を通じて大地へ注ぎ込まれた力が大地の鼓動と同調し、周囲の地脈が次々と隆起していく。
みゆとベアトリスが極限まで高めた炎の奔流と、あんなが大地から汲み上げた圧倒的なエネルギー。
二つの異なる巨大なエネルギーが引き寄せられるように重なり合い、あんなの掲げる剣へと一点集中していく。
剣身が耐えかねたように甲高い鳴動を上げ、黄金と紅蓮の光を放った。
あんな「これで……終わりッ!」
あんなが全身の力を込め、天空へ向けて大剣を力強く振り抜いた。
叩きつけられた衝撃により大地から凄まじい大震動が噴き出し、中心で二重の炎が龍のように渦を巻いて駆け上がる。
天をも穿つ巨大な炎と岩石の渦が合一し、周囲の空気を呑み込みながら拡大していく。
あんな『――煉獄天空陣!!』
閃光と炎が天空より舞い降りた。
押し寄せていた数千の巨大イモムシ群は逃げる間もなく巻き込まれ、余波すら許さぬ光の渦の中へと呑み込まれていく。
やがて激しい衝撃波が収まり、黄金色と紅蓮の光が舞い散る中、静寂が戻ってきた。
亮「……」
あんな「……終わったよね」
みゆ「……すべて、消滅しました」
ベアトリス「終わりましたわ!」
もっふる「ピィ……」
あれほど大量に押し寄せていた巨大イモムシの群れは完全に消滅していた。
亮は、ゆっくりと娘たちを見た。
あんなも、みゆも、肩を揺らして呼吸を整えている。
それでも二人とも、己の足でしっかりと立っていた。
亮「みんな……大丈夫か?」
あんな「うん、大丈夫!」
みゆ「大丈夫です」
ベアトリス「大丈夫ですわ!」
亮「……そうか……」
胸の奥を突き上げる愛おしさに、亮の声が優しく揺れる。
肩で息をしながらも力強く立ち上がる娘たちの成長が、眩しくてたまらなかった。
そんな亮の静かな空気感を察したのか、あんながふっと肩の力を抜き、大剣を地面に突いて少し照れくさそうに笑った。
あんな「パパ!」
亮「なんだ?」
娘たちの愛おしさに胸が詰まる。
その問い返しは、自分でも気づかないほどの優しい声になっていた。
あんな「最後は号令係だったね」
みゆ「定番です」
ベアトリス「素晴らしい号令でしたわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮「えーー! 今の流れは、パパも大丈夫と聞く場面でしょ!」
山間の盆地に、神崎家の明るい笑い声が響き渡る。
亮「いつもみんながいてくれるおかげだからな」
あんな「私達だって、パパがいてくれたからだよ」
みゆ「ずっと一緒でしたから」
ベアトリス「私もいますわ!」
亮「もちろんだ」
もっふる「ピィー!」
亮「もっふるもな」
あんな「だね」
みゆ「……です」
ベアトリス「神崎家の完全勝利ですわ!」
亮「そうだな」
亮が温かな眼差しで三人を見つめる。
そして、あんなが溢れ出る思いを抑えきれずに亮へ駆け寄った。
あんな「パパ!」
亮「おっと!」
あんなが亮にぎゅっと抱きつく。
みゆ「私も……」
みゆも続いて、亮の胸元へ抱きついた。
ベアトリス「私だけ離れているわけにはいきませんわ!」
ベアトリスも加わる。
もっふる「ピィー!」
もっふるも一番上へと跳び乗った。
亮「おお……」
神崎家全員が、暖かな抱擁の中で一つになった。
自分も闇に呑み込まれ、娘たちを不安にさせてしまった。
自分が全てを引き受け、娘たちを危険から遠ざけることこそが父親の役目だと信じて疑わなかった。
だが、守るということの本当の意味は、一人で抱え込むことではない。
いまは違う。
暗黒の深淵から自分を引き戻してくれたのは、紛れもなく娘たちの強い絆だったのだから。
亮「……ありがとう」
あんな「パパこそ、ありがとう!」
みゆ「ありがとうございます」
ベアトリス「私からも感謝しますわ」
もっふる「ピィー♪」
亮「みんな……本当にありがとうな」
絆を確かめ合う中、その時だった。
少し離れた煙の向こう側から、苦々しい声が聞こえた。
グラファイト「くっ……」
亮たちが振り向く。
立ち込める煙の向こう。 そこに、グラファイトともう一人が立っていた。
グラファイト「まさか……これほどとは……!」
???「……」
二人は倒された巨大イモムシの群れを見つめている。
亮は、娘たちの前に立った。
あんな「パパ……」
亮「大丈夫だ」
いまの亮には、狂気も怒りもない。
あんなも、みゆも、自分の足で力強く立っている。
亮は、その頼もしい背中を感じていた。
グラファイトたちも、神崎家を見ている。
巨大イモムシという切り札は、完全に破られた。
それでもその視線には、戦いが終わった者のものとは思えない冷たさが残っていた。
亮「……」
煙が、ゆっくりと晴れていく。
巨大イモムシの群れは、もういない。
神崎家は、勝った。
だがグラファイトたちは、まだ不気味さを増している。
静かに一歩前へ踏み出す。
こうして――
神崎家は絆の力で立ち塞がる群れを打ち破り、見事な勝利を掴み取った!
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
新たなる対峙の予感を孕んで次へと続く。
最悪のイモムシ大群を撃破し、ついに逃げ出すコンビ!
消えゆく敵を前に、緊迫した空気の中でパパが放った決死の「ズレまくりな問いかけ」とは?
緊迫感ゼロのノリに娘たちのツッコミが冴え渡る中、深まる謎と女神様の意味深な視線が交錯する。
次回、第301話 え、パパが勇者!? 撤退間際の問答無用!? 逃げる敵へ決死のズレ!?




